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「お母様の胸の光はどうして他の人より小さいの?」
そう聞いたのはいつだったか。生き物なら誰しも胸に持つその光。ものごころついた時には見えていた。だからみんな見えるものだと、当たり前の事だと思っていた。
ひとによって持つ光はそれぞれで、色や大きさ、明かりの強さも違った。ただ母の光はどの人よりも小さく暗い。ついそれを家族の食事時、不思議に思い聞いた。
「ウカノには他人には見えないものが見えるのですね」父や兄達がキョトンとしていたが母はそう言った。
後にも先にも、言ったのはこの時だけだ。他人には見えないものだと気づいたが、だからといって生活が変わるものでもない。母以外には、変なものが見える子だと思われ、気まずくなってしまったが。
それでもこの世界について勉強したり、剣術や魔法の訓練を行って過ごしてきた。将来は当主となった兄をサポートするのだろう。日に日に母の胸の光は小さくなっていくのが気がかりだったが、そうやって過ごしてきた。
「シンシア様の命もそう長くはありません。」医者は母の命がそう長く続かないことを告げた。元々病弱だった母はいつ亡くなってもおかしくないと、ここまで生きたのは奇跡に近いと言っていた。
それは分かっている。でも、日に日に弱っていく母を見るのは心が苦しめられた。
「貴方は誰よりも思慮深く、心の優しい子ですね。剣の才はアリク程ありません。魔法の才はカロン程ありません。しかし貴方は人を思いやる事ができます。他人に優しくしたらその優しさは自分に返ってきますから、その心を忘れないで下さいね。」
母の胸の光が、だんだんと小さくなっていく。そうして最期に部屋いっぱいを埋め尽くす程光り、光が明けた時に母は亡くなっていた。そうして胸の光も無くなっていた。