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本当にそう感じた。



『少しは落ち着いたか?』



『はい、ありがとうございます。本当にご迷惑をおかけしました』



『気にするな。どうせ帰るところだったんだ。それより……大丈夫か? 何か心配ごとでも?』



落ち込んだ顔をしてたのがバレていた?



その通り……今日の私はブルーだった。



『心配事というか……仕事でミスをしてしまって。もちろん自分の責任なんです。叱られても仕方ありません。最近、ちょっといろいろ考え事をしたりして集中できなくて……』



『彩葉ちゃんの仕事はitidou(いちどう)化粧品の売り場担当だったな?』



『はい。丸翔(まるしょう)百貨店の売り場にいます』



itidou化粧品は高級志向の女性達に人気のブランドだ。



海外の有名セレブ達にも愛用されている。



『売り場の仕事はキツいのか?』



優しく聞いてくれる九条さん。



『いえ、仕事自体はそれほどキツいわけではありません。ただ、元々、私にはやりたい仕事があったんですけど……』



『やりたい仕事?』



『はい。でも、その仕事に就くのは諦めています。今の仕事が嫌なわけではないので……とにかく父の喜ぶ顔が見れたらそれでいいかなと思って続けています』



私の父は、itidou化粧品の社長を務めている。



CMで一流の女優さんを起用するほど有名で、日本でもトップクラスの会社だ。



他にも医薬品の開発、販売も行っていて、そんなitidou化粧品と九条さんのお父様が社長を務める九条グループはいろいろと業務提携している。



もちろん、九条グループの方が、世界にも大きく進出していて資本金から抱える従業員の数も遥かに多い。



それでも父親同士は昔から仲の良い友達で、いろいろ切磋琢磨してお互い業績を伸ばしてきた大切な仲間だった。



そんな縁があって、私は九条さんとはたまに顔を合わせる機会があった。



でもまさか、そこまで親しい訳じゃなかった九条さんに突然出会って、こんな風に部屋にまで入り込むことになるなんて思ってもみなかったけど……



仕事の悩みを聞いてもらってるうちに、私は何だか不思議と温かい安心感に包まれていった。



この空間に2人きり、私は話せば話すほど、もっと深く九条さんを知りたくなった。



知りたくて知りたくて……仕方なくなった。



だって、私は……



ずっと前から九条さんのことが好きだったから。



当然、片思いだと思ってた。



私だけの一方通行の想いだと。



なのに、今まで普通に話していたはずの私達は、ハッキリと目を目を合わせた瞬間に何かを感じ合った。



そして、それはまるで当たり前のように始まった。



熱い抱擁とキス、離れることなく絡み合うその体と体。



昔から憧れていた九条さんへの気持ちを抑えることなんてできない。



これがどういうことなのかを考える余裕もなく、私は自然に体を預けてしまった。

あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~

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