コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
2年生に上がり、時守が転校してきて新しいクラスにも慣れてきた時期。
この時期になると皆(みな)頭を抱える。それは
「中間テストも近づいてきましたので、くれぐれも赤点を取らないように」
と担任の渋谷先生が告げる。そう、中間テスト。
「特に一州茗楽(イスミラ)。去年も地理で赤点取ったの覚えてるからなぁ〜」
「うげぇ〜…はあぁ〜い」
と言いつつも
「無理だろぉ〜赤点取らんなんてぇ〜」
ホームルームが終わった後、イスの背もたれに項垂れるように寄りかかる空楽王(ソラオ)。
「去年いくつ赤点だったの?」
という時守の問いに
「えぇ〜?…えぇ〜っとねぇ〜」
と指折り数える。
「そんな取ったのかよ」
と苦笑いする礼王(れお)。
「いや、ムズイって、赤点取らんの」
「逆に?」
笑う時守。
「無理ゲー無理ゲー。礼王ちんは?赤点取ったことある?あるっしょ?」
「残ねーん。赤点はなし」
「マジで!?」
「そんな驚くことかね」
空楽王が礼王の両手を両手で包み込む。
「頼む!勉強教えてくれ!」
懇願するように目を潤ませて言う空楽王。
「あ…ま、赤点は取ってないけど、決していい点ではないので…」
とキラキラした視線を向ける空楽王から視線を逸らし気まずい反応をする礼王。
「それでもスゴい。赤点取ってないだけでオレからしたら雲の上の人だよ」
「ちなみに時守は1年のときは北海道でしょ?テストとかどうだった?」
礼王が自分の話題から時守に話題をすり替える。
「ま、オレも礼王とおんなじ感じ。赤点取ることはないけど、いい点ではなかったから」
「そっか…」
「誰もオレを赤点から救ってくれる人はいないのかぁ〜!」
黙々と勉強をする鏡を置いて話は進む。同じように嘆く者がもう1人。
「あぁ…テストぉ…テストなんてこの世から消えればいいのにぃ…」
子那恋(しなこ)である。
「わかる」
同意する者が1人。綺麗な赤い髪で死んだ顔をしている優佳絵(ゆかえ)。
「だよねぇ〜?優佳絵もそう思うよねぇ〜?
もういっそのこと校舎にUFOでも墜落すればいいのにって思うよねぇ?」
「たしかに」
同意する優佳絵。
「校舎にUFO。…リッカたん…」
と呟く華音。
「真風菜は赤点大丈夫なの?」
子那恋がうつ伏せで顔だけ真風菜に向けて聞く。
「まあ勉強はしなきゃだけど、勉強したら赤点くらいは回避できるかな」
「スゲェ〜!そもそも勉強できるのがスゲェー」
「わかる」
「スゴい」のハードルが低い子那恋と優佳絵。
「で、でもめっちゃ平均だから」
「いや、平均取れるのは神」
「うんうん」
「神」認定のハードルが非常に低い子那恋と優佳絵。
「華音は?」
優佳絵が聞く。
「私?私は…」
「ん?」
子那恋、真風菜、優佳絵の視線が華音に集まる。
「私は一応80点台が平均、くらい…」
「えぇ!すごっ!」
と驚く真風菜。子那恋と優佳絵も驚いているが、驚きすぎて固まっていた。
「マ…マジですか…華音さん…」
「え?あ、うん」
「「華音様」」
声を揃えて言う子那恋と優佳絵。
「さ、…様?」
「いや、神様どころの騒ぎじゃない。もうこの世界の創造主よ」
「うんうん」
「この世界の創造主が神様なんじゃ…」
真風菜が静かにツッコむ。
「創造主様、勉強教えてください」
「教えてください」
華音の右手を子那恋が、左手を優佳絵が両手で包む。
「え、え、私が?教えられるかな」
「教えられますとも!ご自信をお持ちになってください」
無茶苦茶な敬語だ
と思う華音と真風菜。
「うん。じゃあ、私でよければ」
「やったー!やったね優佳絵!これで今年は赤点回避だよ!」
「だな。よかった」
「じゃあ、どうする?今日の放課後から始める?」
と華音が言うと子那恋と優佳絵はポカーンとした顔をする。
「え。なんで今日からすんの?」
「早くても1週間前でしょ」
と言う2人に
それが赤点取る原因では?
と思う華音と真風菜。そんなこんなで授業が始まった。
空楽王は授業中は寝ており、時守と礼王はちゃんと聞いている。鏡は言わずもがなしっかり聞いている。
予習も復習もしているが、現在受けている授業内容に頭を抱えており、まだ身についていないのがわかる。
華音はしっかり授業を受けて、しっかり授業内容も理解しており
真風菜も理解半分、?半分という感じである。数学の授業のときも
「じゃ、各自問1の問題を解いてみてください。わからなかったら周囲と相談してみてもいいですよー」
という先生の言葉にさすがに空楽王も子那恋と優佳絵も寝ていることはできずに
「ちょ、礼王ちん、ここどーやんの?」
と礼王に聞いたり
「「華音様」」
と華音様に縋ったりしていた。華音は
「この問題はさっき先生が言ってた公式と」
と教えられたが
「すまん…オレもあんまわかってない」
礼王は教えることができなかった。
「鏡、この問題わかる?」
礼王が鏡に聞く。
「…この公式を使うはずだけど…こんな半端な数になるはずがない…どこで間違った?」
とブツブツ呟いており
「ダメそうか…」
と鏡に聞くのは諦め、華音の肩を人差し指でツンツンする。
「ん?」
華音がツンツンされたほうを向く。礼王が苦笑いというか申し訳なさそうな顔をしながら
「ニ宅寺(にたくじ)さん、この問題の解き方わかる?」
と聞いた。
「あ、うん。答えが合ってるかはわかんないけど…」
「教えてもらえたりする?」
「あ、うん。私でよければ」
「ありg」
「ありがとうございます!ニ宅寺(にたくじ)さん!」
「様ね」
と子那恋が言う。ということで鏡は1人黙々と頑張り、空楽王、礼王、子那恋、優佳絵は
華音様に解き方を教わっていた。真風菜も解き方に苦戦していた。チラッっと横を見た。
横は時守。時守は窓の外を見ながらペン回しをしていた。
ふふっ。解くの諦めたのかな
と心の中で思いながらもその横顔を見る。スラッっと通った綺麗な鼻筋の中央ほどに貼られた絆創膏。
大きめの目に、明るいところにいる猫の黒目のように細長い瞳。
窓から差し込む陽の光が透けるほどの綺麗な白い髪。窓から差し込む陽の光が透けるほどの綺麗な白い肌。
気を抜いていると、癖なのか、眉と口を「へ」の字に曲げる。
美肌…羨ましい…
と心の中で思う真風菜。その視線に気づいたのか真風菜のほうを見る時守。
目が合い、ニコッっと微笑む時守。ドキッっとする真風菜。
なんで?なんで平野(への)くんのこと見るとドキッっとするんだ?
目が合ったからか。目が合えば大概ドキッっとするよね?だよね?
と自分を納得させる真風菜。
それにしてもどこかで見たことあるような…
「ん?」
時守が?を頭の上に浮かべる。
へのへのもへじに似てるっちゃ似てるんだよなぁ〜
眉が「へ」…ま、無理があるけど目が「の」
鼻の中央に貼られた絆創膏が「も」の横棒2本だとして鼻は「も」
口の形は変わるけど「へ」の字のときが多いから「へ」
白い髪を留めるヘアピン2本が「じ」の濁点で、顔の輪郭とヘアピンで「じ」
ジッっと見つめる真風菜に
「どうしたの?もしかしてわかんない?」
と言う時守。
「あ、え?あぁ」
わかんないのはたしかだけど…
と思いながら頷く真風菜。すると時守は自分のイスごと真風菜の机に寄る。
「ここはね、さっきの例題で使った公式を使うんだけど、この問題に限っては簡単な解き方があって」
と時守が教えてくれた。その通りに解いてみる真風菜。
「ほんとだ!解けた!え、平野(への)くん頭いいんだね!?」
驚く真風菜。
「ん?いや全然全然」
と笑いながら手を横に振る時守。
「え、でもさらさらって」
「?うん、去年ちょっとやったから」
「去年!?去年やったの!?」
「うん。みんなもっと難しい問題やってたけど、オレはあんま成績良くないほうだったからできなかったけど」
「え…すご…」
と時守の意外な一面を見た数学の時間。1時間目から4時間目までの授業が終わった。
お昼ご飯、お昼休憩の時間となり、女子は女子で固まり、男子は男子で固まり
購買へお昼を買いに行く組が教室を出た。
「華音様〜なにか貢物を」
と言う子那恋。
「いいよそんな!」
「でもこれからテストに向けて勉強教えてもらうわけだしさぁ〜」
「いいよぉ〜別にぃ〜」
という子那恋と華音のやり取りを聞いて
「じゃ、オレもなんか貢いだら勉強教えてくれる?」
とイタズラっぽい微笑みで華音に言う礼王。
「え?え?」
「ぜひ!六蓋守(ムコウモリ)きゅん、あ、いや、六蓋守くんが来てくれたら目が潤います!」
「ん?うん?ありがとう?もういつやるとか決めてる感じ?」
と礼王に聞かれて
「あ、ううん。まだ決めてはない」
と答える華音。
「ニ宅寺(にたくじ)さんはテスト勉強いつ頃からし始めてる?」
「え…そうだなぁ〜…」
と緊張気味に話す華音と微笑みながら話す礼王。子那恋は時守ににじり寄り
「あの2人どうですかねぇ〜」
と2人を見ながら時守に言う。
「どうって?」
「そりゃー色恋の話でっせー親方ー」
「親方…」
あまりそういう意識はしていなかったが、子那恋に言われてみて改めて華音と礼王を見てみる時守。
緊張気味に、どこか恥ずかしそうに話す華音と、微笑み、どこか嬉しそうに、楽しそうに話す礼王。
「キ…キラキラしてる…」
と気づいた。
「わかる…眩しいぜ…」
と子那恋と時守という珍しい組み合わせのバカなやり取りなどがあって
お昼ご飯を購買で買い教室に戻って女子は女子で、男子は男子で固まって食べる。
「ニ宅寺さんたち勉強会計画してるらしいよ」
礼王が鏡と空楽王と時守に言う。
「なに勉強会計画って。めっちゃ漢字じゃん。漢字の羅列は怖いって」
「5文字じゃん」
鏡が静かにツッコむ。
「5文字だよ!?逆に。四文字熟語だって四文字だよ?」
「そりゃ「四」文字熟語なんだから四文字でしょ」
と笑う礼王。
「てか「四文字熟語」も5文字」
と言う鏡に
「…」
無言で指折り数える空楽王。
「マジじゃん!」
この世の真理に気づいたような顔をする空楽王だった。お昼ご飯兼お昼休憩の時間が終わり、午後の授業へ。
お腹が満たされて眠くなり、午前中の授業も寝ていたが午後の授業も寝る空楽王、子那恋、優佳絵。
午後の授業もすべて終え、帰りのホームルームも終わって
「おー…わったぁ〜!」
「ふぅ〜!」
テンションが上がる子那恋と空楽王。
「授業なくなったら眠気もなくなるのか」
と礼王が苦笑いしながら言う。
「陽が下がってからテンション上がるんだね」
と言う華音。
「「2人ともうまいねぇ〜」」
子那恋と空楽王がハモる。
「「2人とも仲良いね」」
ハモる華音と礼王。
「そっちに言われたくないねぇ〜」
「たしかにぃ〜」
「ん?」
子那恋と空楽王に言われて顔を見合わせる華音と礼王。礼王は
「そうかなぁ〜」
と微笑み、華音は照れて下を向く。
「よしっ。部活だ」
優佳絵は部活に行く準備を整える。
「そっか。今日部活」
鏡が呟く。
「うん。見学する?」
と優佳絵に言われ
「あ、いえ」
と少し照れながら断る鏡。
「じゃあ、この後デートに誘う予定だったか」
と冗談を言う顔でもない顔で冗談を言う優佳絵に
「は!あ、全っ然違います!」
少し照れ、それよりも焦りが勝って、焦りまくって否定する鏡。
そんな鏡を見てクスッっと笑う優佳絵。そんな6人を見る時守と真風菜。
「なんか…いいなぁ…」
呟く真風菜。
「この光景?」
時守が聞く。
「え?あぁ、うん。なんか仲良く話してるみんなと私も仲良くしてもらってるんだなぁ〜って」
「あぁ〜。だとオレも運がいいというかありがたいというか」
「ん?」
「ほら、オレ転校してきて、この高校どころか東京にすら友達いない状態でこの学校にきて
不安だったけど仲良くしてもらえて」
「あぁ。そういえば転校生だったね」
「そうだよ。え、忘れてた?嘘でしょ?」
「馴染みすぎてて」
ニコッっと笑う真風菜にドキッっとする時守。
「東京に知り合いいないんだ?ま、いないほうが普通…なのかな?」
「うん。…ま、知り合い…?いるっちゃいるんだけどね」
「そうなんだ?」
「ま、小さい頃会っただけだし、相手も成長してるだろうからオレもわかんないと思うし
相手もオレのことわかんない…ってか、そもそも小さい頃会ったことすら覚えてないかもだから
東京に知り合いいるなんて言えないんだけどね」
と頬を掻く時守。
「北海道で?」
「うん。小さい頃は「オレトーキョーに友達いるんだぜー」って自慢してた」
と笑う時守。
「自慢になるんだ?」
「なるなる。一躍人気者よ」
「そうなんだ?」
と時守と真風菜も話しながら笑っていた。