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#ざまぁ
「……慧斗」
鼓膜を優しく揺らす、低くて心地いい声。
ただ名前を呼ばれただけなのに
それだけで胸の奥がじわーっと熱くなって、体の芯まで甘く痺れていく。
俺はベッドの上で竜牙さんの大きな体に隙間なく抱きついたまま
確かめるように彼の首筋にそっと唇を寄せた。
ちゅ、と小さなリップ音が静かな寝室に響く。
すると、竜牙さんの逞しい体がびくっと分かりやすく揺れた。
「……っ、ん……」
「んー?何?今の反応、めちゃくちゃ可愛いんだけど」
「お前な……少しは加減しろ」
短い髪の隙間から覗く耳の付け根が
夜の薄暗い照明の中でもはっきりと分かるくらい真っ赤に染まっている。
一回りもデカくて、服の上からでも分かるほど強そうなガタイをしているくせに
こういうベッドの上でのやり取りだけは、高校生みたいにめちゃくちゃウブなのだ。
本当、反則だと思う。
俺はくすくすと声を立てて笑いながら
彼の引き締まった顎のラインから、熱を持った頬へとゆっくり指先を滑らせて撫でた。
「ねえ、ちゃんと俺のこと見て。隠さないで、見せてよ」
「……」
「竜牙さんの、全部」
竜牙さんはしばらくの間、何かを堪えるように視線を泳がせて黙り込んでいた。
きっと、長年彼を縛り付けてきた『ゴツくて気持ち悪がられるんじゃないか』という恐怖が
まだ心のどこかで小さな棘みたいに残っているんだと思う。
でも、今日の彼はもう逃げなかった。
ゆっくりと、だけど大きな手のひらで俺の背中を引き寄せて
自分の額を俺の額へとそっと押し当ててくる。
交わし合う吐息が熱い。
「……本当に、嫌になったらすぐに言えよ」
「だから、ならないって言ってるじゃん」
「……慧斗」
「ん?」
「俺……本当に、お前に嫌われるのが、怖くて仕方がなかったんだ。だから…受け入れて貰えたのが、嬉しいんだ」
額を合わせたまま吐き出された声があまりにも弱くて、切実で。
俺の胸の奥がキュンと切なく痛んだ。
完璧な彼氏を演じなきゃ捨てられると思い詰めさせていたなんて
俺、知らず知らずのうちにどれだけこの人を不安にさせてたんだろう。
「ごめんね……」
小さく呟くと、竜牙さんは少しだけ顔を離して、優しく首を横に振った。
「べ、別に謝って欲しいわけじゃないんだ」
「よくないよ。俺、あの時、自分の寂しさにかまけて、竜牙さんのことめちゃくちゃ傷つける言葉言っちゃったし」
「……でも、お前も不安だったんだろ。俺が何も言わないから」
鋭いところを突かれて、図星だった俺はバツが悪そうに少し視線を逸らした。
「……まあ、そうだけどさ」
「寂しい思いをさせて、悪かった」
「っ、だから!そういうところがズルいんだってば!」
思わず少し大きめの声を上げると、竜牙さんは驚いたようにきょとんとした顔をした。
「なんでもかんでも、全部自分一人で抱え込んで、自分が悪かったことにしようとするじゃん。そういうの、格好良すぎるし、優しすぎるよ……」