テラーノベル
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(川西side)
実は見たんだよ。
瀬見さんが、川辺で自殺しようとしているところを。
………正直マジで焦った。
俺が一秒でも早くここに来なかったら、瀬見さんはとっくに自殺してるかもしれなかった。
…俺はその事実に身を震わせた。
「成らぬ堪忍するが堪忍」
白布にさ、瀬見さんが自殺しようとしたこと、言おうと思うんだけど。
タイミングが掴めないし、とてもじゃないけど、…言いづらい。
言いづらいっていうかさ…
「瀬見さんが自殺しようとした」
…なんて、絶対に口に出したくない。
例えそれが嘘だとしても。
………でも伝えないと。
…………いや、でも…
……………うーん……
(白布)
「…お前話聞いてる?」
(川西)
「えっ?…あ、うん」
(白布)
「んだよ。考え事?」
(川西)
「いや、…別に?なんもないよ」
(白布)
「………お前、今日変だぞ」
「頭でも打った?」
(川西)
「いや…そうじゃなくて、……」
「………あー、くそ…」
言わなきゃ、
(白布)
「何だよ、さっきから」
伝えなきゃ、
(川西)
「あの、…白布、」
(白布)
「なに」
俺は瀬見さんが自殺しようとした、という事実を受け止めなければならない。
だから、……………言おう。
(川西)
「あの、さ」
(白布)
「うん」
(川西)
「瀬見さん、が…」
(川西)
「………」
「………自殺、しようとしてた…」
(白布)
「………」
「……………………………は?」
(白布)
「何それ、どういうこと?」
(川西)
「川辺で瀬見さんを見つけた時に」
(川西)
「入水自殺?しようとしてて、……」
(白布)
「お前何でもっと早く言わなかったんだよ…!」
(川西)
「いや俺だって言おうとしてたよ!」
「でも、なんか、言いづらいじゃん…」
「言うタイミング掴めなかったし…」
(白布)
「だからって…!」
(瀬見)
「ん、………んん」
(川西・白布)
「!(やべ、瀬見さん起きそう)」
(瀬見)
「………んぅ、…ん」
「_(-ω-_[▓▓](寝)」
(川西・白布)
「(あぶねー…)」
(川西)
「お前大声出すなよ…」
(白布)
「ごめんって」
「でも、瀬見さんが自殺したいってことは」
「精神的にかなり限界ってことだよな」
(川西)
「うん…」
「最悪の場合、また自殺しそうだし」
「明日からできるだけ瀬見さんの傍にいてあげようよ」
「そうすればいじめも多少減るし瀬見さんも安心できるだろ」
(白布)
「珍しくまともな提案するじゃん」
(川西)
「でしょ?」
(白布)
「…でも人手が足りないな」
(川西)
「うん、流石に2人じゃきつい」
(白布)
「あ、そうだ。俺バレー部にこのこと伝えてくる」
「そんで、バレー部の人達にも瀬見さんのこと見守っててもらおう」
(川西)
「なるほど」
(白布)
「じゃ、お前瀬見さんのこと見てろよ」
(川西)
「え、今から行くの!?」
「あと10分で消灯時間だよ!?」
(白布)
「ダッシュで行く」
(川西)
「10分で行けるか…?」
(白布)
「安心しろ、秒で戻ってくるから」
(川西)
「秒で!?」
(白布)
「じゃ行ってくるわ」
(川西)
「は、ちょっとおい白布…」
「………って、行っちゃった…」
あいつ大丈夫かな…
………まぁ、いっか。
俺は瀬見さんを踏んづけないように気を付けながら、ベッドに腰をかけた。
ふぅ、とため息をつく。
瀬見さんはまだすやすやと眠っていた。
…寝顔が、愛おしくて可愛い。
瀬見さんの銀髪を撫でるように触る。
そういえば、髪の毛も自分で抜いてるんだったっけ。
よっぽど追い込まれてんだな。
可哀想に…
瀬見さんは本当にすごいと思う。
普通の人が我慢できないところを、あの人は我慢してるんだからさ。
(川西)
「……やっぱすごいよ…瀬見さんは」
愛おしい彼の頭を撫でながら呟いた。
(瀬見)
「…………かわにし、」
(川西)
「、………!」
(川西)
「え、………せみさ、?」
今、俺の名前、呼んだ…?
もしかして今の、聞かれた…??
(瀬見)
「んん………」
「………」
(川西)
「……………寝言か、」
焦った…起きてたのかと思った。
でも、よく見たら顔色が少し悪いし、呼吸もあまり整っていない。
悪い夢でも見てるんだろうか…
本当に可哀想。
いい夢すら見られないなんて…
悔しさで自分の唇を噛み締めた。
瀬見さんを早く悪夢から解放してあげたくてたい。
だから俺は少しでも安心させるために再び目の前の身体を抱きしめようと右手を伸ばした時、後ろからノックもせずにドアを開ける音が聞こえた。
咄嗟に伸ばした右手を引いた。
(白布)
「全員に伝えてきた」
(川西)
「…お、おう」
(白布)
「瀬見さんはどう?」
(川西)
「………………問題、なかった」
(白布)
「何その間。ホントかよ」
大袈裟なくらいにブンブンと首を縦に振る。
瀬見さんにまた抱きつこうとした、なんて知られたら…
…確実に一発ぶん殴られる。
(川西)
「皆はなんて言ってた?」
(白布)
「明日から瀬見さんのことしっかり見守るって」
(川西)
「そっか。…よかった」
(白布)
「これで瀬見さんが、安心して過ごせるといいんだけどな」
(川西)
「うん。そうだね」
ふわぁ、と大きな欠伸をする。
(白布)
「俺らもそろそろ帰るか」
(川西)
「うん、…あ、でも」
「瀬見さん1人にして大丈夫かな」
(白布)
「なんで」
(川西)
「夜中に外出てまた自殺とか…」
(白布)
「一晩中見てる訳にもいかないし」
「そうならないことを願おう」
(川西)
「うん」
「でももうちょっとここにいていい?」
(白布)
「別にいいけど」
「俺は先に帰るから」
(川西)
「おけ。じゃおやすみー」
(白布)
「おやすみ」
パタリとドアが閉まる。消灯時間まであと僅か2分。
──さて、この2分間で何をしようか。
邪魔者が消えたから、俺は瀬見さんを漸く抱きしめることができた。
弱すぎず、強すぎない力で
そっと、ぎゅっと抱きしめた。
悪いが今は、時間が少ないからこれくらいのことしかできない。
でも明日から、ちゃんと瀬見さんのことを守るから。
──だから、安心して眠ってね。
────瀬見さん。
瀬見さんの部屋を出て、自分の部屋のドアを開けた。
(川西)
「おまたせー白布」
(白布)
「おまたせーじゃねぇよ。お前が消灯時間までに戻らなかったせいで寮母さんに叱られたんだけど。」
(川西)
「え、まじ?そんなに時間経ってた?」
(白布)
「うん」
(川西)
「まじかー」
「消灯時間前には戻るつもりだったんだけど」
(白布)
「なんか言うことあんだろ」
(川西)
「ごめんちゃい☆(´>ω∂`)」
(白布)
「許さん( ’-’ )╮ =͟͟͞͞(枕)」
(川西)
「痛っ、ごめんまじごめん」
「今度ジュース奢るから!」
(白布)
「許す」
長い時間瀬見さんと居れたのは嬉しいけど、時間に遅れたせいで白布の昼食とジュースを奢る羽目になった。
俺最近金欠なのに…
(川西)
「……はぁ、」
(白布)
「んだよ、ため息ついて」
(川西)
「別に何も…」
(白布)
「ふーん。……つーかお前さ、」
(川西)
「…?なに」
(白布)
「………」
「いや、やっぱ何でもねーわ」
(川西)
「は?何だよ、言えよ」
(白布)
「何でもねぇって。忘れろ」
「じゃおやすみ。」
(川西)
「ちょ、おい寝るなって!」
白布が布団に入って口を聞かなくなる。
いつまでも突っ立ってたって意味ないから、自分も布団に入って寝ることにした。
白布の言いかけた言葉が気になって、中々寝付けなかった。
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