突然異世界に飛ばされた俺は、まず自分の姿を確認した。
【ライウ】「なんだこれ…。金髪の…イケメン…?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
自分の姿を確認すると、なんといわゆる金髪イケメンに変わってしまっていた。普段は黒い前髪で目元を隠しているからか、顔周りが落ち着かない…。
【ライウ】「なんで…どゆこと…?元々の姿は…どこにいったの…?てかまず…ここどこぉ!?元の世界にもう帰れないの!?」
そう言いながら混乱していると、とあることに気付いた。こんなに大きな声を出し、動き回っているのに、誰も自分のことを見ようとしないことだ。むしろ、自分のことが見えていないような感じで、見られたと思っても何もなかったかのように人々が素通りしていく。
【ライウ】(あれ…?これもしかして…自分のこと…見えてないの…?)
【ライウ】「お…おーい!こっちこっちぃぃぃ!ヘイヘイヘーイ!ヘイヘイ…あれ…?やっぱり見えてない…?」
その後もいろんな人に声をかけようとした。だがこちらに誰も気付かない。「なんでぇぇ…」と呟きながら、1人で悩んでいると、1人の少年が声をかけてきた。
【?】「ねぇねぇ…そこのキミぃ…。」
【ライウ】「うわぁっ!?な…ななな…なにぃ…!?」
【?】「キミ…ここの世界の人間じゃないよね?」
【ライウ】「えっ…?」
【?】「現実世界に疲れちゃってるんでしょ〜?キミたち人間ってのはさぁ…。」
【ライウ】「な…なに急に…。確かに俺は疲れてるよ…?でも元々の世界に帰らなきゃ…」
【?】「ちょうどよかった〜!だったらここの管理者になってよ!」
【ライウ】「えっ…?管理者…?管理者って…。」
【?】「いわゆる神様みたいなもの!管理者になってくれたら…強い能力とこの世界の人間と話せる権利を与えるよ!」
【ライウ】「えっ?ホントに…!?」
【?】「まぁ…その代わりと言っちゃなんだけど…もう元の世界には帰れないよ。あとこの世界で…元々いた世界のことを話してはいけない。」
【ライウ】「…………………は?」
【?】「だから…もしここの住人に話したら…君には最大の不幸が訪れるだろう。」
【ライウ】「それって…どういう…」
【?】「そんじゃ…せいぜいこの世界で幸せに生きてね。」
【ライウ】「うぅっ…!?」
少年はそう言いながら、俺に向かって手を伸ばし、赤色と黄色い宝石のようなものを渡してきた。
そして宝石を受け取ったあと、その少年は消えていってしまった。
【ライウ】「いったい…なんだったんだろう…?あれ…なんか…眠…い…。」
-???-
【ライウ】「ん…んぅ…。あれ…?どこ…ここ…?」
目を覚ますと、また知らない場所にいた。キレイに整理整頓された勉強机や、観葉植物、額縁に入れられた絵画などがあった。どうやら誰かの寝室のようだ。
【ライウ】「でもなんで…こんなとこに…?それより…ベッド暖かい…。」
ガチャ…(ドアが開く音)
【イツキ】「あっ…。」
【ライウ】「あれ…?あっ!?ごめんなさい…!キミの部屋だったんだ!?今すぐ出ていくから…!」
【イツキ】「いや待って!まだ安静にしててよ!ライちゃん!」
【ライウ】「えっ…?もしかして…イツキ…?」
【イツキ】「そうだよ!イツキだよ!」
【ライウ】「………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?なんでいんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
どうやらここはイツキの部屋だったらしい。
このイケメンなやつの名前は『風神 樹』。一応俺の親友で、幼なじみである。頭も良いし、真面目で超絶優しい。性格までイケメンなタイプだ。
【ライウ】「ていうか…なんで俺がライウだって分かったの?」
【イツキ】「え?いつもどおりだから…。」
【ライウ】「えっ?い…つも…どお…り…?」
俺は急いでベッドから飛び上がり、姿をもう一度確認した。すると、いつもどおりの黒髪の姿に戻っていた。
【ライウ】「あれ…?見た目が…。」
【イツキ】「ん?何かあったの?」
【ライウ】「え…えっと…なんでもない!寝癖とかついてたら…恥ずいなぁと…。」
【イツキ】「あー!なるほどねー!あっ…そういえば…お腹とか減ってるんじゃない?ご飯作るよ!ちょっと待ってて!」
【ライウ】「お…おう…。」
そう言った後、イツキは部屋の外へ出ていった。
【ライウ】「なんで急に姿が元に戻ったんだ…?もしかして話しかけてきたアイツの仕業…?うぅ…何が起きてるんだぁぁぁ…。」
そう思いながらずっと考えていると、外から大きな音が聞こえてきた。
【ライウ】「えっ…今のなに!?」
窓から外を見ると、得体の知れない怪物たちがいろんな人々を襲っていた。黒くドロドロした姿をしていて、人型ではあるが、明らかに普通の人ではない。
【ライウ】「なにあれ…怖っ…。人…ではないよね…?絶対…。どうしよう…助けないといけないけど…。」
『助けなくてはいけない』とそう思ってはいるが、恐怖で足がすくんで、動けない。すると…謎の少年から渡された宝石が光り輝き始めた。
【ライウ】「えっ…?」
輝く宝石に触れた瞬間、宝石の形が変化し、カードの形になってしまった。
【ライウ】「これ…。まさか…変身する系…?嘘だろ…マジかよ…。」
【ハピ】「とりあえず外へ行くラビ!」
【ライウ】「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?どなたですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
【ハピ】「ボクは『ハピ』ラビ!これからキミを支える仲間ラビ!とりあえず早く外へ行って…変身ラビ!」
【ライウ】「えぇぇ…やっぱ変身すんのかよ…。ヤダなぁ…痛いのとか嫌だし…。」
【ハピ】「早く行くラビ。じゃないと…無理やり連れていくラビ。」
【ライウ】「あー…もう…!分かったよ…!行くってば…!」
-外-
【女性の声】「きゃああああああああああああ!?」
【男性の声】「なんだ!?コイツらは!?」
【ライウ】「思ったよりもいっぱい…いるな…。」
【ハピ】「あの子たちを倒せるのは…キミが今持ってるカードの力だけなんだラビ!だから今からこれを使って変身するラビ!」
【ライウ】「えっ…?これ…本…?」
【ハピ】「そうラビ!その本の中にマークがあるんだラビ!そのマークにカードをくっつければ変身できるラビ!」
【ライウ】「紋章にカードをかざして…カードの名前を言う…その後に…次のように唱えよ…?」
【ハピ】「早く隠れて変身するラビ!じゃないと…みんなが危ないラビぃぃぃぃ!」
【ライウ】「うっ…分かったよ…!やってやる…!」
-変身シーン-
【ライウ】「ブレイヴチェンジ!『カムイイメル』!レッツメイクオーバー!」
【ハピ】「レッツゴーだラビ〜!」
【サンダー】「うっ…ん?あれ…?格好が変わってる…!?あと体が軽い気がする…。」
【ハピ】「キミは今からはブレイヴサンダーと名乗るラビ!今すぐ倒しに行くラビ!」
【サンダー】「えっ?う…うん…分かった…!」
【怪物たち】「うぅ…タすケテ…たスけてェ…。」
【サンダー】「助けてって言ってる…?」
【ハピ】「あの子たちは元人間で…とあるヤツらに実験されて凶暴化してるんだラビ!」
【サンダー】「えぇっ!?そうなの!?それって…倒していいの…?」
【ハピ】「うっ…1度倒してしまえば…この世界には存在できなくなるラビ…。だけどボクの友達が戻してくれるラビ!」
【サンダー】「そ…そうなんだ…。」
ということは、1度あの子たちの命を奪わなきゃいけないの…?そんなことしていいの…?もう一度戻せるとは言っても、そんなことできない…。
僕はずっと戸惑っていた。とにかく戦うのが怖い。でもこのまま迷っていたら、他の人たちの命が危ない。
【サンダー】「これがジレンマってやつか…。」
【アルファ】「あれれ〜w?キミだれ〜w?」
【サンダー】「…!オマエこそ誰だ!?」
【アルファ】「えぇ〜…アルファちゃんのほうから聞いたんだからぁ…アンタから名乗るべきなんじゃないのぉ〜?まぁいっか。」
【アルファ】「私はアルファちゃんって言うんだぁ〜♪キミ…もしかしてネビュラ様の教えを破るつもりなのぉ〜?」
【サンダー】「ね…ネビュラ様…?」
【アルファ】「あははwやっぱり知らないんだぁ〜w!そりゃそうだよねぇ…だってキミ…絶対弱いそうだも〜んw弱いやつが知ってるわけないもんね〜w!」
【サンダー】「弱いって…。」
【アルファ】「だってキミ…人間の匂いがするんだもんw!人間なんて…どいつもコイツも弱いし…哀れだし…おバカさんだもんね〜♪」
【サンダー】「は…はぁ?」
【アルファ】「まぁ…でもキミはちょっと違うみたいだね〜?」
そう言いながらアルファと名乗る子は、僕に顔を近づけてきた。
【サンダー】「はぁ…?なんだよ…?」
【アルファ】「ふーん…人間にしては良い目してんじゃん。ねぇ…私たちの仲間になんない?その能力を使って…この世界とかをめちゃくちゃにしようよ〜♪」
【サンダー】「めちゃくちゃって…そんなことするわけねえだろ!」
【アルファ】「そうやってヒーロー気取って…なんなのさ?自分のほうが強いって…錯覚でもしてるわけ?どうせ…戦う余裕すらないくせにさぁ…!」
【サンダー】「うぐっ…!?」
【アルファ】「ほら…能力を持ってるからって…急に強くなれるわけなんてねえんだからさ?こっちの仲間になってくれたら…教えてやるし…力も与えてやるよ。だから…いい加減諦めろよ。人間失格くん♪なーんちゃって〜♪あははははww!」
【サンダー】「うぅ…。」
痛い…動けない…よけれなかった…。
反射神経だってスゴいわけじゃないし、運動だって得意なわけじゃないし、やっぱりヒーローなんて無理なんだ…俺…。
【サンダー】(異世界に来ても…何も変わらない…。悔しいな…苦しいな…。)
自然に目から涙が溢れてくる。そして涙と共に、自分の中から弱さや劣等感や怒り、苦しかった思い出が蘇ってきた。
そして動けないままでいると…
【イツキ】「やめろよ!その子を傷つけるな!」
【アルファ】「なんだよ…オマエ…邪魔なんだよ!」
【イツキ】「うぅっ…!?ガハッ…うぁっ…。」
ここへ遅れて駆けつけたイツキが俺を守ってくれていた。そしてイツキがアルファにやられ、ボロボロになっている。
【サンダー】(アイツはブレイヴにもなってないのに…人間の姿なのに…。)
アイツみたいなヤツが、『ヒーロー』って言われるんだろうな…。悔しいな…アイツばっかりズルい…。俺だって褒められたい…認められたい…。なのに…どうして…。
【ハピ】「サンダー!?大丈夫ラビ!しっかりするラビ!じゃないとあの子が…!」
【サンダー】「あーぁ゛…もういいや…どうだっていい。名誉なんて…幸せなんて…どうでもいい。」
【ハピ】「っ!?サンダー…?目が…赤い目が…」
【サンダー】「ハピ…コイツら全員…やっつけちゃえばいいんでしょ?一瞬で終わらすから待ってて。」
体がさっきより軽い…今なら戦える…!
【アルファ】「っ!?来る…!」
【サンダー】「今武器構えても遅ぇんだよ…!!!!」
【アルファ】「うぐぅっ!?うわぁぁぁぁぁっ…!」
【イツキ】「…!あっ…ありがとう…。あとキミ…大丈夫…?」
【サンダー】「オマエのほうが大丈夫か?人間の癖に出しゃばんな。危ねぇから下がってろ。」
【イツキ】「ご…ごめんなさい…。」
【サンダー】「身を隠しとけ。あとは俺が全員やる…!」
【イツキ】「うわっ…!?スゴい…雷みたい…。」
【サンダー】(足が異常に速ぇから…逆に戦いずれぇなぁ…。早く慣れなきゃ…。)
【怪物たち】「ウぐァァァァ…っ!?」
【サンダー】「一旦眠っとけ。」
【怪物たち】「うぅぅぅ…。」
敵たちを全員倒した後、怪物たちの姿がキレイな宝石に変化し、地面に次々落ちていった。
【サンダー】「なんだこれ…。」
【ハピ】「それは魂の欠片ラビ!」
【サンダー】「ふーん…大事そうだな。ありがたく貰っとくか。」
【イツキ】「あの…!」
【サンダー】「あ?」
【イツキ】「うっ…顔が怖い…。助けてくれて…ありがとうございました…。」
【サンダー】「別に?あと俺のほうこそ…助かった。ありがとう。」
【イツキ】「い…いえ…。」
【サンダー】「そんじゃ…もう俺は行くから。」
【イツキ】「あっ!ちょっ…!ちょっと待ってください…!」
【サンダー】「はぁ…今度はなんだよ!?」
【イツキ】「また…どこかで会えますか…?」
【サンダー】「…………あぁ…また来る。そんじゃ…。」
【イツキ】「あっ…どっか行っちゃった…。ていうか…名前聞くの忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ…。でも…スゴかったな…。憧れるな…カッコいいな…『ヒーロー』って…。」
【ライウ】「うっ…うぐっ…いてぇ…体がぁぁぁぁ…。」
【ハピ】「初めてなのに…スゴいラビ!思ったよりも強くてビックリしたラビ!」
【ライウ】「思ったよりもって…なんだよ…。」
【ハピ】「これからもこんな感じで…戦ってほしいラビ…!これからよろしくラビ!」
【ライウ】「えぇ…………………ヤダ…。」
【ハピ】「えっ…。」(꒪꒫꒪”)ガーン…
【ライウ】「あっ…もう…そんな顔しないでよ…。ちゃんとやるからさ…。」
【ハピ】「うっ…サンダー…イジワルしないでぇぇぇぇ…。」
【ライウ】「あぁぁぁぁ!もう!泣くなって…!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そして俺は英雄『サンダー』として名乗ることにもなり、ここから怪物たちと戦う日々が始まるのだった…。
【?】「ふふっ♪やっぱり面白いな〜♪特にあの子…!はぁ…もう少しブレイヴを増やしてみようかな〜♪これからが楽しみだ〜!」
コメント
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まさかの変身アイテム系だった!!ヒーローって言葉憧れるよね〜!