呪霊降濁

黄泉が目覚め、その意識がすべての空間を支配し始めた。透と景井はその力に対峙し、黄泉の存在がもはやただの空間の一部ではなく、意識を持つ生き物となってしまったことを理解する。しかし、黄泉が持つ力は、それだけでは終わらなかった。彼女の術式には、恐るべき力が隠されていた。

黄泉の声が響く。彼女の声は、これまでの冷徹で無機的な響きとは違い、どこか切迫した感情を帯びている。それは、彼女が自らの力を試し、確信し始めた証拠だ。

黄泉の声「私が知っている人間を操ることができる。お前たちがこれまで見逃してきたもの、それが今、私の力となる。」

透「操る…？まさか、俺たちを？」

景井「俺たちを…？それだけじゃないだろう。お前が操れるのは、ただ俺たちだけじゃない。」

黄泉の声「そうだ。私はお前たちのような者だけではなく、私が知っている全ての者を操作できる。この空間で私が知った全ての魂、全ての存在…それを今、手に入れる時だ。」

黄泉の言葉が空間全体に波紋を広げ、その影響を受けた者たちの姿が浮かび上がる。透と景井が最も驚愕したのは、黄泉が彼らの過去を知り、過去の仲間たちをも操ることができるという事実だ。

透「まさか…」

その瞬間、透の目の前にかつての仲間である神風が現れる。彼はまるで幻のように立ち上がり、透の目をじっと見つめる。

神風「透…お前もわかっているだろう。黄泉に従うこと、それが最も正しい道だ。」

透「神風…お前、どうしてこんなことを…？」

神風「私は黄泉に従う。彼女が望む世界こそが、真実の世界だ。」

透の心に激しい葛藤が生まれる。神風はかつて自分の仲間だった。しかし、今その目の前に現れた神風は、黄泉の操り人形となっている。透はその事実を受け入れることができず、信じられない思いで神風を見る。

景井「…信じられない。神風まで…」

その時、また別の影が現れる。今度は白川の姿だ。彼もまた、黄泉の力によって操られている。

白川「景井…お前はどうしてこんなに抵抗するんだ？黄泉の意志に従うことが、唯一の生きる道だ。」

景井「白川、お前も…！？」

白川の言葉に、景井の中で一瞬だけ躊躇が生まれる。しかしすぐに、それが黄泉の操りであることを確信する。

景井「くそっ！お前たちはもう…死んでいるんだ！」

透「でも、あいつらはただ操られているだけだ…！黄泉が、奴らを…！」

黄泉の声「そうだ。お前たちが知っている者たちを、私はすでに手に入れた。彼らは私の手のひらの上にいる。お前たちも私に従えば、この世界は新しく生まれ変わる。」

黄泉の力がさらに強まり、彼女の支配する範囲が広がる。神風と白川だけでなく、過去に透と景井が関わった多くの人々が次々と現れ、黄泉の意志に従うようになる。その中には、かつての敵であった者たちも含まれている。

透「俺は、あんなことをさせるために、戦ってきたわけじゃない！」

景井「俺たちは…あいつらを助けるために戦ってきたんだ。こんなことをして、何が変わるってんだ！」

黄泉の声「お前たちが望む世界は、私が作り出す。お前たちも、私の下で新たな道を歩むのだ。」

黄泉の術式が、透と景井をも試すように、彼らの過去の記憶や感情を引き出し、操作しようとしてくる。透の中で、過去の自分や仲間たちが次々と現れ、心の中で葛藤が激しくなる。

透「俺が信じてきたものは…何だったんだ。」

その瞬間、透の目の前に現れるのは、かつての仲間であるアスカ。彼女もまた、黄泉に操られた一人だった。

アスカ「透、もうお前の戦いは終わったんだ。私たちと一緒に黄泉に従えば、全てが解決する。」

透「アスカ、信じられない…！」

透はその言葉を胸に、戦いの決意を固める。しかし、彼の心は揺れ動いていた。仲間たちが次々と黄泉に操られ、かつて信じた世界が崩れようとしている。

黄泉の力が最高潮に達し、透と景井は最後の選択を迫られる。黄泉が支配する世界は、もはやただのデータの集まりではなく、無限の可能性を持つ新しい「現実」へと変わろうとしている。透と景井は、この力に立ち向かうべきか、それともその世界を受け入れるべきか、選択を強いられる。

透「もう後戻りはできない。俺は、俺たちの世界を守るために戦う。」

景井「俺もだ。黄泉が望んでも、俺たちは絶対に負けない。」

黄泉の声「お前たちは、私を止められない。私は、この世界の終わりを知っている。」

黄泉の力が再び発揮され、透と景井は最後の決戦を迎える。黄泉が操る力と、彼らの意志がぶつかり合う時、世界はどう変わるのか。そして、彼らはその未来を切り開くことができるのか…