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「人のこと言えないでしょ。」

こっちに振り返ろうともしない。その背中からは、私のことなど眼中にないことが伝わってきた。


――いくら心配しているような口調で話してきても――



――いくら親しみのある笑顔を浮かべても――


それが作り物であることは嫌でも分かってしまう。


…パパは、ママと違って私に対してキツく当たらないけど。


私に興味がないのは、この人も同じだ。



「全く、朝帰りなんていい気なもんね。夜勤なんて嘘でしょうよ。」


背後から声がしたので振り返る。そこには、普段はしない厚化粧と派手な服に身を包んだママの姿があった。


パパが消えていった二階の方をじろっと睨みながら仁王立ちで立っている。


私が何も答えないでいると、今度は私に視線を向けて皮肉混じりに言葉を投げ掛けた。


「ふん、どうせ愛人と会っていたのよ。あんな脂肪しか詰まってないような男を好きになるなんて、どうかしてるわよね。」


小馬鹿にした口調で笑い飛ばす。


いっつもこうだ。ママは、普段私には見向きもしないくせにパパの悪口を言う時だけ話しかけてくる。


私はそれをいつも適当に聞き流すが、ママはそれでもいいみたいだ。


きっとママにとって私は、壁のようなものなんだろう。


愚痴を受け止めてくれるだけの都合のいい存在。


「あんな男と結婚したのが間違いだったわ。浮気するしか能がないんだから。」



つい、出てしまった気持ち。その格好からは誰に会うのか容易に想像できる。


いつもなら我慢できたのに、おかしいな。


「…はあ?」


ママの眉間にシワが思いっきり寄る。

ドスの利いた声で、私に近づいてきた。


今すぐにでも噛みつきそうなくらいの至近距離でママはあり得ないくらい顔を歪めて睨んできた。


私はそれを微動だにしないで黙って見上げる。


その態度が余計ママの神経を逆撫でした。


「今…なんっつった?親に向かって…」


「…別に、何も…」


「嘘つくんじゃないわよ!!ほんっとに可愛げないわね…あんたも、ああいう屑な男と結婚してみればいいのよ…」


ママの奇声に、鼓膜がビリビリ振動する。


それが親の台詞なんだろうか。自分だけ被害者のつもり?悲劇のヒロインぶらないでよ。


言いたいことは山ほどあったが黙っていた。もう、言い返すのもめんどくさかった。


どうせ何を言ってもこの女の心には響かない。


喧嘩するほど仲がいいって本当だと思う。

どうでもいい相手には、何も言いたくなくなるんだな。


「ま、いいわ。あんたに構ってたら遅れちゃう。今日はもう帰らないから、勝手にしてちょうだい。」


それだけ言うと、私の横をすり抜けていく。


――バタンっ!!――


力任せに勢いよく閉められた扉に、心底同情する。


やっと訪れた静寂に心が落ち着く。

脳裏にはさっきの鬼のような形相の母親が焼き付いて離れない。

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