テラーノベル
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「今さら何を言っても……ややこしいな。ああ、それに湊の性格と……過去もややこしい」
「何だよ……」
「土曜の夜と、日曜は? 」
何だ、それ……不倫ソングかよ。古いな。分かっちゃうけどな。
「過ごしてない」
「思い当たる節は? 」
「ない。あるっちゃ、あるけどその前にこうするつもりだった。彼女は」
「聞いてもいいですか? 」
「聞かれたんだよ。部下と話してるの『口説いてた女の人』ってね。湊じゃなくて、麗佳のを。それを聞いた別の奴が、『結婚前に遊んだんだ』って言った」
彼の目が何かを追うように揺れ……止まった。
「それだ」
「いや、それ聞く前に向こうは引っ越してた」
「決定打。結婚って? 」
「部下に、彼女と結婚考えてるのかって聞かれたから、答えたのがそうなっただけだ」
そう言うと、彼の肩が震えた。
「くっくっく……」
何だよ……。
「湊のストーカー男、湊と付き合ってる時に婚約発表したらしいんですよね。つまり、湊からしたら“結婚前に遊んだ”まぁ、たぶん察するに……本命は湊だったんだろうけど」
「つまり……」
「本気、なんですよね? 」
彼は強い目を向け、そう聞いた。
「あのなぁ……」
「答えて下さい」
「……本気だよ。これ以上ないくらい」
真っ直ぐにそう言った。それが、本心だからだ。
「は! ですよね」
……つまりは
「結婚前に遊んだと? 俺が? 」
「まぁ、そうとられても仕方ないですね。誤解が重なっただけで。あ、清水部長独身ですよね」
「君ねぇ」
彼は可笑しそうに肩を揺らすと、その鞄から取り出したものに、何やら書き出した。
「ほら、やっぱり……手が早すぎるのも考えものだな」
そう、一人言を言いながら。
「散々、協力して貰ったので……お返しします。……1回だけですよ。後は自分で何とかして下さい」
「してないよ、俺は、何も」
君たちは元々、お互い想い合ってた。
「……お世話になりましたよ。かなり、ね」
そう言って、俺に一枚の名刺を差し出す。
「まったく、こんな昭和臭いことを……」
湊の……名刺。
「あいつ、今月いっぱい……いや、言ってもほぼ有給消化で、辞めるから、その会社にはほとんど来ないかもだけど。場所、分かるでしょ? それと、プライベートの連絡先」
「ああ、十分だ」
「そんなあなたは、見たくないしね」
そう言って生意気そうに口角を上げた。
「君も大概だったけど」
「えー、僕こんなにみっともなかったですかー? 」
……。みっともない……か。
「だいたいね、その顔! 」
「は?」
「この上ない、妻帯者顔なんだよ」
妻帯者顔って何だよ。しかも、この上ない?
「君の顔も……ああ、まだ軽薄な方がマシか」
「言いますよね……あ、でも……部長! 解決策が」
「ああ、あるか? 」
「実際に妻帯者になれば」
「は、確かにな」
「だいたいね、あなたみたい優しくて、包容力もあって、仕事も出来て、社会的地位もあって見た目もいい男がフリーだとは、誰も思いません」
急に褒めてくれる。
「俺の事、狙ってるのか? 」
「あ、僕も|狙われる《そっち》側なんで」
……まぁ、いいか。
「聞いてもいいか? 」
「はい」
「俺に、落ち度は? 」
「初っぱなでしょうね」
「出だしか……まぁ、確かに……」
最初から、彼女の態度はおかしかった。
「あんなホテル、何で予約してると思います? |近く《そこ》に自宅ある人が。わざわざ」
『こっちの人じゃないんですか? 』
確かに湊もそう聞いた。
「しかも、シングルじゃない部屋」
……
「誰かの為に予約していた。その代わりだと、思ったんでしょうね」
「……あ……」
「結婚前に遊んだと。繋がるわけだ」
誰かにすっぽかされた代わりに、抱かれた……と?
「あなたが湊に言ったセリフ、全部既婚者変換してみて下さい」
……全部。
「結構な……男……だな」
「あはは! 結構な事、言ってんだ」
「……君よりは、言ってないさ」
「とりあえず、急いで下さい。その、妙な落ち着きも敗因ですからね」
「……そのつもりだ」
「湊、仕事辞めてイタリア行くって……」
「……それは……」
「自分で聞いて下さい」
「ああ、そうだな。感謝するよ」
そう言って、名刺を胸にしまった。
湊が……どんなつもりで俺と過ごしていたか。俺を過去の男と重ねていたのか。誤解であっても、彼女の心情を考えると胸が痛む。どこで、どうしているのか。
今……湊……。
コメント
1件
あー、もう、やっとわかった…!ってなるエピソードだったわ。清水部長、完全に“既婚者扱い”されてたんだな…「妻帯者顔」ってツッコミも笑ったけど、誤解の積み重ね方がなんか切ない。湊さんが自宅近くであえてホテル予約してたのも、全部伏線だったんだな。さすが西原さん、構成が丁寧すぎる。ラストの「今…湊…。」で一気に切なくなった…急いで追いかけてほしい。
#うりさん
ろのみ🩵🫧
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19
#年上彼氏
おうか

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