テラーノベル
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ある日、涼ちゃんは水を口に含むことさえも辛くなっていた。𓏸𓏸が差し出したコップを手にとり、そっと唇を濡らすが、すぐにこみ上げてくる吐き気に耐えきれず、吐き戻してしまう。
「……う、っ……」
涼ちゃんが苦しそうに顔をそむけると、𓏸𓏸はすぐにタオルを持ってきて、そっと優しく口元を拭いてあげた。
「無理しなくていいからね」と、小さな声でささやく。
涼ちゃんは何も言わず、天井をじっと見つめ続ける――
薄暗い部屋の中、静かに横たわる体。
その瞳には、ただ真っ白な天井が映るだけ。
言葉にならない気持ちが、胸の奥で渦を巻く。
ふと、涼ちゃんの頬をつたって、ひと粒だけ涙が滑り落ちた。
その涙が流れるのを、𓏸𓏸はちゃんと見ていた。
言葉にできない痛みも、諦めも、すべてを感じてしまうようで、𓏸𓏸の胸が静かに締めつけられた。
だけど、𓏸𓏸は何も言わなかった。
無理な励ましもせず、ただそっと、もう一度タオルで涼ちゃんの頬をやさしくぬぐった。
「大丈夫だから。私はここにいるよ、涼ちゃん」
そうつぶやく声も、ほんの小さく震えていた。
二人きりの部屋に流れるのは、
静かな涙と、消え入りそうな「寄り添い」だけだった――
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