しばらく歩いていると城の前に着いた。
「ここに私達蛇一族のリーダー“ヨルムンガンド”様がいる」
それだけ言うとエウリはなんの躊躇いもなく中に入る。しかしすまないは城に入る寸前でピタリと足を止めた。
「どうしたの?早く来なよ」
そうエウリが言って手招きするとすまないは城の中に入った。
「?」
(なんでかしら?私が来てって言えばすぐ入るのに、何を躊躇ったの?)
後ろをついて歩くすまないに疑問を抱きながらエウリは城の最上階へと足を進めた。
「これはこれはエウリ殿」
最上階へ向かう道すがら四天王のひとり、ジルに鉢合わせした。
「こんにちは、ジルさん。なんでしょう?」
「後ろに連れている方はどなたかな?」
エウリはすまないに何かされるのでは、と警戒心を一気に引き上げながら
「城壁の外に一人で居たから連れて来ました。それに何か問題が?」
と答えた。しかしそう答えながらもまだ名前すら聞いていなかった、と後悔した。実際エウリ自身も名乗っていない。
「いえいえ、それならいいのですよ」
ジルは相変わらず読めない口調でそう言い、立ち去った。
「前から苦手なのよね……あの人」
エウリは苦い顔をしてジルを見送った。
「そういえば名前、聞いてなかったわね。私はエウリ。貴方は?」
「……俺は……Mr.すまない……」
「すまない……君?」
エウリは首を傾げる。すまないは迷うエウリにキョトンとしている。
(……すまない君……自分がどう呼ばれるかに興味無いの?)
エウリは正直呆れてしまった。どれだけ自分に興味無いのか、この人。
「ま、いいけど。早く最上階へ行きましょう」
「ヨルムンガンド様」
そう言って最上階の謁見の間に入る。正直外と吹き抜けなので、入ると言う表現が合っているのか微妙だが。
「城壁の外に居た方を連れて参りました。お探しなのはこの方でしょうか?」
エウリは最敬礼の意を示して跪く。ヨルムンガンドがゆっくりと振り向く。
「ああ、間違いない。その者がヤマタノオロチが言っていた者だ」
ヨルムンガンドはすまないにゆっくりと近づく。彼我の距離が5メートルを切ってもすまないは何も反応しない。3メートルを切る。まだ反応しない。2メートルを切る。それでも反応しない。
ヒュンッ!
「っ!」
ヨルムンガンドが長剣を抜きすまないの首にひたりと当てる。後数ミリ押し込めば血が流れる。その状況に陥ってなお、すまないは何ひとつ反応を示さなかった。
「こやつは生きているのか?」
「へ?」
予想外の問いにエウリは間抜けな声を出してしまった。
「は、はい。生きているはずです。ここまで私と歩いて来ましたから」
「ふむ……」
ヨルムンガンドは剣をすまないの首筋に当てたまま考え込む。
「……面白い奴だ……」
ボソリと呟く。その時の何よりも冷酷な瞳にエウリはえもいわれぬ寒気を感じた。
コメント
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ジルとヨルムンガンドっていう奴らが出てきたね!すまない先生、もうエウリのドールになりかけてる?!「面白いやつだ」って…何させるんだよ!