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こっちに振り返ろうともしない。その背中からは、私のことなど眼中にないことが伝わってきた。
――いくら心配しているような口調で話してきても――
――いくら親しみのある笑顔を浮かべても――
それが作り物であることは嫌でも分かってしまう。
…パパは、ママと違って私に対してキツく当たらないけど。
私に興味がないのは、この人も同じだ。
「全く、朝帰りなんていい気なもんね。夜勤なんて嘘でしょうよ。」
背後から声がしたので振り返る。そこには、普段はしない厚化粧と派手な服に身を包んだママの姿があった。
パパが消えていった二階の方をじろっと睨みながら仁王立ちで立っている。
私が何も答えないでいると、今度は私に視線を向けて皮肉混じりに言葉を投げ掛けた。
「ふん、どうせ愛人と会っていたのよ。あんな脂肪しか詰まってないような男を好きになるなんて、どうかしてるわよね。」
小馬鹿にした口調で笑い飛ばす。
いっつもこうだ。ママは、普段私には見向きもしないくせにパパの悪口を言う時だけ話しかけてくる。
私はそれをいつも適当に聞き流すが、ママはそれでもいいみたいだ。
きっとママにとって私は、壁のようなものなんだろう。
愚痴を受け止めてくれるだけの都合のいい存在。
「あんな男と結婚したのが間違いだったわ。浮気するしか能がないんだから。」