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ある日、唐突に紅葉さんに呼び出された。何かあったのだろうか。急いで部屋に入るとそこには何故か鏡花ちゃんもいた。
今回のように呼び出されたのはなにも初めての事ではない。太宰さんがまだポートマフィアにいた頃にも何回かあったが、ほとんどがろくな目に遭っていない。
メイド服を着させられたり、着物を着させられたり。まるで着せ替え人形になったような気分だった。芥川君の顔が幼い顔立ちをしているからなのか、紅葉さんは私に色々な服を着させるのが好きだった。
太宰さんがいた時にも度々呼び出されることがあったが、太宰さんは、面白いから、と言ってパシャパシャ写真を撮っていた。まさか加勢されるとは思わなかった。いや、もうちょっと考えれば分かったかもしれない。あの人は面白いことが大好きだから。そういえば、あの時撮った写真は、組織を抜けるときに消してくれただろうか。もし消していなかったら力づくで奪い取ることにしよう。
身に覚えのありすぎる状況が、昔の懐かしい記憶を呼び起こす。ちなみに、紅葉さんに呼び出される時の用件は、九割が「此れを着てみてくれぬか」で、残りの一割が緊急の任務だったりする。仕事してくれ幹部。まあ、私の比にならないくらいの量をこなしているからそんなこと言えないのだけれど。
しかし、服を選ぶ紅葉さんは楽しそうで、まあ気晴らしになるなら良いか、と何だかんだ許してしまうのも事実である。
「龍之介や」
「はい」
「此れを着てみてくれんかのう?」
「……僕には、似合わないかと……」
────流石に、これはちょっと………。
紅葉さんが差し出してきたのは、フリルがいっぱい付いた、黒くて上品なワンピース。私の性別知ってるかなこの人??男ですけど??
隣から感じる視線が痛い。その期待に満ちた目をやめてくれ鏡花ちゃん。君ちょっと前まで私の事怖がってたよね???
「双子、コーデ…」
なるほど、鏡花ちゃんは「双子コーデ」という言葉につられたらしい。しかしながら双子コーデというのは断じて成人男性と十四歳の少女がやるものではない、と思う。
そもそもこの恒例になりつつあるファッションショーの何が一番嫌かと言うと、服を着た後なのである。服を着るまではまあ良い(良くはないが)。着た後に紅葉さんに褒め殺しにされるのが恥ずかしいのである。私にも羞恥心というものはあるのだ。
けど………。う、…くっ、可愛い………!!心が揺らぐ…!やめてくれ……!!
「…………着ました…」
結局押し負けてしまった。鏡花ちゃんが双子コーデと言っていたように、そのデザインはよく似ている。
紅葉さんは先程からずっとはしゃいで、写真を撮りまくっている。ぼそっと「此れは今までで一番の出来じゃ……!!」と言っていた。可愛い(末期)
鏡花ちゃんは服が気になるのか、くるくるとその場で回ってみたり、歩き回ったりとそわそわしている。マフィアに来てから大分感情豊かになったようで何よりである。
それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのである。
「中也さん」
「……あ゛ーー…(察)俺、ちーっと用事思い出しちまったから帰るわ」
「中也」
「…………はい」
なので。丁度偶々良いところに通り掛かった中也さんも巻き込んだ。いやあ、自分だけ逃げようとかそんなことは許しませんよ?
結局、不定期開催チキチキ☆ファッションショー(仮)が終わったのはその三時間後であったそうな。
めでたしめでたし!!!!