手紙を読み終わり 、ふっと息を吐いた 。
私の目の前には 、目を綴じて開けない貴方と如何にも病室のベッド 、そして沢山の機械達 。
沢山の機械は貴方に繋がれていて離すことは出来ない 。
1つの機械だけが静かな病室に音を出すのを許されているようだった 。
私は冬と共に冷たくなった手を無意識に握ってしまった 。
私の熱が伝わっているだろうか 、なんて想えば切なくて心臓が縮んでゆく感覚が離れない 。
手紙に皺が付く 。
本当は此の手紙をびりびりに破いてしまいたかった 。
でもそんな事は出来ない 。
掴めない希望で手が動かない 。
「 起きてよ 、 」
と弱々しい言葉を病室が響かせないようにしていた 。
先程のように笑いながら手紙を読んでいたかった 。
手紙を読み終わった後の病室は酷く静かで 、私の言葉を窒息させる 。
3分後 、雪が降り始めた 。
私達のように静かな雪が地上に触れる 。
下から聞こえる鈴のような笑い声と愉しそうな歌は子供達のものだろうか 。
なんて考えていれば 、今度は違う音が私の鼓膜を貫く 。
其の音は1秒後に理解出来た 。
バイタルサインモニターという機械のアラーム音だった 。
思っていたより煩わしい音では無かった 。
けれども何故か頬が濡れている 。
視界が歪んで 、天を仰ぐ 。
私の願いは届かなかったからだけでは無い 。
滴が制服のスカートを濡らさないように 。
.
.
.
其の後看護師さんを呼んだ 。
呼び出しをした時 、しゃくりあげて上手く答えられなかったことを申し訳無く思う 。
そして20分後 、綺麗な顔立ちをした女性と男性が慌てて病室に入った 。
私は其の2人を病室の前のベンチから横目で見た 。
爍琉くんに似ていたから 、両親だったと思う 。
俯いて足許を暫く見ていた 。
街はクリスマスムード真っ最中で上げられそうに無かった 。
顔を上げたのは優しい声が降ってきたからだった 。
「 私達の息子を看取ってくれて有難う 」
爍琉くんそっくりの笑顔の目はほんのり朱かった 。
私はまた上手く答えられなかった 。
言えたのは ‘ はい ’ の一言だけ 。
でも去年の御返しはしたかった 。
ペンギンのキーホルダーと‘ 此れを爍琉くんにあげて欲しいです ’の言葉が記された紙を渡して逃げるように去った 。
其の後は何をしたか憶えていない 。
家帰って 、クリスマスケーキ食べたっけ 。
全く覚えられなかった 。
でも夢を見たのは覚えていた 。
だから伝えたい事を叫んだ 。
「 大好きなの !! 」
爍琉くんは矢っ張り穏やかな笑顔で微笑んだ 。
「 灯香 、有難う 」
と口が動いたのを見落としはしなかった 。
目に確り焼き付けた 。
そして白い霧に包まれた 。
「 僕も大好きだよ 」
なんて聞こえたのは目を醒ました後だったから 、きっと幻聴だったかもしれない 。
其れでも最高の2回目のクリスマスプレゼントが贈られた 。
其れは想い込みでも私はまた光を灯された 。
私の一生分の温かい光だった 。
そして私も光る希望に成りたい 、と朝日に照らされ祈った 。
陽 爍琉 享年 15歳 命日 12月25日
コメント
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んんんみゃあああああああ てっきりハピエンだと思ってたらまさかの事態に、、!!!! えつらすぎる、、 この2人が来世でまた結ばれたりしたらいいなぁ
バイタルサインモニターって、ピーってなるあの音なのかな(? リアルすぎて辛い…🥲💧 起きてよ、って言う所悲しすぎてもう涙() 夢で逢えただけ良かったとか言ったら変だけど良かった!!(は 完結おめでとううっ、愛読しまくりました👍🏻 ((