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「いやぁ、それにしても最近の俺ら、装備もガチガチやし、レベルも上がりすぎてちょっとヌルゲー化しとるよな……」アルカディアの広場でひと息ついていた時、kagerou様が自身の装備(全身神話級の輝きを放つ鎧)をしみじみと眺めながらポツリと呟かれました。
「ほう、どういうことや、kagerou?」
となりにいたm@rio様が首をかしげると、kagerou様はニヤリと不敵に笑ってみせましたの。
「たまには初心にかえって、一番最初の装備――あの何の変哲もない『布の服と木の棒』だけでダンジョンに挑む、いわゆる**【初期装備縛りプレイ】**も渋くてありやと思うねん! ガチ勢の腕の見せ所やろ!」
「おっ、ええやん! あえて低レア装備でボスの大技を華麗に避けるロマン、男なら燃えるバッテン!」と、m@rio様も面白そうに大きく頷かれましたわ。
ですが、お二人のそのお言葉を聞き咎めたのは、もちろんあの御方でした。
**ザァァァッ……!!**
朱色の袴を翻し、Natuki様が凄まじい殺気とともに一歩前へ進み出ました!
「――ふざけるな、kagerou、m@rio!」
「な、なんだよNatuki、ロマンの話しとるだけやろ!」
「愚か者め! 我が姫・kana様をお守りする我が軍勢が、防御力ゼロの布切れ一枚などという侮辱的な軽装で身を包むだと!? 敵の刃が姫の視界に入る前に、我が刀で一刀両断の悪即斬に処すためにも、最高の防具と装備こそが絶対の正義! 初期装備縛りなど、**不要! 不要でござる!!!**」
「今日も元気にフルスロットルで不要botかましとるやないか!!」
kagerou様が頭を抱えてツッコミを入れられている、その時ですわ。
わたくし(kana)はふと思い出し、優雅に両手を合わせてお声をかけましたの。
「まあ、kagerou様。そういえば昨日おっしゃっていた、週に一度の『ギルドボスモンスター』様とやりの日ですわよね?」
「あ……っ! そういえば今日やったわ!!」
「わたくし、皆様と一緒にそのボス様とやらに挑んでみたいですわ! 本日はどうぞよろしくお願いいたしますね、皆様!」
わたくしが純粋無垢な笑顔でそう要請いたしますと、kagerou様とm@rio様は一瞬固まり……そして、滝のような冷や汗を流しながら青ざめられました。
「ちょっ、まっ……! 待ってくれkanaちゃん! 今の会話の流れで、まさかそのままボス戦に行くつもりか!?」
「ええ! だって皆様が『初期装備縛り』でカッコよくロマンを見せてくださるお約束でしたでしょう? わたくし、一番前でしっかり応援しておりますわね!」
「縛りプレイのロマンを勝手に強制参加のデスマッチにすなーーーっ!!!」
kagerou様の悲鳴がアルカディアの空に轟きましたわ!
『初期装備(布切れ)で週替わりギルドボスに挑むフラグ建築されてて草』
『kagerou自爆してて大草原不可避』
『Natuki「布切れなど不要! 悪即斬でござる!」(なお初期装備)』
『お嬢様、天然の無自覚処刑人すぎるwww』
『この後ボスの超火力範囲攻撃で全員丸焼きになる未来しか見えねぇ』
コメント欄がお腹を抱えて爆笑する中、kagerou様とm@rio様は「詰んだ……」と白目を剥き、Natuki様は「布切れだろうが何だろうが、姫の御心に従ってボスを悪即斬にするのみ!!」と刀の柄を握りしめ、Rico様は「まあ、皆様のそのお姿、後で見物させていただきますわ♡」と優雅にポップコーンを取り出していらっしゃいます。
こうして、『シノノメ楽座』の記念すべき初ギルドボス討伐は、なぜか一部メンバーが【初期装備の布切れ】という超ハードモードで挑む、前代未聞のデスマッチへと突入することになったのでした!
「まあ、皆様。とっても軽やかで涼しそうなお召し物ですこと」
ギルドボスの待つ特設エリア『巨神の祭壇』へと転送されたわたくし(kana)は、目の前の光景に思わずパチパチと手を叩いてしまいましたわ。
それもそのはず。
先ほどまで煌びやかで頑丈な神話級の兜や鎧を身にまとっていらしたkagerou様とm@rio様が、いまや初心者用の心許ない『布の服』と『木刀(と木製の笛)』一本という、誠に慎ましいお姿になられているのですから!
「涼しいとかいう次元ちゃうわkanaちゃん……! ギルドボスの【巨神ゴーレム】の攻撃が一掠りでもしたら即死(ワンパン)の地獄絵図やぞこれ……!」
kagerou様が生まれたての小鹿のように膝をガクガクと震わせ、滝のような冷や汗を流していらっしゃいます。
「おいkagerou、弱音を吐くなバイ……! 男ならロマンのために散るのも本望……って、やっぱり黒竜(相棒)の防具まで初期装備化されるのは聞いてねぇぇぇっ!!」
m@rio様も、隣で小さく縮こまっている黒竜ちゃん(※初期装備補正で子犬サイズに縮小中)を抱きしめて青ざめていらっしゃいました。
ですが、お二人の横で誰よりも凛とした佇まいを見せていたのは、やはりNatuki様でしたの。
朱色の袴ではなく、ペラペラの初期服(布きれ)を身にまとったNatuki様は、カタナの柄に手を添え、至高の眼光で前方を見据えておられました。
「ふん……布切れ一枚になろうとも、我が主に捧ぐ忠節と『悪即斬』の刃に陰りなし。――kagerou、m@rio、怯むな! 姫の御前(ごぜん)にて無様を晒すことこそ、万死に値するぞ!」
「いや、一番布切れが似合ってへんねんお前!! 威厳あふれるサムライがただの浪人みたいになっとるわ!!」
kagerou様のツッコミが響き渡る中、地響きとともに闇の霧を払って姿を現したのは、山のように巨大な岩石の巨人――【週替わりギルドボス:古代巨神ゴーレム】でしたわ!
**『ゴォォォォォォン……ッ!!』**
天地を揺るがす咆哮とともに、巨神が丸太のように太い拳を振り上げます!
「来よったでえええええ!! 全員、一撃でも喰らったら終わりや!! 回避に専念しろーーーっ!!」
kagerou様の悲鳴のような合図とともに、壮絶なデスマッチの火蓋が切られましたの!
「――ハァッ!!」
最初に動いたのはNatuki様でした!
布切れの服をなびかせ、光のごとき速度で巨神の足元へ滑り込むと、初期装備の錆びた刀で一閃!
**ズシャアァァァッ!!**
「――**悪即斬!!**」
しかし、相手は高レベルギルドボス。初期装備の刀では、巨神の岩肌にわずかな擦り傷(ダメージ『1』)をつけるのが限界でしたわ!
「ダメージ『1』!? 嘘だろおい!!? 相手のHP何百万あると思ってんだ!!」
絶叫するkagerou様に向かって、巨神の巨大な足がドスンと振り下ろされます!
「ぬおおおっ!?」と紙一重で側転して回避するkagerou様とm@rio様!
一歩間違えれば即死という極限の緊張感の中、お三人様は縦横無尽に祭壇を駆け回り、必死に技を繰り出していらっしゃいました。
『初期装備でギルドボスノーダメージ耐久戦始まって草』
『Natukiの悪即斬が「ダメージ1」なの腹痛いwwww』
『kagerouとm@rioの回避運動がもはやプロの領域ww』
『これ何時間かかるんだよwwww』
『お嬢様応援してあげて!!』
配信のコメント欄が超絶プレイと爆笑で大荒れになる中、わたくしは後方の安全な場所から、両手を胸の前でギュッと合わせましたの。
「まあ……! 皆様、とっても素早くてカッコよろしくていらっしゃいますわ! kagerou様、m@rio様、Natuki様、がんばってくださいませー!」
「ワンッ!(プルプル)」
わたくしの声援に合わせ、抱っこされたマーブルちゃんも「くぅん♪」と愛らしく可憐な鳴き声を響かせました。
すると――何ということでしょう!
わたくしが身にまとっていたRico様特注の『経験値効率爆上げエンジェルドレス』から、神々しい金色の光がババババッ!!と放たれ、戦うお三人様を包み込んだのです!
**【超稀少セット効果:パティシエお散歩バフ(※味方全員の攻撃力・移動速度・全ステータス10000%上昇)発動】**
「「「……は?????」」」
突如として身体から溢れ出す、太陽のような圧倒的なオーラ。
「な、なんやこの桁違いのバフ(強化)はぁぁぁっ!?」
驚愕するkagerou様を横目に、Natuki様のお目がギラリと怪しく光りました。
「――姫の応援(お声)こそ、我が力の源泉……!! 全身に満ちるは、姫より賜りし無敵の理(ことわり)!!」
**ドバババババババババッッ!!!!**
光の如き神速で空中へと跳躍したNatuki様が、初期装備の錆びた刀を振り下ろしました!
「――姫の御心に従い、粉砕せよ! **悪即斬!! 悪即斬でございますぞーーーっ!!**」
**ドドドォォォォォォンッ!!!!!**
一閃。
たった一撃で、山のように巨大だった巨神ゴーレムのHPゲージが瞬時にゼロとなり、大爆発を起こして光の粒子へと弾け飛んでいきましたわ!
「「「「一撃で吹き飛んだーーーーーっ!!???」」」」
静まり返る祭壇。
布切れ一枚のまま、刀をサッと鞘に納めたNatuki様が、疾風のごとき速さでわたくしの前に跪きました。
「……お怪我はございませんか、kana様。害敵、一刀両断に処いたしました」
「まあ! Natuki様、たったの一撃でお片付けなさってしまうなんて、とってもお見事ですわ! kagerou様もm@rio様も、素晴らしいお披露目でございましたね」
わたくしがパチパチと可憐に拍手を送りますと、呆然と突っ立っていたkagerou様は「初期装備縛りのロマンとは一体……」と崩れ落ち、Rico様は「まあ、私のドレスの隠し効果が役に立って良かったですわ♡」と優雅におほほホホと高笑いなさっていました。
こうして、初期装備縛りという超ハードモード(※お嬢様の応援バフで一瞬で崩壊)で挑んだ『シノノメ楽座』の初ギルドボス戦は、大勝利と爆笑のうちに幕を閉じたのでした!
コメント
1件
ああもう、第20話めっちゃ面白かった…!kagerou様たちの初期装備縛りのロマンが、まさかkanaちゃんの無自覚な一言で強制デスマッチになるとは思わなかったよw Natuki様の「悪即斬」がダメージ1で笑ったけど、最後のバフで一撃って…布切れ浪人スタイルも姫の前では無敵なんだね🥀 お三方の悲鳴みたいな叫びが耳に残ってる〜