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ライラ からぴち・シクフォニ♡
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「あ、そうだ、前に言ってた放課後デートなんだけど!」「ん? あぁ言うてたな。今回のバイト代まだ余ってるから、今月でもええよ」
平静を装って返した。心臓は少しだけ期待で跳ねてる。けど、ゆうたの口から飛び出したのは、予想だにしない言葉やった。
「うん。それであの……女の子連れて行ってもいいかな?」
「……え? 女の子?」
誰誰誰? ゆうたは確かにモテるけど、俺とおる時は一切女の子と喋ってなかったよな? 女の子の話なんて、一度も聞いたことないやん。
「前に二人でマクド行ったじゃん? あそこにいた女子高生の中にうちの学校の後輩が混ざってて。その子とお友達が、しゅうとと仲良くなりたいってお願いしてきたんだけど……いいかな?」
いいかな? じゃないわ。それを世間では「放課後デート」とは呼ばんのや。
しかも友達も来るんやったら、確実にもう一人はゆうた狙いやろ。立派な「放課後ダブルデート」やないか。
「……可愛いん? その子」
「え、っと……」
なんなん、「顔で決めるん?」みたいな顔して。そうやろ、いつだって俺は可愛いもんにしか興味ないねん。
「俺、可愛い子としか友達にならんし、デートもせん。可愛いにしか興味ないねん」
自分でも驚くほど、今年一番低い声が出た。誕生日の夜に、こんな嫌なセリフを吐くことになるとは思わんかった。
「……とってもいい子だよ。あ、笑うとめっちゃ可愛かった。しゅうとのこと話してる時、すっごく可愛く笑うんだ!」
「へぇ……」
ゆうたは一体どうしたいんやろ。俺とその子をくっつけたいんか。それとも、その子の友達を狙ってて、きっかけ作りをしたいんか。
それにしても、なんでそんな必死なん? 顔真っ赤にして。他人のために、そんなに頑張らんでもええやんか。
「……ゆうたが行きたいならええよ。でも、性格込みで可愛くないと思ったらすぐ帰るからな」
「……うん、わかった」
……あかん、俺最低や。モテてイキってる奴みたいやん。
行きたくないなぁ。とりあえずゆうたの顔を立てて一回は行くけど……本当は、一秒だって行きたくない。
「……じゃあ、また明日、学校で」
「うん、じゃあな」
駅に着いて手を振って別れる。俺、イライラ隠せてなかったな。
普通の男子高校生なら、飛んで喜ぶはずや。女の子と話せる!彼女できるかも!って。
……あーあ。そういえば、ゆうたって彼女おった事あるんかな。まあ、あの顔でおらんってことはないか。サッカー部であのビジュアルで。たまに変なこと言うけど、そういうところが女の子からしたら「可愛い」んやろな。
誰なんやろ、ファーストちすの相手。……上手くできたんかな、あいつ。あの調子で本番中も空気読めんことして、彼女にキレられたりしてそうやな。
「……どうでもええわ、そんなこと」
ほんっまに、どうでもええ。
デートは金曜日のフットサルまでの時間、ということにしてもらった。後に用事がある方が、切り上げて帰りやすいからな。
「……あ、しゅうと。今日なんだけど、女の子たち来られなくなっちゃって」
放課後、帰る用意をしている時にゆうたが申し訳なさそうに言った。
「あ、そうなん? ……ちょっとホッとしたわ。急に『好きオーラ』出されても、どうすればええかわからんかったし」
本気で安心したから、思わず本音を吐いてもうた。
「……俺だけでいい? 結局フットサルも一緒なんだけど」
「当たり前やん、元々そういう約束やったしな」
「……よかったぁ、無かったことにされなくて」
「そんなことせんよ」
ゆうたは勘違いしてる。俺は女の子が来るからデートしてええよって言うたんやない。そもそも、ゆうたが勝手にそうやって「ダブルデート」の話にしただけのことやろ。
「どうする? 今日はカフェにする? 美味しいパンケーキ屋さん、見つけたんだけど」
「ふふっ、俺に選択肢ないやん。そんな風に言われたら」
ほんまに、女の子のことといいカフェのことといい、控えめ強引なわがまま言うてくる。結局俺はゆうたの言うことを拒否できひんのやろな。
「あ、あのさ。言い忘れてたことがあって」
「ん?」
「……勘違いなんだ。俺が頼んだんだよ。いつきくんに」
……はぁ? またこいつは真剣な顔で意味のわからんことを言い出す。カフェに入って一発目でこれって、楽しくて短い放課後デートを、お前はどうしたいんや。
「……何を?」
「……しゅうとに伝えて、って。俺じゃまた知らない間に嫌な言い方しちゃうかもしれないから、代わりに伝えてって。――『しゅうとの関西弁は可愛くて、大好きだよ』って」
「……は?」
なんなん。すっごい衝撃的なことを言われてるのに、俺の心臓がうるさいくらいにバクバクしだした。いつきくんがあの日くれた言葉の「本当の主」が目の前のしゅうとやったなんて。なんで、こんなに心臓が痛いんや。
「……顔、赤いよ? やっぱり、すごく怒ってる?」
「あほか! 怒らんやつがどこにおんねん!」
誤魔化すために、怒っていることにした。変なタイミングで運ばれてきた、めちゃくちゃ美味しそうなパンケーキ。けれど、フォークを持つ手が震えて、とても食べられる状態やない。
「……ごめんね。俺、入学式の日、同じことを言ったつもりだったんだよ。だけど伝え方が悪くて、しゅうとが誰とも話さなくなって。それが自分のせいだって分かってた。でも、又嫌な思いさせたらって、ずっと話しかける勇気が持てなくて……」
ゆうたは、握りしめた自分の手元を見つめて言葉を継ぐ。
「二年生になって、この人なら大丈夫だって思って、いつきくんに頼んだんだ。それで、フットサルにも連れてきてもらった」
あの日、地獄のような孤独に垂らされた蜘蛛の糸は、ゆうたの仕業やったんか。
俺の、本当の「神様」は、ゆうたやったんか――。