テラーノベル
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阿部は記事をそっと閉じ、しばらく何も言わなかった。紙の擦れる音だけが、ホテルの一室に不自然に大きく響く。
阿部)この記事、続きがある。
そう言って、彼は裏面を指さした。
失踪から七日後。
現場付近で不可解な現象が相次ぐ。
夜間、存在しないはずの階から足音がする。
階段の段数が日によって違う。
作業員の一部が「途中で数えるのをやめた」と証言。
佐久間)……数えるのを、やめた?
阿部)うん。「数えていると、途中で“呼ばれる”」って。
沈黙。
その瞬間、誰かのスマホが震えた。
——ピロン。
画面に表示されたのは、フロア案内図の画像。
送信者は、この場にいる全員の名前が、同時に表示されていた。
佐久間)……ねえ、これさ。
案内図には、こう書かれていた。
3F
3.5F(関係者以外立入禁止)
4F
佐久間)さっきまで、こんなの無かったよね?
阿部は無言で立ち上がり、部屋のドアを開けた。
廊下の奥、非常階段の方から——
コツ、コツ、コツ。
上でも下でもない、
途中から聞こえる足音。
阿部)……行くなよ。
佐久間)でもさ。
佐久間は笑おうとして、失敗した。
佐久間)あの警備員、30年前から……
まだ、数えてるんじゃない?
非常灯が、ひとつ、消えた。
次の瞬間。
階段の踊り場に、**見覚えのない“扉”**が現れていた。
プレートには、薄く削れた文字。
——
「3.5F 点検中」
そして、扉の向こうから、
懐中電灯の光が、ゆっくりとこちらを照らした。
焦点の合っていない目が、
こちらの人数を、数えるように動く。
コメント
2件
えええ怖い......設定しっかりしててほんとすごい、