[オーロラの導き]
涼架side
私は、もうどれくらいペダルを漕いだか分からなかった。
街灯の明かりはとうの昔に消え、あたりは深い闇に包まれている。
聞こえるのは、自分の荒い呼吸音と、チェーンが擦れる微かな音だけだった。
「…はぁ、はぁ、はぁ…っ、もう、無理…!」
そう言って、私は自転車を止めた。
若井を乗せたままの二人乗りは、想像以上に重くて、私の体力は限界だった。
「若井…!もう、ここから先は…歩いて…!」
私は息を切らしながら、後ろを振り返った。
しかし、若井は何も言わず、ただじっと前を見つめている。
その時、私は気づいた。
目の前に広がるのは、広大な湖だった。
湖面には、満点の星空が映り込み、まるで宇宙を旅しているかのようだった。
「……着いた」
若井が、静かにそう呟いた。
「え…?」
私は自転車から降り、若井の隣に並んだ。
二人の目の前には、広がる湖とその向こうにそびえる山々。
そして、その空には、美しく神秘的なオーロラが揺らめいていた。
「…うそ……」
私は、思わず声を漏らした。
その光景は、あまりに美しくて、そして、あまりにも非現実的だった。
「これ…本当に…」
「…あぁ」
若井は、私の言葉に静かに頷いた。
息を切らしていたことなんて、もうどうでもよくなった。
私は、そのオーロラをただ見つめていた。
すると、背中に若井の手がそっと触れた。
「……涼架」
若井の声が、震えている。
その声に、私はゆっくりと若井の方を向いた。
若井の瞳は、オーロラの光を映し、いつになく真剣だった。
そして、彼は、一言言葉を発した。
「伝えたいことがあるんだ」
その言葉は、まるで何かの始まりを告げるように、夜空に響いた。
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コメント
2件
いけ〜若井!
もう!これからやのにぃ~💦って所で切られたぁ~😭