「(今日こそは声かけたい…!!)」
上鳴はB組との訓練終わり、ある人物にどう近づくか考えている。
雷鳴ちゃん今日は惜しかったね!!
傷痕できてない??
雷鳴という女の子は他の女子と談笑しながら更衣室へと向かっている。
「今日も声かけられずじまいか??」
瀬呂は上鳴の肩に手をおく。
「他の女子の鉄壁を中々崩せねー。」
「なんであの子にこだわるのさ。」
「似たような個性だから、なんか色々共有したくて…。」
「後半何言ってるか聞き取れないぞー。」
「さては高校デビューの1つとして彼女作って抜け駆けする気だな??」
「ちがっ!!」
峰田の横やりに反撃しようとするも、そう思っていたふしもありそれ以上言い返せない。
「ホラみろ図星だ。」
峰田は満足げに笑う。
「(まずは…芦戸とかに聞いてみるか。)」
帰りのHR後、さっそく行動に移す。
「稲妻さん??話したことないから全然分かんない。」
「さすがの芦戸も分かんないか。」
「入試の時一緒にいたけど、稲妻さん大人しい子だったよ。それが逆に印象的だった!!」
と葉隠が教えてくれてさらに続ける。
「合同訓練の時は別人みたいにイキイキしてるけど、終わった瞬間スイッチ切れたみたいに塩崎さんとかの後ろに隠れるよね。」
「そうね。男子の前だと余計にね。」
蛙吹も雷鳴のことが気になる様子。
「あんたみたいな陽キャが苦手なんじゃない??」
耳郎の一言に声にならない声をあげて頭を抱える上鳴。
「響香ちゃんはっきり言っちゃったわね。」
「ごめん上鳴。つい本音が…。」
「いや良いんだ耳郎。危うくいつものテンションで話しかけて嫌われるところだった。うん…!!」
「急に凛々しい顔になった。」
「何か掴んだようね。」
「皆サンキュな。明日から頑張ってみる!!」
「頑張って!!」
「応援してる!!」
「上鳴ちゃんならいけるわ。」
「墓穴掘るなよー。」
足早に教室を出ていく上鳴に4人はそれぞれ声をかけた。
とはいえ、B組との訓練はそうそうあるわけではなく。
「(今日も声かけれず…。)」
放課後、曇天の下1人寮へ戻ろうとしていると。
「降ってきたかー。」
それだけではない。さっきから聞こえる雷鳴が。
「雷も近づいてきたー!!」
走り始めると、前方に折り畳み傘をさした誰か。
「(あの背丈…麗日さんあたりか??)」
この道は寮へと続く道だ。思いきって声を…。
「いやー、降ってきたきたね!!オレ傘持って…!?」
息を飲む上鳴。なぜならその子は。
「稲妻さん…!?」
彼女も息を飲み、言葉を出そうと唇を震わす。
「A組の、か、上鳴君…!!」
その瞬間雷が2人に落ちた。
「え、と…。今オレら雷に打たれた??」
「みたい、だね。上鳴君、放電してるし…。」
「その放電した電気が稲妻さんに飛んで、その周りに稲妻ができてる…。」
目が合った瞬間、彼女は驚いて口元を両手で覆って後ずさった。
「か、傘どうぞ…!!」
「そしたら稲妻さんが…!!」
濡れてしまうと続けたかったが、傘を落として走り去る彼女を追うことができなかった。
「ずぶ濡れなのに、傘。」
寮に着いてすぐの上鳴に耳郎は声をかける。
「雨降ってきてすぐに、稲妻さんに会いまして。」
その言葉に飲み物を吹き出す峰田と、驚いて上鳴にかけよる瀬呂と、上鳴に相談を受けた女子達。
「どうだったんだよ!!ファーストコンタクトは!?」
「気になる気になる!!」
「早く聞きたいわ!!」
「洗いざらい話せ!!」
「落ち着けおちつけ!!えと、雨降ってきたし、雷も近いから走って帰ってたら、前に傘さしてる子がいて。麗日さんだと思って声かけたら。」
稲妻さんだったわけねと5人口を揃えて言った。
「そんで、お互いびっくりしてなに話そうか悩んでたら2人とも雷に打たれた。」
「その雷、神のお告げよ!!」
「きっかけを作ってくれたんだわ!!」
などと言いながら5人は盛り上がる。
「ていうかさ、風邪引くから着替えてきていい??」
「わりわり。じゃ、着替えた後にじっくりと。」
「お茶を飲みながら話そうじゃない??」
「オイラも交ざるぜ。」
「今日初めて話したんだから、お手柔らかに頼むぜ。あ、傘ここに広げて乾かしておいていいかな。」
遠目から八百万が良いと返事をしてくれた。
「じゃ、風邪引かないうちに。」
部屋に戻り、まだ高鳴る胸に手を当てる。止まない雨と雷。今日この天気こそは感謝しても良いと思うのであった。