コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
男の子が母親に呼ばれて走り去ると、華は小さく息をついた。
「……はぁ、やっぱり全然ダメだったなぁ」
そのとき、視線を上げると、少し離れたカウンター越しに律が立っていた。
普段と変わらぬ無表情――のはずが、目元がわずかに和らいでいる。
「……律さん?」
思わず声をかけると、彼はすぐに表情を引き締めた。
「……持ち場に戻ってください」
短く告げられただけだったが、華の胸は高鳴っていた。
ほんの一瞬。けれど確かに、自分に向けられた笑顔を見た気がした。