サイド キリ
「みんなに初代団長を紹介したいんだ」
思えば、キノがそう言ったときからなんとなく嫌な予感はしてたんだ。
バサリ、と音をたててお姉ちゃんの形見の黄色いウインドブレーカーが落ちた。嫌だ。このままでいたい。そんな思いを気のせいだと言い聞かせて、外に出た。
日差しが、容赦なく私たちのことを照らす。
「初代団長はね、キノのお兄さんなの」
「でも、兄ちゃんは三年前に殺された。世間には事故として報道されているけどな」
その話は、昨日私がアミにした話と同じで。何か関係あるのかと、詳しく話を聞こうとした。その前にユズという子が現れてしまったけど。
「こんにちは!!ユズです!本名は木野 柚結(キノ ユズユ)でダイキ兄のいとこだよ!ユズって読んでね!」
他にも色々言っていたけれど、そんなことはどうでもよかった。
キノの下の名前は、“ダイキ”。私は、それと一文字違いの名前を知っている。お姉ちゃんを殺した、大っ嫌いな名前。
「……キリちゃん、どうかしたの?」
蝉の鳴き声が私の頭の中を掻き乱す。蒸し暑さが私の思考回路を異常にする。
「……大丈夫、だよ。ちょっと暑いだけ」
私はタエにそう嘘をついた。
「ここが、兄ちゃんが死んだ場所だ」
どこにでもありそうな踏切。キノはそこに花を添える。そこは私のお姉ちゃんが殺された場所で。
お願い、私の勘違いであって……!まだ、そんなことを祈っていた。けど、そんな希望を打ち砕かれる。私は、馬鹿だった。
私はそっと帽子を外して、言葉を発する。
「……私、この団抜けるね」
一拍置いて、次々に声が上がった。特に、キノは考え直せと言わんばかりに食い付いてきた。
だから、私は大っ嫌いな名前を口にした。
「木野 大地(キノ ダイチ)」
目を見開いたキノの顔を見て、私は自分の中の何かが壊れていくのを感じていた。
やっと見つけた居場所だったのに。この団の皆は仲間だと思ったのに。違った。
仲間なんかじゃ、なかった。
「殺された……?違う。あんたのお兄さんは自殺でしょ?」
『は…………?』
次々と小さかった頃の思い出が蘇る。それはどす黒い感情となって、口から言葉が溢れる。
「に、兄ちゃんは確かに殺されたんだ!」
そうやって、私は、私たちは、いつも濡れ衣を着せられる!モンダイジとして、仲間外れにされる!
「殺したの間違いじゃないの?!私のお姉ちゃんを返して!!」
わかっている。こんな事しても、お姉ちゃんは返ってこない。だけど、だけど!
「人殺し!!」
「だから言ったのに……」
強い衝撃が頭にきた、そう思った瞬間に私の意識が飛んだ。全てを置いていくように、記憶が三年前に巻き戻る。
遠い何処かで、ルネの声を聞いた気がした。
「どこから話せばいいのかなぁ……」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!