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・・・
怒涛のごとくの会場の歓声も、柚彦にはてんで聞こえなかった
会場の歓声は、徐々に頭の中から遠ざかって行った
体に浮かぶ汗も、照明が発する熱も感じれなかった
裸足でボクサーショーツとオープンフィンガーグローブだけを身につけた柚彦は
リングの反対側にいる対戦相手の、フィリピンの防衛選手、マカフィーを睨みつけていた
この選手は経験豊富で、技術のある選手だ、タトゥーだらけの体を膨らませて、こっちを睨んでいる
柚彦はにやりと笑った、だが実力は自分の方が上だ
レフリーが柚彦に用意はいいかと尋ねる
柚彦はうなずいた、レフリーのルール説明の間も、二人はにらみ合い、マカフィーが柚彦にしか聞こえない声で言った
「ベイビー・・けつを掘ってやるぜ・・」
先ほどの鈴ちゃんを痛めつけた男にトドメを刺せなかった鬱積した怒りに、体を震わせる、ウォーミングアップは十分だ
格闘家の中でも、気品にかけている輩もいる、コイツはまさにそういうタイプだ
よし！コイツに憂さ晴らしの餌食になってもらおう
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