テラーノベル
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光が差す。
朝は、容赦なく訪れた。
「行こう」
アルトの一言で、全員が動き出す。
その先にいるのは――
シオン。
「……来たか」
静かな声。
シオンは、ひとり立っていた。
その隣に、クレハ。
風が、ふたりの間を通り抜ける。
「シオン」
アルトが、まっすぐに名前を呼ぶ。
シオンは、少しだけ目を細める。
「お前はあの歌を覚えているか?」
唐突な言葉。
アルトは、一瞬だけ止まる。
「……ああ」
「そうか」
それだけ。
そして。
「じゃあ、終わらせよう」
空気が、変わる。
次の瞬間。
地面が裂ける。
戦闘が、始まる。
フィリアの前に、クレハが立つ。
「……あなたが相手?」
「そうなるね」
クレハは、軽く構える。
その周囲に、光が集まる。
「今度は、手加減しないわ」
フィリアの瞳が、鋭くなる。
「こっちも」
その背に、光が広がる。
吸収したエネルギーが、膨れ上がる。
「守るために戦うの、嫌いじゃないでしょ?」
クレハが笑う。
フィリアは、答えない。
ただ――踏み込む。
衝突。
光と光が、ぶつかる。
その少し離れた場所。
リュシアが銃を構える。
「数、多すぎ……!」
変わり果てた花人たちが、迫る。
「弱音吐くな」
ノクスが大剣を振り下ろす。
一撃で、数体を薙ぎ払う。
「わかってるって!」
リュシアが細かな弾を連射する。
光が弾ける。
それでも、数は減らない。
「……来るよ」
「来い」
ふたりは、背中を合わせる。
そして――
アルトとシオンは、向かい合っていた。
「……やり直すって言ったな」
アルトが低く言う。
シオンは、わずかに笑う。
「ああ」
「壊れない形で、世界を」
その言葉は、静かだった。
でも、狂気を孕んでいた。
「そのために……」
アルトの視線が、わずかに揺れる。
シオンは、まっすぐに言う。
「フィリアが必要だ」
――その瞬間。
時間が、止まった気がした。
「……は?」
アルトの声が、かすかに震える。
「何言ってる……」
理解が追いつかない。
いや、理解したくない。
「どういう意味だよ」
シオンは、淡々と続ける。
「花人は不完全だ」
「感情がある限り、壊れる」
その視線が、遠くフィリアへ向く。
「だが、あいつは違う」
「エネルギーを吸収し、拡張し、制御する」
「完成に最も近い存在だ」
アルトの胸の奥が、ざわつく。
「……だから、何だ」
絞り出すような声。
シオンは、一歩踏み出す。
「使う」
迷いなく。
「世界を作り直すための、核にする」
――その言葉で。
アルトの中の何かが、音を立てて切れた。
「……ふざけんな」
低い声。
怒りが、静かに燃える。
「お前……」
拳を握る。
「フィリアを、何だと思ってる」
シオンは、少しだけ目を細める。
「必要なものだ」
それだけだった。
「……人じゃないって言いたいのか」
「そもそも人じゃない」
即答。
「花人だ」
その言葉は、あまりにも冷たかった。
アルトは、一瞬だけ目を閉じる。
そして。
ゆっくりと、息を吐く。
「……ああ、そうかよ」
顔を上げる。
その目に、もう迷いはなかった。
「じゃあ、お前を止める理由は十分だ」
アルトが、手をかざす。
その瞬間――
光が集まる。
小さな銃。
フィリアが生成した武器。
それを、握る。
「……借り物か」
シオンが呟く。
アルトは、少しだけ笑う。
「そうだな」
そして。
銃を構えたまま、もう片方の手を広げる。
再び、光。
今度は――剣。
細く、鋭い、光の刃。
「俺には、これしかない」
その声は、静かだった。
「でも、それで十分だ」
シオンは、その様子を見て。
「……変わったな」
と呟く。
そして。
ゆっくりと手を上げる。
何もない空間に――
光が生まれる。
それは、形を成す。
枝のように絡み、硬質化し、一本の剣へと変わる。
植物から生まれた、異質な刃。
「僕は、これで戦う」
シオンが言う。
「自分で作ったものだ」
その言葉には、どこか誇りがあった。
アルトは、それを見る。
「……らしいな」
短く返す。
互いに構える。
距離は、ほんの数歩。
風が、通り抜ける。
その一瞬の静寂の中で。
「……最後に聞く」
アルトが言う。
「戻る気はないのか」
シオンは、少しだけ目を伏せて。
「ない」
と答えた。
迷いなく。
「そうか」
アルトも、それ以上は何も言わない。
ただ。
剣を握る手に、力を込める。
「……来いよ」
シオンが、静かに言う。
その瞬間。
地面を蹴る。
アルトも、同時に踏み込む。
光と光が、ぶつかる。
火花のように、粒子が弾ける。
剣がぶつかる音が、鋭く響く。
重い。
シオンの一撃は、人間のそれじゃない。
「……っ!」
アルトが歯を食いしばる。
押される。
でも、退かない。
「どうした」
シオンが言う。
「その程度か」
「……まだだ!」
アルトが、銃を撃つ。
至近距離。
光弾が、シオンを貫こうとする。
だが。
「甘い」
シオンの剣が、それを弾く。
そのまま、反撃。
振り下ろされる刃。
アルトは、ぎりぎりで受け止める。
「くっ……!」
腕が軋む。
それでも。
「……守るって、決めたんだ!」
低く呟く。
「もう、迷わない!」
その目は、まっすぐだった。
シオンは、それを見て。
ほんのわずかに、目を細める。
「……そうかよ」
その声は――
ほんの少しだけ、寂しそうだった。
戦いは、続く。
まだ、決着はつかない。
ただ。
互いに一歩も引かず。
想いだけが、削れていく。
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