テラーノベル
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門を開け、庭を進む
立派な扉を開け、玄関と呼ぶには広過ぎる空間を抜け、廊下を歩く
外観とは逆に家の中は白で統一されている
廊下の左右どちらにもドアがあり、迷いそうだ
「一階はね、仕事で使ったりお客様用になってるから追々教えるとして、2階に向かうね?」
「あ、はい」
階段を登ると観葉植物が置いてあるオシャレなダイニングがあった
奥にはキッチンがあるが、まるでモデルルームの様で使われている形跡が無い
奥へと通路を進むとバスルームとトイレ
その通路を挟んだ向かい側の扉を叶さんが開けた
「ここがこやの部屋だよ。ごめんね、色々家具置いてあるけど、気に入らなかったら買い替えて使ってよ」
「うわ‥‥」
白とグレーのチェッカーボードチェック柄の絨毯が一面に敷き詰められていて、家具は黒で統一されている
「これ‥‥使って良いんですか?」
「ここにある物は好きに使って良いよ。全部こやの物だから。足りない物は買い足してくれる?」
「わかりました‥‥」
部屋に入り視線だけで見渡す
こんな部屋に住めるなんて‥‥
「あ、あと1つ教えとかなきゃダメな事あって、こっち来れる?」
「はいっ!」
部屋を出ていく叶さんに慌てて着いていく
叶さんの行く先には階段がある
3階だ
「ここの手前の部屋が僕の部屋。入って?」
「‥‥はい」
「フフッ、何もしないよ。今日はね」
俺の緊張が伝わったのか、叶さんが笑いながら部屋に迎入れてくれる
白とベージュが基調になった落ち着いた部屋だ
「僕がこやの部屋に行くこともあるけど、僕に呼ばれたらここに来てね」
「‥‥はい」
「じゃあ、向かいにも挨拶しとこうか。この部屋の向かいにいるのが、この家の主人だよ。葛葉って言って、あの夜の店とか他にも経営してる人の息子だよ。3階は他に葛葉の部屋の隣が葛葉のパートナーの部屋で、その向かいの僕のここの隣はそのパートナーの作業部屋になってるから、基本的には3階は勝手に入らないで。僕の指示が無い限りは」
「わかりました」
葛葉さんってどんな人なんだろう?
叶さんが向かいの扉をノックする
「葛葉、さっき教えた人連れて来たよ。ちょっと開けるね」
「‥‥ん」
小さな返事が返ってくる
叶さんが中に入った
開けられたそこからは、更に広く豪華な内装が目に映る
赤と黒の部屋
なんだかこの部屋は怖い感じがする
ゴシックが好きなのかな‥‥
「こや、こっち来て」
「はい」
叶さんの隣に立つと目の前には高そうなソファーで脚を組み、本を手にするスタイルが良い男性がいる
「葛葉、この子が小柳ロウ君だよ。今日からこの家に一緒にいるんだから、ちょっとは顔上げてよ」
「うるさいな‥‥」
「‥‥小柳ロウです」
本から俺に向けて視線が一瞬刺さる
まるで俺には興味がない様だ
「いつもお前が勝手に連れてくるんだから勝手にしろよ」
「そうはいかないだろ?」
「もうわかったから出てけよ」
「はいはい」
叶さんがスタスタと部屋を出ていくのを見て、俺は葛葉さんに頭を下げて挨拶し、この部屋を出た
「ちょっと口が悪いかもしれないけど、根はいい奴だから気にしないで」
「はい」
「そうだ、スマホ待ってる?」
「いえ、待ってないです」
「じゃあ部屋から取って来てくれる?」
「あ、いえ‥‥今持ってないとかじゃなくて‥‥本当に無くて」
「嘘だろ?今の時代に⁈」
「‥‥すいません」
本体だって高いし、月々の支払いだって出来る訳がなかった
だから欲しいなんて思った事がなかった
「面白い子だね、こやって」
「‥‥?」
「僕の使ってないスマホあげるね。ちょっと待ってて」
そう言うと部屋からスマホを取ってきてくれた
スマホって何台も持つ物なのかな?
「これは仕事用に買った物なんだけど、もう一台仕事用に買ったから、古くて悪いんだけどこれ使って」
「え、良いんですか?」
「全然使ってないからあげるよ」
「いや、その分差し引いて下さい」
「いらないよ。今までだって使ってないのに払ってたんだから。いっぱい使って」
「‥‥でも俺他にお金使う事ないから」
「え?借金があってお金欲しいのかと思ってたから‥‥」
「俺‥‥今までいた所に居られなくなって‥‥身一つで逃げて来たからすぐにお金がなくなっちゃって‥‥」
「なるほど‥‥まぁ、あとは僕が調べさせてるから、そちらで確認とらせてもらうけど‥‥」
「‥‥‥‥?」
「とりあえず今日はゆっくり休みな。僕も仕事しなくちゃいけないから」
「はい、それじゃあ失礼します。おやすみなさい」
俺は叶さんに見送られながら下の階へ戻る
部屋に戻った俺に叶さんが呟いた
「今回のは当たりかも」
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コメント
2件
かなかな の読み取れない感じ好きすぎる!葛葉の感じ悪い感じも好き~ なんか こや がスマホ持ってないの違和感感じないw かなかな の最後の言葉の意味気になる(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク