次の日は晴れて蒸し暑かった。
「ちわーっす。稲妻さんいる??」
「上鳴君だったんだ、傘貸した人。雷鳴ちゃん部屋にいるんだけど、呼んでこようか??」
放課後、傘を返しにB組の寮に行くと、拳藤が応対してくれた。
「また怖がらせちゃうといけないし、拳藤さんから渡してもらうことできる…??」
「良いよ、任せて。」
「じゃあオレはこれで。」
B組寮を後にして、木漏れ日の中で空を仰ぐ。
「(明日は久しぶりの合同訓練か…。ペアになれるといいな。)」
淡い期待、もしそうなればどう話しかけるか。その考えを邪魔するように生ぬるい風が吹き付ける。
「神様頼む!!」
果たして神は微笑んでくれるのか。
「(微笑んでくれた…!!)」
見事、稲妻との対戦を勝ち取った上鳴は障子・芦戸・葉隠らと索敵中。
「稲妻さんは任せたよ。」
「上鳴は初対戦だね。」
「近接戦も手強いから油断するな。」
話してるそばから、全員の髪の毛が逆立ってくる。
「遠雷だ!!」
障子が言う“遠雷”はいつ落ちてくるか分からず、安易に周囲の物に触れてはいけない。
「どこで雷を発生させてる…!?」
その時。偶然にも稲妻が上鳴を直撃する。
「上鳴、しっかりチャージしてよ!!」
「任せろ!!」
次々と落ちる稲妻。そこへ稲妻以外のメンバーが姿を現し、上鳴から芦戸らを引き離していく。
「(そろそろぶっぱなしていいよね。)」
皆がいなくなったので、大量放電して稲妻をあぶり出すことに。
「いない…。」
と思っていたら稲妻が。
「走ってくる!?」
思わず自身も走って逃げる。
「まてまて!!逃げる必要なくね!?」
稲妻の方に向き直って、ポイントシューターを撃つ。その1発が稲妻にヒットし、放電。
「やっぱ平気だよね!!」
稲妻攻略の策が尽きた。
「(稲妻さんは何ボルトまで耐えれる!?)」
彼女を傷つけないためにはどうすればと考えていたら、視界が暗くなった。
…鳴、上鳴!!
呼ばれて目を覚ますと檻の中で。
「障子!?え、え!?」
「稲妻さん、強かっただろ。」
「あ、うん。どう攻略しようか考えてたらあっという間にやられてた。」
と意識がなくなる前に感じたみぞおちの痛みを思い出し、患部をさする。こちらが稲妻を制圧できなかったのが仇になり、B組の勝利となった。相澤先生の評価で上鳴はこっぴどく怒られた。
放課後、気分転換のつもりで飲み物片手にグラウンド近くに設置されているベンチに座り、部活動中の生徒を眺める。出てくるのはため息ばかり。そこへ。
「かっ、上鳴、君…。」
「稲妻さん。訓練の時は凄かったよ!!良かったら座る??」
スペースを開ける。稲妻は体を硬直させたが。
「お邪魔、します。」
「どうぞ。」
「あのっ、お腹、ごめんね。痛かったよね。」
「平気だよ。気にしないで。」
「一撃で倒れちゃったから、どうしよう、かと。檻に運ぶ間、気が気じゃなくて。」
「稲妻さんがオレを!?」
「授業の一環だから…!!」
「重かったっしょ!!」
「まぁ、骨がおれる、よね。体格が違う人を運ぶのは…。」
「いやぁ、恐れ入りました。遠雷以外にも技あるの??」
「ある。けど、内緒。」
「肩に掛けてるのは、補助アイテム??」
「うん、完成したから、取りに行ってたの。」
「見たい!!」
「良いよ。」
「…二股の槍??」
「うん。二股のところで雷増幅させたり、撃ったり出きるの。」
「ロンギヌスの槍みたい!!」
「知ってるの!?」
稲妻は今までうつむいていた顔を上げた。驚きつつも、キラキラとしたその表情に上鳴は嬉しくて、安堵した。
「ミーハーだから、有名どころは少しかじってる。」
「そっか。ごめん、ちょっと、取り乱した。」
「良いよ。稲妻さんの好きなものわかって嬉しい。」
その言葉に稲妻は顔を赤くして、再びうつむいた。しかし負の感情は全く感じられず、照れているようだ。
「あ、えと、これさっそく試したいから、そろそろ行くね。」
「うん。じゃあまた。」
「あ、傘、ありがとう。拳藤さんから受け取った。」
「こちらこそありがとう。」
「またね。」
稲妻が見えなくなったあと、上鳴は飲み物を飲み干して、飲み口をじっと見つめる。
「(あんな顔するんだ…。可愛かったなぁ。)」
今日あった嫌な出来事が全部吹っ飛んだ。
「っし!!帰るか!!」
背伸びと深呼吸して、寮に帰った。
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