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光が、絶え間なく降り注ぐ。
空間そのものが裂けているようだった。
「……っ!」
フィリアが飛び退く。
その直後、地面が大きく抉られる。
クレハの放った光が、広範囲に炸裂する。
「避けるね」
クレハが、軽く息を吐く。
その周囲には、無数の光の粒子が漂っていた。
まるで、空そのものを支配しているような光景。
「でも、全部は無理でしょ?」
次の瞬間。
一斉に、光が降る。
雨のように。
いや――
刃のように。
フィリアは、手をかざす。
「……っ!」
光を吸収する。
身体の奥へと流し込む。
それでも、すべては取り込めない。
「……まだ足りない」
クレハが呟く。
「その程度じゃ、届かないよ」
フィリアは、歯を食いしばる。
「……届かせる」
踏み込む。
一気に距離を詰める。
光が爆ぜる。
拳と、光がぶつかる。
クレハの攻撃は広く、重い。
フィリアの動きは鋭く、しなやか。
互いに譲らない。
「……やるじゃん」
クレハが笑う。
「嫌いじゃないよ、そういうの」
フィリアは答えない。
ただ、前へ。
守るために。
壊さないために。
戦いは、長く続いた。
地面は抉れ、空気は焼ける。
それでも――
決着は、つかない。
互角。
確かに、互角だった。
そのとき。
「――っ」
フィリアの視界の端で、何かが動く。
一瞬だけ、目を向ける。
アルトとシオン。
その戦い。
そして――
「……え」
時間が、遅くなる。
シオンの剣が、振るわれる。
避けきれない。
そのまま――
アルトの身体を、貫く。
胸を。
正確には、急所を外している。
でも。
致命的に近い一撃。
「――アルト!!」
声が、裂ける。
足が、止まる。
その一瞬の隙。
「――あら?」
クレハの声。
すぐ目の前。
「よそ見する暇なんてあるの?」
次の瞬間。
光が、直撃する。
「――っ!!」
身体が弾き飛ばされる。
地面を転がる。
息が、できない。
視界が、揺れる。
「……油断したね」
クレハの足音が近づく。
フィリアは、動こうとする。
でも――
動かない。
「……ぁ……」
指先が、震えるだけ。
身体が、言うことを聞かない。
「……アルト……」
視界の向こう。
倒れるアルト。
血が、滲む。
「……行かなきゃ……」
声が、かすれる。
「……行かないと……」
でも、動けない。
「……助けないと……」
届かない。
間に合わない。
「……やだ……」
その言葉は、ほとんど音にならなかった。
――そのとき。
何かが、弾けた。
フィリアの中で。
光が、静かに溢れ出す。
いや。
溢れる、なんてものじゃない。
“咲いた”。
身体の奥から、光が広がる。
温かくて、やさしくて、でも圧倒的な力。
「……なに、それ」
クレハが、わずかに目を見開く。
フィリアが、ゆっくりと立ち上がる。
その姿は――
今までとは、明らかに違っていた。
髪は、淡い光を帯びて揺れる。
花びらのような粒子が、周囲に舞う。
背中には、光のような“花”が広がっていた。
開いたまま、空間を染めるように。
その一つ一つが、エネルギーそのもの。
「……綺麗」
クレハが、ぽつりと呟く。
同時に。
「……でも、危ないね」
フィリアの目が、ゆっくりと開く。
そこにあったのは――
迷いのない、強い光。
「……どいて」
静かな声。
でも、空気が震える。
「急いでるの」
その一言に。
クレハは、笑う。
「無理」
即答。
「通したら、つまんないでしょ」
構える。
全力で。
「じゃあ――」
フィリアが、一歩踏み出す。
「押し通す」
次の瞬間。
光が、爆ぜた。
今までとは比べ物にならない速度と威力。
クレハの広範囲攻撃が、押し返される。
「――っ!?」
初めて、クレハの表情が崩れる。
フィリアは止まらない。
吸収し、放つ。
そのすべてが、桁違い。
「……これが」
クレハが呟く。
「本気か……!」
衝突。
衝突。
衝突。
そして――
一閃。
静寂が落ちる。
クレハの身体が、崩れる。
膝をつく。
「……はは」
かすかに笑う。
「やられた……」
倒れる。
完全には消えていない。
でも、もう戦えない。
瀕死。
フィリアは、立ち止まらない。
一瞬だけ、視線を向ける。
「……ごめん」
小さく呟く。
そして――
駆け出す。
「アルト!!」
その声は、まっすぐだった。
光を引き連れて。
一直線に。
シオンとアルトの元へ。
花が咲くように、世界を照らしながら。