この日、部屋の灯りは点いているのに、いつもならおかえりといいながら玄関までくる足音が聞こえない。
こんな日もたまにはあって、大抵は風呂に入っていたり、料理中で手が離せないといったことが多いが、そんなときは決まってどこかしらみやのいる場所から「おかえり」という言葉が聞こえてくる。
その日、みやはキッチンにいた。
手が離せない――、という訳でもなさそうだ。
キッチンのカウンターの上にはスーパーの袋に入ったままの食材が置かれ、みやはというと制服のままエプロンをして、右手には包丁を持ち、まな板に玉ねぎを乗せた状態のまま、俺には全く気づかず、定まらない焦点でぼーっとしている。
誤って落としたりしないかと不安になって堪らず声を掛ける。
「みや、包丁危ない」
「え?あ、宏忠さん!いつのまに!?おかえりなさい」
「どうした?ぼーっとして」
みやの顔が一瞬引きつって、いつもの笑顔へと変わる************
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