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#💛💜
愛日
1
深澤と一緒に事務所にいた宮舘は、話の内容を聞いてすぐに深澤の隣までやって来た。
ただ黙ってラウールと深澤の会話を聞いていて、通話が切れると深澤を見る。
❤️「阿部、また巻き込まれたって?」
💜「そうなんだよー。詳しくは後で聞くけど、なんかそういう運ないんだよね、阿部ちゃんって」
❤️「確かにね。巻き込まれ体質っていうか」
💜「そうそう。とりあえず、ラウに頼まれた場所まで行ってみよう。ふーちゃんに乗ってったら速いから」
❤️「だね」
ふーちゃんに大きくなってもらい、二人はふーちゃんに乗って例の倉庫に向かった。
その道中は、先ほど急ぐからと切り上げた阿部の巻き込まれ体質についての話になる。
❤️「阿部のあれって、昔からだよね」
💜「最初は小さい時だったかな。それこそ、誘拐されそうになったり、コンビニ強盗が入って来たり。あとは、特務調査局に入ってからも結構あるよね」
❤️「あったね。忘れ物をした女の子と一緒に学校に行って、殺人犯と遭遇、とか」
💜「一人で特務調査局に残ってた時に、空き巣に入られたじゃん? でさ、そん時に電脳空間に行ってた阿部ちゃんが人質になって大変で。それ以来、誰かしら阿部ちゃんの他に残るようになったわけだし」
❤️「この前、佐久間がやらかして、もう一回似たようなことになったわけだけど」
💜「ホントだよ。まあ、滅多にないそういうタイミングで捕まっちゃう阿部ちゃんはやっぱり、運がないんだろうけど」
❤️「外に出てもダメ、中にいてもダメ、だと打つ手ないからね」
💜「かと言って、ずーっと事務所に籠ってたら、阿部ちゃん熱暴走しちゃうしね。普通に過ごすしかないんだよ」
❤️「外と言えば……変な奴に絡まれることも多いかもね。あの見た目じゃ、しょうがないけど」
💜「なべが女装した阿部ちゃん見て、高校で同じクラスだったら告白してた、とか言ってたしな」
❤️「ふっかだって、阿部と付き合ったら性癖ねじ曲がりそうとか変なこと言ってたじゃん?」
💜「あれは、ほら、そんな感じってだけで……別に俺が付き合いたいとかじゃねえし」
❤️「そう思ってたらアウトだよ。違う意味で阿部のことが好きなのは知ってるけど」
💜「同期だから特別、ってところはやっぱりあるよ? なんていうか、言葉にならない絆みたいなのはあるし」
❤️「わかる気がする。俺も、一時期ちょっと不仲というか、うまく嚙み合わない時期とかあったし」
💜「だてあべ氷河期ね」
❤️「あれは焦ってた俺が圧倒的に悪かったんだけどさ。今思うと、快く送り出してあげたらいいのにって、ね。でもその後、阿部とちゃんと話す機会をみんなが設けてくれて、ちゃんと向き合えて、今の関係になれたわけだけど」
💜「雪解けの時はエモかったねー。そっから舘さん、阿部ちゃんに甘々になったよね」
❤️「……阿部が頑張ってるのも一生懸命なのも知ってるから。なんか、いろいろひっくるめて、愛おしいってなっちゃったの」
💜「わかるわー」
そんな和やかな話をしていると倉庫に付き、下ろしてもらった深澤と宮舘は倉庫の扉を開いて中に入った。
ガランとした倉庫内は、一台のマイクロバスがあるだけだった。
先頭の扉を開けて中を見て、運転席にいる人に警戒するけれど、結束バンドで両手をハンドルに固定され、口にガムテープを貼られているので慌てて近づくと深澤がガムテープを外して、鋼でニッパーを作って結束バンドを切る。
💜「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。あの、子ども達は?」
💜「今、追いかけてます」
その人に話を聞いてみると、どうやら依頼を受けていたドライバー本人だということで、バスで待っていたら子ども達が乗り込んで来たので様子を見守っていたらしい。そうしたら、ライオンの被り物をした人物が銃を取り出し、そのすぐ後に阿部が乗ってきた。
一度は阿部がライオンを床に倒したけれど、入って来たパンダの被り物をした人物に銃を向けられていて、脅されるままにバスを走らせていた、と。
💜「犯人たちとか、子ども達が誘拐される心当たりは?」
「あー……あの子たち、弟子屈小(てしかがしょう)って言ってたから、あの事件のことじゃ……」
💜「あの事件?」
「知りませんか? その小学校の女の子が一人、事故で亡くなってるんですよ。それに、犯人もキャンプ場がどうとか、仇だとかって言ってましたし」
💜「そうですか。ありがとうございます。今、警察を呼んでますので、あなたはここで警察を待っていてください」
バスの中を探りながら歩いていた宮舘が戻って来て、首を横に振っていたのでこれ以上の収穫はなさそうだと、二人はバスを降りた。
そのタイミングで、目黒のスマホから着信があった。
💜「もしもし、ラウ?」
🤍『阿部ちゃんの位置情報が消えちゃって! 電池切れか電源を切られたんだと思う。そっちで何かわかった?』
💜「バスに運転手が乗ってて、詳しくはわからないけど、誘拐された子たちの学校で女の子が一人亡くなってるらしい。で、犯人たちが、キャンプ場のこととか仇とか話してたみたい」
🤍『キャンプ場……あ! 阿部ちゃんのスマホの位置情報が消えた近くにキャンプ場ある! そこに行ってみるね!』
💜「子ども達がもし、その亡くなった子の死にかかわってるなら、命が危ないかも。ラウ、めめ、急いで! 俺たちもそっちに向かう!」
通話を切って宮舘を振り返ると、自分のスマホで検索をしているらしい。
❤️「あったよ。弟子屈小、女子児童(8)が夏のお楽しみ会で訪れた養老ヴィレッジキャンプ場のホール内用具室で、意識不明の状態で発見され、病院に搬送されたが1時間後に死亡が確認された。一緒に参加していた同じクラスの16名の誰も、女子児童が何故用具室にいたのかはわからないと語っている……これ、一年前の記事だね」
💜「なるほど。その子の関係者が犯人で、その時に何があったのか確かめたいってことか……ん? じゃあ、何で無関係の阿部ちゃんは連れ回されてんの? 運転手はここに置いてかれてんのに」
❤️「確かに。一緒に置いていかれてもおかしくないのに、阿部は目的の場所に連れて行かれた」
💜「別の目的がある? それとも、真相をあぶり出すのに必要、とか?」
❤️「今回の件は、さすがに阿部が無関係なのは確定でしょ。何かをさせるつもり……?」
💜「とにかく、行こう。俺たちにできること、あるかもしれない」
あれから、ずいぶんと車に揺られている。停車する時間がどんどん長くなっていて、もしかしたら街から離れているのかもしれない。郊外の方が信号は少ないから。それに、綺麗に舗装された道から、少し凸凹とした道に変わってきている。
右に左に振られるし、何より、気圧が変わっているのが耳でわかる。
これは、山に入ったのかもしれない。
途中、スマホに着信があったせいで電源を切られてしまった。位置情報が切れてしまったけれど、山に向かっているのはきっとわかっている筈。
あまり急斜面ではないのか、車の傾きは感じ取れなかった。
後ろの方から、子ども達のひそひそ声が聞こえてくる。
「ここってさ、夏に来たとこだよね?」
「あのキャンプ場の……」
「なんで? なんでここなの?」
「美羽ちゃんの、こと……?」
震えるような怖がっているような声は、今の状況からだけだろうか。
その声に、運転しているライオンは気付いていないとは思う。話しているのがバレていたら、静かにしろ!と怒鳴られているだろうから。
そこから更に20分ほど走った頃、車が減速し、停まった。
運転席からライオンが降り、阿部の左側に位置するドアが開け放たれた。
「おら。ガキ共、降りろ!」
子ども達から悲鳴が上がっている。多分、銃を向けられているんだと思う。次々に降りていく子ども達。
それから、手すりに括り付けられている結束バンドが切られて、手首を拘束している結束バンドを引っ張られて車から降ろされた。
そこから歩かされる。土を踏んでいる感触があり、多分舗装されている道。先ほど、子どもの一人がキャンプ場と言っていたから、そこに向かっているのだろう。周りの景色が何も見えないから、音だけで推測するしかない。
「やっぱりそうだよ」
「どうしよう……」
不安が広がっているのがわかる。
阿部に聞こえているという事は、前を歩いているライオンにも聴こえているだろう。引っ張られている結束バンドが更にキツくしまった。
歩いて行くと、ドアが開く音が聞こえて、それまでと足の感触が変わった。どこかの建物の中に入ったのだろう。少し、足音が反響している。
「ガキ共、そこ座れ。お前はこっちだ」
後方にいた子ども達が座らされていて、阿部は更に前へと向かわされた。肩を下に押されて座ったのは木の椅子で、手首の結束バンドが外されたかと思うと椅子の後ろに両手を回されて別の結束バンドで親指同士を縛られる。
不意に、目隠しが乱暴に外された。急に明るくなったから目を眇め、それから前を見てみると年配の男性が立っていた。
「あなたは警察?」
💚「僕は……偶然、通りかかっただけです。落とし物を届けようとしただけで……」
「ああ、それは災難でしたね。ここまで付き合ってもらったのは、証人になってもらいたかったんですよ」
💚「証人?」
「……そう。この中に、娘の美羽を見殺しにした人間がいる。そいつの言葉を聞き届ける人間が必要でね」
男の視線の先にいる子ども達は円形に座らされ、後ろ手にロープで繋ぐように縛られている。その子ども達に銃を向けている二人の若い男性。黒髪でクールな印象の方が、恐らくパンダ。金髪でやんちゃな印象の方がライオンだろう。
阿部から離れると、男は子ども達を見回した。
「さて。この場所は当然、憶えているね? 美羽が発見されたのが、あの用具室だ。何故、美羽はあの場所にいたか、説明できる子は?」
訊ねられても黙りこくっている子ども達。パアンッと乾いた音が響き渡る。パンダが銃を撃ち、それが男子生徒の足の近くに当たったのだ。
「おじさん達はね、もう待てないんだよ。一年間、君たちが何も話してくれなかったからね。美羽は何故、ここで死ななければならなかった? 何故、誰も朝まで美羽がいないことに気付かなかった?」
「……」
「……では、質問を変えよう。あの日、美羽と同じコテージに泊まった子は?」
訊ねられ、手を上げることができないから黙っていると、ダンッと強く男が床を踏みつける。
「あ、雨音ちゃんと莉玖ちゃんとさくらちゃんとゆず季ちゃんが一緒だった! わ、私は知らないっ!」
名前を呼ばれたであろう四人の女の子達は俯いたり目線をキョロキョロさせたりと動揺を隠せずにいる。
「では、その四人の子たちに訊く。何故、美羽がいない事に気付かなかった」
「……」
「あの日、みんな寝ていたから知らないと言っていたが、そうではないだろう?」
「……」
「おい、答えろ!」
ライオンが怒鳴りつける。
「し、知らないっ! ホントに知らないっ!」
「……ウソつけよ。さくら、美羽のこと出しゃばりとかいい子すぎてムカつくとか、いっつも陰で言ってたじゃん」
「っ」
「それ、俺も聞いた」
「仲良くしてるフリして酷いなって思ってた」
「ゆず季だって、大夢と美羽が仲良くしてんの嫌がってただろ。自分が一番仲良いってみんなに言ってたし」
「そ、それは……でも浩太だって、美羽のこと好きだったのに相手にされなくて苛立ってたじゃん!」
「はあ!? 誰があんなヤツッ」
「そうだ。浩太、あの日も美羽のコテージに近づいてたよ。オレ、見たもん」
「ち、近づいて何が悪いんだよ! ちょっとウロウロしただけだし!」
「その後、美羽と一緒にいるのだって見てたよ」
「谷村だって美羽の消しゴム盗んだりしてたし、いっつも美羽のこと見てて、ちょーキモかったよね」
「うるさいから見てただけで、消しゴムだって、あとで返すつもりだったんだよ」
一人が話し始めると、自分は悪くない、あいつが悪いと擦り付け合うように次々に話し始める子ども達。
不安と緊張と、自己保身と、それらがないまぜになっている。
問題は、この後。今の会話だけで誰が目的の子なのかはわからない筈。そうなると、次に起こす行動は一つだけだ。
阿部は辺りを目だけで見まわす。途中で通信が途切れたけれど、ラウールと目黒のことだから来ているかもしれない、と。
💚(……いた)
視線を送ると、小さな窓から覗き込んでいる二人が頷いてくれた。
「ここまで言っても誰も自分が、とは言わないんだね。残念だよ。これ以上はもういい。全員、ここで美羽と同じ思いを味わってもらおうか」
男が指をパチンと鳴らすと、ホール内のあちこちから、シューっと何かが噴き出ている音が聞こえてきた。これは、ガスだ。
これが毒ガスのようなものだったら、ここにいる全員が死に至る。
今しかない。
阿部の目が碧色に光ると、室内の電気が一斉に消えて暗くなる。パニックになる子ども達。犯人の三人も動揺しているのがわかる。
そこへ、ヒューっという音と同時に風が吹いたのがわかった。
一筋の光が天井へと向かっていき、爆音と共に花火が煌めく。途端に、先ほどまでのパニックがウソのように子ども達がキラキラとした目で花火を見やる。
その花火は一発ではなく、何発も天井付近で弾けていて、小さな花火大会状態だ。
「うわっ! なんだこれ!」
ライオンの慌てたような声。
もう二人の呻き声も聞こえる。花火の明かりで見えた犯人たちが蔓に巻き付かれているのがわかり、阿部はホッと胸を撫でおろして室内の電気を点けた。
ガスは止まり、念のために全ての窓が開け放たれているから、もう子ども達に危険はない筈だ。阿部の両隣に立っているのは、目黒とラウール。
🖤「阿部ちゃん、お待たせ」
🤍「ギリギリ間に合ったね!」
💚「めめとラウが見えたから、安心したよ」
阿部から結束バンドで拘束されているという話を聞いていたラウールは、あらかじめ用意していたペンチで親指の結束バンドを切った。
💚「ありがと」
その後、到着した警察官によって犯人たちは連行されていき、子ども達も無事に解放された。阿部、ラウール、目黒も事情聴取を受け、その間に深澤と宮舘も合流してホールの外に出る。
🤍「阿部ちゃ~ん!」
ぎゅーっと抱き着いてくるラウール。
🤍「もー、ビックリしたんだからね!」
💚「ごめんて。俺もあんなことになるとは思わなかったよ」
💜「阿部ちゃん、巻き込まれ体質なんだから気を付けてよ」
💚「巻き込まれ体質って何!?」
❤️「結構いろんなことに巻き込まれるよねって話」
💚「そうかなぁ?」
💜「え、あんだけ巻き込まれててその反応?」
🤍「だから巻き込まれちゃうんだよ?」
🖤「大丈夫。ちゃんと守るし助けるから」
💜「めめ? その甘さはダメよ?」
🤍「阿部ちゃんが誘拐されたって知ってからずーっと余裕なかったのに」
❤️「まあ、そうだろうね」
💚「それは……ごめんね?」
手を合わせて首を傾げながら上目で見てくる阿部に、目黒がいつものごとく膝から崩れ落ちていた。
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