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どこまでも過ぎた事など気にしない前向きなカイムの、金色に輝く体を横目で見つめながらトシ子が言う。


「カイム…… 何で連絡してこなかったんじゃ? 絆が駄目じゃったら電話でも、何じゃったら手紙でも可能じゃったんじゃないかえ?」


元々の主である、緊張でもしてしまったのか、答えたカイムはいつに無く歯切れが悪い。


「そ、それは…… 携帯とか持っていないし、こ、こんな見た目で電話借りるとか切手を買うとか、む、無理じゃん? そ、そう言う事だよポロッポ……」


ん? 語尾が昔の鳩っぽい物に?

何やら様子がおかしいカイムを見つめながらトシ子は虎大と竜也に聞く。


「ねえオンドレちゃんにバックルちゃんよ、アンタ等なら電話するのも手紙を出す事も簡単じゃったろうに…… こいつに提案しなかったとは不思議なんじゃが? 何故だい?」


この問いには虎大では無く切れ長の目がクールな印象を与えるバッテン傷、竜也が答える。


「当然言いましたよ、お姉さんに連絡を取る手段は無いかってね、でも大魔王様曰く住所も電話番号も知らないの一点張りでしてね、仕方なくバイトの休みなんかにネカフェに行って探したりしてみたんだけど一件もヒットしなかったんで今日まで連絡出来無かったんですよ」


「ほう」


トシ子の目つきがジトっと感を増す。


「なあカイム? 幸福寺の住所や電話番号、知らなかったのかえ?」


「あ、えっと…… わ、忘れちゃって……」


「フーン、そうなのかい…… ねえバックルちゃん、アンタ等ネットで調べたんじゃろう? 幸福寺でヒットしなかったのかい?」


「ええ、全く」


この言葉を聞いた善悪は首を傾げて言った。


「ええーフィギュアのダンスが身バレしてからは結構ヒットする筈でござるよ? ちゃんと検索したぁ? 誤字とかだったんじゃないのぉ、でござる」


竜也が答える。


「おかしいですね、ちゃんと大魔王様に教えて貰った通りに間違いなく検索しましたよ、こうふくじってあれでしょ? 好奇心とかのこうと言う字に腐敗のふ、苦痛のくでしたよね」


虎大も続いた。


「そうそう、んで姐さんの名前が里に雨でさとう、濃い鬼でこゆき、和尚さんが好きに腐る苦しむでこうふく、ご飯とかの膳に煮物なんかで取る灰汁でぜんあくでしたよね、間違えてやせんぜ」


「へ? 好腐苦(こうふく)、膳灰汁(ぜんあく)? ま、不味(まず)》そうでござる……」


「何それ、恐いわよその里雨(さとう)濃鬼(こゆき)って名前! 親が狂って無いと無理よ、無理!」


トシ子は既に怒った顔である。


「カイム?」


対してカイムは汗だくであった。


「まままま、間違えっちゃった、かかかか、かな? ほ、ほ、ほら、が、がががが学校とか、いいいいいい、行ってないから……」


なるほど、日本語を習熟する事が難解だと言った話は学んでいる外国の方々からよく聞く話である。

特にカタカナ、ひらがな、漢字、アルファベットを混用している辺りと、和製英語、それに同音異義語が多い事もその理由として挙げられる事が多い。

ましてや筆記である、更に難しい事は想像に易い。


外国出身のカイムがウッカリ、オッチョコチョイにも間違って覚えてしまっていたとしても仕方が無い事であろう。

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