テラーノベル
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『 もう君は居ないのに . 』
物音がひとつ廊下に響いた。
その瞬間反射的に玄関を見てしまった自分が少し嫌になる。
君はもう帰ってくるはずがないのに。
部屋はきちんと片付いている。
洗濯物も取り込まれていて、リビングのリモコンはいつもの場所にしっかりと戻されている。
「 なんやねん , 全部ちゃんとやってるやん . 笑」
誰に向かって言ったかなんて自分でもわからない。
冷蔵庫を開けても君の好きだった甘酒はもう入っていない。
棚に綺麗に置かれていた俺とお揃いのキーホルダーも今となっては1つしかない。
ひとつひとつ彼女のものはなくなっているはずなのに。
「 まだおるよな , お前 」
ぽつりとつぶやいた言葉が静かな部屋にやけに重く響いた。
あの夜の喧嘩は些細なことだった。
君が俺のスマホを覗いた。
決してやましいものを見ている訳ではなかったが俺は怒った。
「なんで勝手にみたん??最低やな」って、声を荒げた
すると君はは泣いてしまった。
だけど俺は謝らなかった。
「じゃあ終わりにしよっか . 」
そう君が口を開いた途端頭が真っ白になった。
そこで俺が言えば良かった。
「待って」「俺が悪かった」って。
頭ではそう分かっていたはずなのに俺の口は開かなかった。
そしたら彼女は黙って荷物をまとめて出ていった。
引き止める事が出来なかった俺が情けなくて。醜くて。
ソファに座り何も映っていないテレビ画面をぼんやり見つめる。
引き止められなかった俺が何も写っていない真っ黒なテレビ画面に鏡のように映って気持ち悪くなってくる。
スマホを手に取りトーク履歴を開く。
一番上に彼女の名前はまだある。
「 未読 … か 」
最後に送ったメッセージは三日前のまま。
「 話せるときがあったら教えて 」
それが最後だった。
あの時俺がちゃんと引き止める事ができていたら。
もっと素直に愛してるって言えてたら。
こんな未来にはならなかったのかもしれない。
まだ君が心のどこかに染み付いてる。
笑った顔も。
怒った声も。
あの背中も。
最後に見せた泣きそうな横顔も。
すべてが染み付いて離れない。
そして俺は、今日もまたひとりで思う。
「 もう戻ってこなくていい 」
なんて全部ウソだよって伝えたいって。
1ヶ月くらい掛けたやつなのではーととコメントたくさんください😿❕
主人公は自分でも誰か分かりません😐😐
コメント
4件
わゎ表現の仕方めっちゃ刺さる💘内容も好きすぎるし…天才…??
なんかもう儚すぎるかも😿💧心情とかの表し方がとてつもなく好きすぎる😽🫶🏻︎💘