萌香が濡れた服を手に持ち、タオル一枚で心を落ち着けようとしていると、突然ドアが勢いよく開いた。
「おーい、萌香、みりんがさ――」
そこには、何も知らないいさなが立っていた。
タオルを握りしめた萌香と、開いたドアの向こうで立ち尽くすいさな。両者の間に、気まずさと緊張が溢れる。
「…え?」
「…ええええええええええっ!」
萌香の顔は瞬時に真っ赤になり、タオルをぎゅっと身体に押し付ける。
「ちょ、待て!なんでそんな姿なんだ!」
いさなは焦ったように顔を逸らすが、ちらちら視線を送るのを隠せない。
「見ないでよっ!」
萌香は叫びながらベッドに飛び込み、布団を引っ張って自分に巻きつける。
「いや、違うんだ!俺は…その…ただみりんに言われて――」
「なんで入ってくるのよ!!!」
「だってドア開いてたんだよ!まさか裸でいるなんて思わないだろ!」
その声を聞きつけて、みりんとゆうなが駆けつけてきた。
「何騒いでるの!?どうしたの?」
みりんが状況を一目で察し、手を額に当てて呆れたようにため息をつく。
「またいさな、何かやらかしたの?」
「俺はただ入っただけだ!わざとじゃない!」
いさなは必死に弁解するが、みりんは冷めた目で見つめている。
「…で、萌香はなんでそんな姿なの?」
ゆうなが疑問を投げかけると、萌香は布団に隠れたまま声を絞り出した。
「な、なんでもない!ただ着替え中だっただけ!」
「ふーん。」
ゆうなの目が怪しく光る。
「ま、まあいいじゃないか。俺的には…その…悪くなかったし…」
一言で部屋が凍りつく。
「いさな、何それ?」
みりんが冷たい笑顔を浮かべ、ゆうなも何かを察してにやりと笑う。
「ちょ、待て!今のはそういう意味じゃなくて――」
「いさな、あとで覚えてなさいよ!」
萌香が布団越しに叫ぶと、いさなは肩をすぼめながら慌てて部屋を飛び出していった。
萌香は布団の中で顔を真っ赤にしながら、心臓の高鳴りを抑えようとしていた。
「何なの、もう…あんな変態、絶対許さない…!」
一方、いさなは廊下で頭を抱えていた。
「俺、ほんとに何もしてないのに…。何でこんな目に遭うんだよ…。」
みりんとゆうなは、その様子を見ながら苦笑する。
「いさなって、ほんと天然の女たらしだよね。」
「まあ、そこが面白いんだけど。」
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