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第十二話 夏の終わりに
「永遠だと思った時間ほど、振り返ると一瞬だった。」
八月の終わり。
夏休みも、残りわずかになっていた。
蝉の声はまだ聞こえる。
太陽もまだ暑い。
でも、朝の風には
少しだけ秋の気配が混ざり始めていた。
「夏休みって短すぎない?」
美桜が駅前で言った。
「始まる前は長いと思うのにな。」
蓮が笑う。
「宿題終わった?」
「……。」
「その沈黙が答えだね。」
「まだ時間ある。」
「あと三日だけど。」
いつもの会話。
いつもの四人。
今日は夏休み最後の思い出作り。
四人で海へ行くことになっていた。
*
電車に揺られながら、窓の外を見る。
青い空。
広がる海。
湊は久しぶりにカメラを取り出した。
最近、写真を撮る意味が少し変わった。
綺麗な景色を残すため。
それだけじゃない。
その時の気持ちまで残したいと思うようになった。
「また撮ってる。」
隣から声がする。
紬だった。
「嫌だった?」
「ううん。」
紬は首を振る。
「なんか安心する。」
「安心?」
「うん。」
「神崎くんが写真を撮ってると、ちゃんと今を見てる気がするから。」
その言葉に、湊は少し照れた。
*
海に着く。
四人で砂浜を歩く。
蓮と美桜はすぐに海へ向かった。
「湊!」
「早く来いよ!」
「俺はいい。」
「青春しろ!」
無理やり引っ張られ、湊も笑う。
気づけば。
昔なら避けていたような時間を、
今は楽しんでいた。
波の音。
笑い声。
夏の日差し。
全部が眩しかった。
*
夕方。
四人は砂浜に座って海を眺めていた。
オレンジ色の光が水面に広がる。
「綺麗。」
紬が呟く。
湊はカメラを構える。
でも、すぐには撮らなかった。
「どうしたの?」
紬が聞く。
「いや。」
「この景色、撮る前に覚えておこうと思って。」
紬は少し笑った。
「本当に変わったね。」
「そう?」
「うん。」
「前の神崎くんだったら、全部写真に残そうとしてた。」
湊は海を見る。
「今も残したいよ。」
「でも。」
「写真にできないものもあるって分かったから。」
紬は静かに頷いた。
*
帰り道。
駅へ向かう途中。
紬が突然言った。
「私ね。」
「海外に行きたいんだ。」
湊は足を止める。
「海外?」
「うん。」
「写真を勉強したい。」
少し驚いた。
「写真……。」
「昔はね。」
紬は笑う。
「写真を見るのが苦しかった。」
「でも、神崎くんの写真を見て思った。」
「写真って、過去に戻るためだけのものじゃないんだって。」
風が吹く。
「未来を見るためにもあるんだって。」
湊は黙って聞いていた。
紬の夢。
初めて知った。
「すごいと思う。」
「本当に?」
「うん。」
「紬ならできると思う。」
その言葉に、紬は少しだけ笑った。
でも。
その笑顔の奥に、少し寂しさがあった。
「ありがとう。」
*
夜。
家に帰った湊は、今日撮った写真を見る。
海。
夕焼け。
笑う蓮。
楽しそうな美桜。
そして。
遠くを見る紬。
シャッターを切った瞬間。
その表情が少し寂しそうだった理由を、
湊はまだ知らない。
📷 Photo.012『夏の向こう側』
撮影日:8月27日
夏は終わる。
でも、
あの日見た景色は消えなかった。
コメント
2件
ありがとうございます! 写真には人の想いが込められてて写真にできないものほど大切なものもあったりするし、 未来を見たり過去を思い出したり、過去を思い出したりといろんな楽しみ方ができますよね! だからこそ価値のあるものなんだと思います! 紬の心の奥もいつか明らかになったらいいですね! 込められた思いがきっとあると思うので! わ!ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです!ー
美月ゆめかだよ〜🌸 第12話「夏の終わりに」読んだよ! もうね、冒頭の「永遠だと思った時間ほど振り返ると一瞬だった」って一文で心臓掴まれた😭💕 夏の終わりの切なさと、湊くんの写真への向き合い方が変わったのがすごく伝わってきて…「写真にできないものもある」って気づくところ、エモすぎる…! そして最後の紬ちゃんの夢の告白!「写真は未来を見るためにもある」って言葉、美しすぎて泣いた。でもその笑顔の奥の寂しさが気になるよ…次回も絶対読む!!👏✨
#同棲
🔹羅碧🔹
199
#恋愛