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ドアが閉まると、外からはゾンビたちが何度もガラスを叩く音が鳴り響き、室内に緊張が走った。
金髪でチャラい雰囲気の男・木村流星が怒鳴った。
「なんなんだよ!お前らのせいだぞ!ゾンビが集まってきたじゃねえか!」
珠莉と璃都は小さくなってうつむき、
「…ごめんなさい…」
その隣で、ふんわりした金髪に巻き髪の女性――吉原梨乃が彼に強い口調で言う。
「やめなさいよ流星。あんたが逆の立場だったらそうするでしょう?」
流星は何も言い返せずに顔をそむける。
吉原梨乃は珠莉と璃都に優しく微笑みかける。
「…大丈夫よ、なんとかなるって。心配しないで」
珠莉はこらえていた涙が滲みそうになりながら、
「…ありがとうございます…」
梨乃はそっと自己紹介をした。
「私は吉原梨乃。チャラチャラしてるのは彼氏の木村流星よ。あんたたちは?」
珠莉は戸惑いながらも、
「…私、雨宮珠莉…こっちは弟の璃都…」
「ふーん、可愛い名前ね」梨乃が笑顔を見せる。
保護してくれた年配の男性が、穏やかな声をかけた。
「じゅりちゃんと、りとくん…二人だけなのかい?」
彼の名は村田剛。
珠莉はうなずく。
「二人…だけ…です」
剛はにこやかにうなずき、
「そうかい。じゅりちゃん、ワシの孫と同い年じゃよ」
剛は振り返って大きな声で呼ぶ。
「哲也、亜希さん、羽流。こっちにおいで。じゅりちゃんとりとくん、羽流と同い年だよ」
やってきたのは、息子の村田哲也と、その妻である亜希、息子の羽流だ。
亜希がそっと声をかける。
「じゅりちゃん、りとくん。大丈夫?」
だが羽流は顔をしかめ、ぶっきらぼうに言う。
「ふん、二人じゃ無理だろ。お母ちゃん、こんなのほっとこうぜ」
哲也は羽流をたしなめる。
「羽流、そんなこと言うな。同い年なんだから仲良くしろ」
「知らねーよ」羽流はそっぽを向く。
亜希は困ったように微笑み
「ごめんなさいね、羽流はちょっと反抗期で…」
「反抗期じゃねーし!こいつらのせいでゾンビが来たんだろ!」
羽流の声が強い。
「よせ、羽流。」剛がやさしく制した。
そこに、黒髪をお団子にまとめた女性が寄ってきた。
「じゅりちゃん、りとくんね。私は看護師をしてる松坂梨華。…じゅりちゃん、手をケガしてるね?服にも血が…」
「…」珠莉は黙ったままうつむく。
「弟をしっかり守ったんだね、じゅりちゃん。ほんとすごいよ」
その言葉に珠莉のこらえていた感情が溢れ、わっと泣き出してしまった。
松坂梨華はそっと手をとり、やさしく消毒をしてくれる。
梨華の後ろには、看護師仲間で友達の宮野百と町田果穂が心配そうに見守っている。
「よかった、無事で…」百がそっと手を握り、果穂も「もう大丈夫だよ」と微笑みかける。