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皆様いいねやコメント本当にありがとうございます(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
新しい話を書いてばっかだ👉🏻👈🏻
その後 も書く予定でいます ᴗ ·̫ ᴗ (多分センシティブです!!)
︰
俺の家に、勇斗が泊まる日。
「先入るねー」
そう言って、佐野勇斗は先に風呂を済ませ、寝室へ入っていった。
俺はその背中を見送りながら、少しだけそわそわしていた。
クローゼットの奥にしまってある、紙袋の中に、勇斗への香水が入っている。
今日、渡そうと思ってたのに。
風呂で湯船に浸かりながら、タイミングを考える。
自然に渡せるかな、とか。照れずに言えるかな、とか。
そして風呂を出て、髪を拭きながら寝室のドアを開けた。
「ごめん、お待たせ……?」
言葉が止まる。
目の前に立っていた勇斗は、明らかに機嫌が悪かった。
「な、なに……?」
「仁人、なんか言うことあるよね?」
低い声で、勇斗は言う。
心臓が跳ねる。
…え、俺、何かした?
「なんもないよ、?」
「とぼけなくていいから。これ、何?」
差し出された右手。
そこには、見覚えのある香水のボトル。
……やばい。バレた。
「これ、仁人の使ってるやつじゃないよね。誰の?」
空気が冷える。
違うよ、浮気じゃない。
でも、すぐに言葉が出てこない。
「これは……その……違くて……」
言えばよかった。
“勇斗へのプレゼント”って。
でも、サプライズのつもりで隠してたから、変に焦る。
「違くないでしょ。あと、仁人のとは違う髪の毛も落ちてた」
「……それは、柔太朗が前来たから……」
山中柔太朗の名前を出した瞬間、勇斗の目が細くなる。
「ふーん。俺以外も家に呼んでるんだ」
その言い方に、カチンときた。
「別に良いでしょ、そんくらい……」
「はぁ…」
空気が一気に尖る。
「俺の方がため息つきたいよ。浮気疑われてる俺の今の気持ち、分からないだろ。」
自分でも声が強いのが分かる。
「は?何その態度。……もういいわ。俺帰る。じゃーね」
「は? ちょっ…」
止める前に、勇斗は出ていった。
玄関のドアが閉まる音。
静かになる部屋。
どーぞどーぞ帰ってください。
そう思ったはずなのに、ソファに座った瞬間、急に虚しくなる。
浮気疑われるって、こんなにしんどいんだ。
信じてほしい人に、信じてもらえない感じ。
でも…俺がちゃんと説明しなかったから……?
あのときすぐ言えばよかった。
“勇斗に似合うと思って買った”って。
今更後悔していたら、スマホが震えた。
画面に出た名前は、山中柔太朗。
『ねえ仁ちゃん、なんか勇ちゃんとあったでしょ。』
なんで知ってるんだ…?
『え…なんで知ってるの?』
すぐ返信する。
数秒後。
『勇ちゃん、すっごい落ち込んでたよ。』
胸がぎゅっと締まる。
落ち込んでた?怒ってたんじゃなくて?
さらにメッセージが来る。
『俺にさ、「仁人、俺のこともう好きじゃないのかな」って言ってたよ』
……は?
息が止まる。
あいつ、そんなこと思ってたの?
強気な態度の裏で、そんな顔してたの?
急いで上着を掴む。
財布も持たずに家を出る。
勇斗の家は、歩いて十数分。
思いっきり走った。体力とか、そんなの気にしずに。
インターホンを押す指が震える。
数秒後、ドアが開く。
目が少し赤い勇斗が立っていた。
「……何」
その声は、さっきよりずっと弱い。
「さっきの香水」
息を整えて言う。
「あれ、勇斗へのプレゼント」
勇斗は固まる。
「……え?」
「今日渡そうと思ってた。だから隠してた。…本当は…サプライズのつもりだった」
沈黙。
「俺、浮気なんてしないよ。」
一歩近づく。
「勇斗しかいないから」
勇斗の目が揺れる。
「……まじで?」
「まじで」
数秒見つめ合って、勇斗がぐしゃっと顔を歪める。
「うわ…俺……最低じゃん」
「うん、ちょっと」
「ちょっとかよ、笑」
思わず笑いがこぼれる。
次の瞬間、ぎゅっと抱きしめられた。
強い。必死みたいに。
「怖かったんだよ」
勇斗の声が、胸に響く。
「取られるの、無理で…」
俺も腕を回す。
「取られないよ。俺、勇斗のだから。」
小さく言う。
しばらくそのまま動かない。
疑いも、怒りも、全部溶けていく。
「……その香水、今度ちゃんとくれる?」
「うん」
「俺だけの匂い?」
「勇斗だけ」
少しだけ笑う気配。
「仁人、ちゃんと説明して」
「勇斗も、ちゃんと聞いて」
「はい」
やっと、いつもの空気に戻る。
喧嘩しても、すれ違っても、結局、離れられない。
それが悔しいくらい、嬉しい。