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「あの・・いま、なんて言ったのかな?」

「聞こえなかったの?お父さんを、“殺して”ほしいっていったのよ。・・耳クソ詰まってんの?」

すげぇな。慣れた途端に”大豹変”(ダイヒョウヘン)しやがった。な?言ったろ??“関わるな”って。

「・・えーと。でも、なんでかな??そういうのって、“犯罪”だし。いくら反抗期でも、父親殺しを依頼するなんて。ちょっと、どうかと思うよ?」

それを聞くなり。少女は“バンッ”とテーブルを叩き、眉を吊り上げ、「ああ?」と、さながら不良のように怒鳴り始めた。

「違うわよ!このウスラハゲッ!!!殺すっていうのは『異能』(イノウ)を消す・・つまり、陰陽師としてのお父さんを殺してほしいってコトよッ!わかんないの??この耳クソッ!!」

「み、耳クソ??」

・・・だから、昔から言ってるだろ??優しい男は損するように、世の中できてんだよ。いまからでもさ。わからせてやればーーー

「ーーゼッタイしないからッ」

「ふうん。そうやって、“憑き物”(ツキモノ)と話すんだ?」

「・・・!?」

こいつ、なんで“解る”(ワカル)んだ??・・しかも、“憑き物”(ツキモノ)なんて。なんで、ボクも知らないようなコトを、コイツが知ってんだ??

「気づいてたよ?あたし、なかなか上手いでしょ??バカなフリするの?」

「あ、・・ちょっと、待ってーーーー」

「?」

・・何するつもりさ?

「なぁ。しばらくは“6感”全部、閉じといてくれ。後生(ゴショウ)の頼みだ」

つまり、なにも見聞きするな。そういうコト??

「ああ。“コイツ以外”の件では、そんなこと頼まないから。約束する」

・・わかった。約束だよ??

「約束だ」

「ーねえ?一体、どうしたってーーーカヒュッ」

喉元を人差し指と親指で押さえ、“気管支”が活動できるほどに、気管を締める。医者なら、死なせない程度に“わからせる”なんて、至極(シゴク)簡単なコトだ。・・12才の首なんて。本当は、僕だって締めたくない。でも、必要だからヤルしかない。野放しにしておくのは、この子にとっても危険すぎる。

「ナニシテ….」

「“憑き物”のことだ。もう。僕のことは、そう呼ぶんじゃないーー解ったか?」

「だってーーグヒュッ」

「ーーー解ったのか??」

「ーーーワ、ワガッタ..カラ….ア」

「誓え」

「ーギヒュッ」

気管から手を離した瞬間。少女が“柑橘系”ポシェットから「血判」の道具を取り出したのをみて、間違いなく、師匠の系譜(ケイフ)を汲んだ陰陽師だと確信した。師匠は“使役霊”(シキガミ)との契約時に、よく剣山に指を押し付けていたからだ。・・12才。それも、自分の愛娘(マナムスメ)に “こちら側”へ足を踏み入れさせるなんて。・・やっぱり、“あの人“はどうかしている。

「もう、いいの??」

ああ。もう『契約』しといたから、大丈夫だ。

少女が和紙に押した「血判」を閉まい、僕は、ボクを起こした。目の前でヒクヒクしている少女が、陰陽師だったことは。“憑き物”発言が出た時点から、大方予想はしていた。だから、血判と契約の効果が“絶大”だということは“少女自身が”1番よく解ったハズだ。

「ーーっていうか、さ。何かあったの??」

あ???

「ーウウ、ウエ」

ああ。いやいや、なんでもないよ。言ったろ?『契約』したって。・・コイツ、12才なのに陰陽師だったんだ。スゲぇだろ???

「ホント!?流石、師匠の愛娘(マナムスメ)ッ!!たぶん、最年少の陰陽師じゃないかな?握手してよ」

「ーヒッ」

ボクが少女にスッと手を差し出すと、少女は“柑橘系”のポシェットを引っ掴み。唖然(アゼン)とするボクを残し、脱兎の如く、カフェから姿を消してしまった。流石に、ヤリすぎたか??悪ぃ・・嫌われちまったかもなぁ。

「一体さ?あの子に、何したんだよ??」

単なる“教育的指導”だよ。無料(タダ)のな。

「・・いつかは教えてよ。いい?」

覚えてたら、な。

幽霊探偵なんてやってられるか

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