コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
その後はされるがまま、九条さんは私を優しく愛撫したかと思えば、急に激しく攻め立てた。
汗ばむ体がどうしようもなく色っぽくて、私の欲情はどんどん高まっていく。
『九条……さん』
『彩葉』
私の名前を呼び捨てで呼ぶその声が艶っぽくて、もっと、もっと、って、愛撫を欲してしまう。
この行為が果てしなくいつまでもずっと続いてほしいって、いやらしくも、そう願う自分がいた。
長い時間をかけて互いを求め抜き、奥深くまで入ってくる感覚に震えた。
九条さんに身を任せ、波のように次から次へと寄せる快感。
あまりに気持ち良すぎて、私の中には1ミリの理性も存在せず、ただその波に合わせて興奮することに夢中になった。
大人の濃密で艶めき立った時間は、私を信じられないくらい淫らな女にした。
情熱的に甘くとろけるように私を抱く九条さんを、改めて心から「好きだ」と思った。
私は……
全てを思い出したんだ。
パズルのピースが全部埋まった瞬間、九条さんは言った。
「彩葉、俺達は今日、なるべくして1つになった。俺は君とずっと一緒にいたい」
その言葉は、一瞬で私の胸を狂おしいくらいに熱くした。
私も、一緒にいたい。
九条さんと共に人生を歩みたい。
だけど、その気持ちを決して口にしてはいけないって、ちゃんとわかってる。
理性が戻ってしまった私は、自分のその想いを強く抑え込むしかなかった。
「彩葉、俺は近く仕事で海外に行く。向こうの支社でしばらく勉強するつもりなんだ。いつ帰れるかわからない。だから、俺に着いてきてくれないか? 側にいてほしい」
九条さん……
そんなこと言わないで……
「う、嬉しいです。私にそんな申し出、もったいないくらいです。でも、私達は決して結ばれてはいけないんです。九条さんだってわかってますよね? あなたは……私の妹のお見合い相手なんですから」
そう、この人は私の義理の弟になるかも知れない人。
「俺の気持ちは君にある。だから一緒に……」
九条さんは再び私を強く抱きしめた。
耳にかかる吐息と、胸に響く熱い言葉に心が大きく揺れる。
本当に私のことをそこまで想ってくれてるの?
ずっとあなたへの想いを、心の奥深くに閉じ込めてきたのに。
どうして……
もう、わからないよ。
「私、わた……し……」
「何も考えなくていいんだ。全て俺がちゃんとするから。君を悲しませたりしない。だから………」
そんなセリフ、ズルいよ。
私、何もかも捨てて九条さんを求めてしまいたくなる。
でも、やっぱりダメ。
こんなの、許されない。
「九条さん、本当にごめんなさい。家族を裏切ってしまった私が幸せになるなんて、そんなの……そんなの……」
どうしていいのかわからず、いたたまれなくなって、私は慌てて逃げるようにその部屋を出た。
外に出て、後ろを振り返る。
「追いかけて……来ないんだ……」
私、いったい何を期待してるの?
追いかけてくるわけないじゃない。
九条さんの言葉を信じていいのかもわからないんだよ。
昔から、お父様と一緒にたまにうちに来ていたとはいえ、私はそんなに話したことがない。
気づけば妹がいつも九条さんの近くにいたから。
それでもたまに話しかけてもらうと嬉しかったし、優しくて良い人だって思う。
だけど本当は……
もしかして私の体が目当てで近づいた?
ううん、九条さんはそんな人じゃない。
そうじゃないって思うけど……
ああ、何を信じて、どう行動すればいいのか全然わからない。
ただ事実なのは、妹を裏切ったということ。
私は、妹への申し訳なさを抱えながら、モヤモヤした気持ちで重い体を引きづるようにして歩いていた。
九条さんと体で愛を語り合ったあの数時間のことを思い返すと、嘘みたいに胸がキュッとなる。
こんなにも胸を焦がすような熱い想いを、私はいったいどこに隠せばいいんだろう。