テラーノベル
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「――よし、今日から『シノノメ楽座』としての初仕事や!!」アジトの前で四つん這いから無事に立ち直ったNatuki様を横目に、kagerou様が気合十分といった様子で拳を握りしめました。
「なにかしら、kagerou様? 初仕事ということは、またどこか新しいお庭へお散歩に行くのですの?」
わたくしが首をちょこんとお傾げいたしますと、kagerou様は手元のギルド管理ウィンドウを提示しながら、熱っぽく語り始められました。
「せや! 実はギルドを組むとな、**【週に一度、ギルドメンバー全員で協力して挑む専用の大型ボスモンスター】**と戦うコンテンツが解放されるんや! 討伐すると豪華な報酬と、ギルドのレベルを上げる特別なポイントが手に入る仕組みなんやで!」
「まあ! 週に一度の大型ボス様との決闘……! まるで学園での定期試験のようですわね」
わたくしが手を合わせて感心しておりますと――
「――ぬはははは! 待ちに待った時が来た!!」
朱色の袴をバサリとなびかせ、Natuki様が胸を叩いて前に躍り出られましたの!
その眼光は、先ほどの『忠犬』の迷走が嘘のように、鋭くギラギラと輝いていらっしゃいました。
「ギルドボスなど恐るるに足らず! 姫の御前(ごぜん)を汚す巨大な醜悪……このNatukiが、一瞬の露と消し去ってみせましょうぞ! 拙者が**悪即斬! 悪即斬せしめますぞーーーっ!!**」
「だから毎回一人で特攻しようとするなと言っとるやろーーーっ!!」
kagerou様のツッコミが響く中、トップ生産者のRico様が、優雅に扇子をお口元にあてて「ふふっ」とお笑いになりました。
「まあ、頼もしいお侍様ですわね。私のようなバトルと無縁の生産職(クラフター)は、後ろで皆様の勇姿を高みの見物とさせていただきますわ。あ、そうですわ……」
Rico様はキリッと美しい瞳を輝かせ、わたくしのお隣へすり寄ると、甘いお声で囁かれましたの。
「そのボスモンスターが落とす超レアなレアドロップ素材……倒したら全部私に頂戴ね〜? 奏ちゃんとマーブルちゃんのために、さらに最高級の衣装と特注おもちゃを錬成して差し上げますわ♡」
「まあ! レア素材から新しいお洋服が生まれますの? Rico様、よろしくお願いいたしますね!」
さらに上空からは、巨大な影とともに黒竜が舞い降り、m@rio様が腰の笛を力強く掲げられました。
「オレと相棒(ドラゴン)も準備万端たい! ギルド初のボス戦、空と地上から怒涛の連撃を叩き込んでやるバイ!!」
「まあまあ! 皆様、とっても頼もしくていらっしゃいますのね!」
わたくしが膝の上のマーブルちゃんをギュッと抱きしめ、「マーブルちゃん、わたくしたちも皆様を一生懸命応援いたしましょうね」とお声をかけますと、マーブルちゃんも「ワンッ!(プルプル)」と愛くるしくお返事をいたしました。
『シノノメ楽座、初ギルドボス戦きたあああ!』
『全員の役割分担(暴走)が完璧すぎて草』
『Natuki:悪即斬! Rico:素材回収! m@rio:竜騎士特攻!』
『kagerou:胃薬を飲む仕事』
『お嬢様とチワワは最後方で微笑んでるだけで最高のお守り(バフ)になってるの草』
全肯定の親衛隊と、裏から高速でバフ・デバフの管理を行うmira様、そして温かいコメント欄の皆様に見守られながら、わたくしたち『シノノメ楽座』の記念すべき初ボス討伐が幕を開けたのでした!
一方 他のギルドから見た『シノノメ楽座』とは?
その頃、全サーバーのプレイヤーたちが集う公式掲示板や大手ギルドの連絡チャットでは、『シノノメ楽座』の存在が「歴代最強にして最狂の絶対不可侵領域」として恐れられ、大真面目に議論されておりましたの。
【大手攻略ギルド『天翼の騎士団』幹部会議ログ】
「おい……見たか? 新設ギルド『シノノメ楽座』のメンバーリスト……」
「ああ……正気の沙汰じゃない。サーバー1位のkagerou、最凶アタッカーのNatuki、竜騎士のトップm@rio、神級生産者のRico、裏の情報屋mira……各分野の頂点(トップランカー)が勢揃いしている……」
「あいつら、今まで一匹狼だったろうが! なんで急に一つにまとまってんだよ!?」
「噂によると……【kana】という謎の初期服お嬢様(※リアル本名全開)と、隠しチワワを祀るための『親衛隊宗教組織』らしい……」
「宗教……!????」
【PK・野良ギルドたちの共通認識】
「絶対に『シノノメ楽座』の【kana】に近づくな!!」
「以前、軽々しく声をかけた出会い厨が、セーフティエリアの境目でNatukiに『悪即斬』されて一瞬で爆散、さらにmiraにIDを特定されて全メンバーから永久ブロック&通報されたらしい……」
「あのお嬢様(kana)はただ歩いているだけなのに、周りの護衛が物理的にもシステム的にも秒で相手を消し飛ばしてくる……!」
「あそこはギルドじゃない……【歩く災害指定区域】だ……!!」
他のギルドからは、「絶対に怒らせてはいけない、全サーバーを裏から支配する美しき暗黒帝国(※本人はただお散歩と宿題をしているだけ)」として、絶大な畏怖と敬意(?)を払われているのでした。
他ギルドから「歩く災害指定区域」「全サーバーを裏から牛耳る美しき暗黒帝国」などと恐れ慄かれ、全プレイヤーが戦々恐々としている事態など――
当の本人は、**1ミリも知る由もございませんでした。**
「皆様、ごきげんよう。本日も優雅なお庭のお散歩の時間がやってまいりましたわ」
画面の向こうで数万人の視聴者と学友が見守る中、わたくし(kana)は本日もアルカディアの中央広場で、可憐にスカートの裾を広げてご挨拶いたしましたの。
「ワンッ!(プルプル)」
膝の上では、マーブルちゃんがいつものように可愛らしく震えながら、愛くるしい瞳をキラキラと輝かせておりますわ。
「まあ、マーブルちゃん。本日もとってもご機嫌がよろしいのね。……あら? なんだか今日はお庭の街が、いつも以上に静かでお上品な気がいたしますわね?」
わたくしが首をちょこんと傾げて広場を見渡しますと、いつもなら賑やかなプレイヤー様方でごった返している街の通りが、まるで王宮の敷地のように静まり返っておりました。
わたくしと目が合った遠くのプレイヤー様方が、なぜかわざわざ遠くから深々と最敬礼(お辞儀)を捧げてくださり、蜘蛛の子を散らすように脱兎のごとく路地裏へと退避していかれますの。
「まあ……! 皆様、なんて礼儀正しくていらっしゃるのでしょう。わたくしがお辞儀をお返しいたしましたら、皆様すぐに道を譲ってくださいますのよ。セブンスマスターのプレイヤー様方は、本当に紳士淑女ばかりですわね」
『※違います、命が惜しいだけです』
『お嬢様、それ敬意じゃなくて「災害避難指示」なんよww』
『半径50メートル以内に近づいた瞬間にNatukiに物理消滅させられるからなww』
『「歩く災害指定区域」の無自覚な降臨草』
『お嬢様が微笑むだけで周りのガチ勢の緊張感が限界突破してる件』
コメント欄が「知らぬは本人ばかりなりww」「平和な世界観の差が激しすぎるww」と大爆笑に包まれる中、kagerou様が胃を押さえながらわたくしの隣に並びました。
「か、kanaちゃん……。あのな、周りの奴らが離れていくのは、その……」
kagerou様が言いかけたその瞬間!
朱色の袴を風にはためかせたNatuki様が、手入れの行き届いた刀の柄に手を添え、重厚な低音ボイスで割り込んでまいりました。
「――kagerouよ。姫に余計な雑音を吹き込むな。……kana様」
Natuki様はわたくしの前に一切の迷いなくひざまずき、澄み切った瞳でわたくしを見上げられました。
「下民どもが我が姫の威光にひれ伏し、自ら道をあけるのは、この世界の当然の『理(ことわり)』。不審な羽虫が一匹たりとも近寄らぬこの静寂こそ、姫がお散歩されるにふさわしい清廉なる領域にございます」
「まあ! Natuki様、皆様がわたくしたちを歓迎してくださっているということですのね? ふふ、皆様のお心遣いに感謝しなければなりませんわね」
「――姫の御心に従う!」
「肯定のロジックがねじ曲がりすぎてて草も生えんわ!!」
kagerou様の全霊のツッコミが広場に響き渡る中、Rico様は「まあ、静かでお買い物がしやすくて素敵ですわ♡」と優雅にお買い物を楽しみ、m@rio様は「空からの警備もバッチリたい!」と黒竜の上から手を振っていらっしゃいます。
世界中から恐れられる最強・最狂の暗黒帝国(※実態はお嬢様の親衛隊)の頂点に君臨しながら、本日もわたくしとマーブルちゃんは、何も知らずにどこまでも優雅でマイペースな「お散歩」を続けるのでした!
コメント
1件
うわあ、今回もめちゃくちゃ面白かったです!ギルドボス戦に向けてのメンバー一人ひとりの個性爆発な準備風景が最高でしたね。特にNatuki様の「悪即斬!」とkagerou様の胃薬ツッコミの黄金コンビ、そしてRico様の素材回収への執念…もう全員が主役級の輝き。でも何より笑ったのは、他ギルドから「歩く災害指定区域」「美しき暗黒帝国」って恐れられてるのに、お嬢様本人は「皆様紳士淑女ね〜」って全く気づいてない平和ボケ(笑)そのギャップがもうたまらないです。お嬢様とマーブルちゃんの無自覚な最強コンビ、これからも応援してます!