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少し前((





「チッ…」


これから寒さが増すだろうという頃。


俺は朝早く苛つきながら走っていた。


少しかじかんだ手をこすりながら地面を蹴る。


「っ..はぁ..すぅ〜..ガラガラピシャンッ」


「おいクソ親父!!」


ドアを開け、家の中に向かってありったけの声で叫ぶ。


「おぉ。帰ったんだな」


すると中からのこのこと親父が顔だした。


「おぉ。じゃねぇよ!なんで俺が女装しなきゃいけないことになってんだよ!!」


「大丈夫だ。」


「何がだよ」


「お前だけじゃない。」


「…いやだめだろ」




「まぁ。とりあえず中入ったらどうだ?」


「はぁ..わーたよ。」



家の中に入り、リビングの床にどさっ、と座り込んだ。


「で..?なんでこんな事になってるわけ?」


リビングの机には何かの資料が大量に散らばっている。


「連絡が入ったと思うが、簡潔に言うと白黒学園に潜入捜査しに行け。ということだ。」


「いや。そこまでいいんだよ。なんでそこから女になれ、ってなんねん」


親父は真剣な顔をしてわかりきっていることを言うもんだから思わずずっこける。



「そういうことは気にしちゃだめだよ。琳。」


「…お前いつから居たんだよ。」


「ん~琳が来る前から。」


大量の資料の山の向こうからひょこっと顔を出したのは幼馴染の南。

性格が真逆な分、それぞれの欠点を補いながら何かと任務で一緒に行動することが多い。


「はぁ。で?いつから行けばいいんだよ」


「来年、入学式があるだろう?その一ヶ月後だ。」


「..?なんで入学式の後なんだよ。入学式に入ればいいじゃねぇか」


「色々とこっちの都合だよ。」


「あっそうですか..」


いつもはダラダラしている印象しかないが親父は指示組のトップにいる。

頭だけは冴えるらしい。

代々俺の家はスパイとして働いている。

俺も幼い頃から何かとスパイとしての教育を受けてきた。



「ところで、女になるためのウィッグとかあるんです?」


「確かに。」


「ウィッグ?そんなもんは使わないよ」


「「え?」」


「今、ハカセくんが薬作ってるからもう少し待って」


「..?どういうことだよ。」


「それまで特訓だねニコッ」


親父がこちらを見て怪しげな笑みを浮かべてる。


「上辺だけじゃバレるよ?中身まで女子にならないと(^^♪」






「..なあ南。」


「うん。わかるよ。」


「とりま逃げようか。」


「そうだね。琳。」



潜入捜査で女体化なんて聞いてないんですけど!?

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