「皆、おは…っていない」
階段を降りて皆に挨拶をしようとしたけど、皆の姿は見当たらない。
テーブルに置いてある紙を見る。
『おどろくさんとうたいさんへ、
俺たちはちょっと大拠点に行ってくるので帰るのが遅くなります。
冷蔵庫にご飯があるから温めて食べてね。』
「…最近凸さんたち出かけること多いなあ。」
私はこの世界のことあまり知らないから、凸さんたちの力になれないこともある。だから大体留守番が多い。
うーん…暇だなあ
………書庫行こうかな、この前行ったときは読めない本があったけど、探せば読める本もあるかもしれない。
私は書庫に入る。
えっと、読めそうな本…これとか?
私は比較的新しそうな本を手に取る。
表紙は…何も書いてない、手書きみたい。
本を開く。
4月8日 今日から日記を書こうと思う。この世界から猛吹雪が無くなって、不便がなく過ごせるような世界になるようにするための日記。
4月9日 街とは言っても何かいいことがあるわけじゃないんだよね。僕には家族もいないし、街の人からは食料も貰えない。皆も生活が苦しいんだろうな。早くなんとかしたいな。
4月10日 昔の本とか読んでみたけど、世界が暖かくなる方法は書いてなかった。でも諦めないもんね。
4月11日 雪は好きだけど、生活する上で不便だから、程々がいいなあ。
4月12日 街の人たちは僕のしてることは無駄だって言ってるけど、絶対やり遂げてみせる。でも一人だと力不足かな、仲間が欲しい。
4月13日 今日仲間ができた。幼馴染のしぇいどさんと凸さん。しぇいどさんは話したら快く仲間になってくれて、凸さんは乗り気じゃなかったけど、お人好しだから渋々仲間になってくれた。
4月14日 しぇいどさんは植物とか生やせるけど、こんな世界だから暖かい部屋で花を少し生やす程度なんだって。どうしたものか…
4月15日 体そんなに強くないの忘れてた。ここ最近沢山歩き回ってたから疲れが溜まってたみたいで熱が出た。凸さんはなんだかんだ優しいから看病してくれた。日記はちょっと休もうと思う。
4月20日 やっと熱が下がった。今日からまた頑張ろう。
4月21日 久しぶりに外に出て、街の人の話を聞いたら最近街の近くで魔獣がうろついてるらしい。子ども達が怖がってたし、僕が守らないと。
…あれ、ここから空白が続いてる。
ページをめくってると、最後のページに続きが書いてあった。
街は無くなった、僕は守れなかった。無力だ。
皆居なくなって、僕はこれからどうしたらいいんだろう。
寒い。ボロボロの家でこれを書いてるけど、寒さで手が震えてまともに文字が書けない。
結局この世界が暖かくなることなんてなかったのかな。
「……………」
私は日記を本棚に戻す。
書庫から出ると、テーブルに座ってるうたいさんと目があった。
「…座る?」
「え、あ…うん」
うたいさんにそう言われて、私はうたいさんと向かい合うように座る。
………な、何を話したら…
「…おどろくさん書庫で何してたの?」
うたいさんの言葉にどきっとする。
「え、えっと…本読んでた。」
「…でも読める本少なかったよね?」
「う、うん…」
そう話したあと、また気まずい空気が流れる。
………うたいさんと話す機会あまり無いし…いつも部屋に籠もってるし…あ
「うたいさんって…いつも部屋で何調べてるの?」
私がそう言うとうたいさんは目線を逸らす。
「………おどろくさんは、この世界をどう思った?」
「どうって…寒いなあって思ったよ?」
「…うん、じゃあこの寒い世界をどうにかしたいって思ったことはある?」
「え?うーん…私は記憶が無くて、この世界のこともあまり知れてないから…よくわかんない」
「………僕はどうにかしたいよ。」
「………」
「寒いせいで、生活が苦しいところは沢山ある…特に街とかは、拠点みたいに猛吹雪の中歩ける人がいない。だから食料がまともに手に入らない。しかも魔獣を対処できる人もいない…」
うたいさんの話に、私は何も言えなかった。
「だから僕はどうにかしたい、この世界から猛吹雪が無くなって、不便なく過ごせる暖かい世界にしたい。」
私は日記の内容を思い出していた。
暖かい世界…
寒い世界しか知らない私には、想像が出来なかった。
「パソコンで色々調べたけど…この世界をどうにかする方法は見つからなかった。凸さんはそんなこと調べても無駄だって言ってるけど、僕は絶対諦めない…」
「………うたいさんなら、できると思う。」
私がそう言うと、うたいさんは驚いた顔をしてた。
「理由とか、根拠があるってわけじゃないけど…なんとなくうたいさんならできる気がする。」
「………ほんとに?ああは言ったけど、方法なんて一つも見つかってない。」
「…なら私がうたいさんのことを手伝う!」
「…え」
「私もこの世界が暖かくなるなるように手伝うよ!」
私はうたいさんの目を真っ直ぐ見る。
「………約束だからね?」
「うん!約束!」
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