初めてボクがそう言った瞬間、弟くんは目を逸らした。意外な反応にびっくりしたが、今はそれどころでは無い。
「……なんか聞こえたか?」
「えーっと、冬弥くんが弟くんにボクが好きなのか聞いたところからばっちり……」
「……」
反応を見るからにあの話の内容はドッキリでも何でもなく本当の事なのだろう。正直2人に好かれるなんて思っても見なかった。ドッキリであって欲しかったのが正直な所だが、特に嫌悪感は感じないため、この考えには蓋をした。
「冬弥くんと弟くんはボクが好き……って言うのは嘘ではないんだよね?」
「本当だ」
「……そう、だな」
冬弥くんが反応を示した。少し目を見開き、顔も少しだが赤くなっている気がする。それに対して弟くんは少し所ではなく、かなり顔が真っ赤だ。
――2人ともカワイイなぁ
「……ん?」
カワイイ……? 今の行動で可愛いところなんてあっただろうか。今まで人の照れているところなんて可愛いと思ったことはなかっただろう。なのになんで可愛いなんて思ったのだろうか。
「暁山?」
「大丈夫か?」
「……え、あぁ。大丈夫だよ」
「そうか、それは良かった」
「はぁ……まぁ、あんまり気まずい雰囲気にならなくて良かった」
そう、柔らかく笑う二人を見てどきっ。と言う感覚が胸にきた。普通に心臓が動いている感覚じゃない。いつもより早いし、うるさい。
――2人の人を好きになるなんて。よりにもよって弟くんと冬弥くんなんて……
でも流石に顔に出す訳にも行かないから、ボクはお得意のポーカーフェイスで誤魔化す。
「気まずい雰囲気になったらボクも困っちゃうなぁ」
ボクはけらけらと笑って見せた。正直好意を向けられて好意を向けている2人にどういう対応をしたらいいのかも分からないし、隠し続けるのも2人には悪いし、かと言って2人とも愛してる、なんて言ったら困らせてしまうだろう。ならば、これをなかったことに。いつも通りに。秘密にしよう。そちらの方がボクにとっては好都合だ。大事な人への秘密を増やしてしまうことになる。でも、ボクは所詮隠者。隠して仕舞うことなんて簡単だ。
「……ごめん、今日は服のアレンジする予定だったから帰るね。助けてくれてありがと〜!」
「……? そうか。じゃあな」
「……なんかあったら言えよ。じゃあな」
2人とも神妙な顔つきだった。でもボクは見て見ぬふりで、笑顔で家へ向かった。
「……ボクが、人を好きになるなんて」
「よりによって、あの2人」
「両想いで、幸せになる方法はある」
「……でも」
――ボクといれば、あの2人は幸せにはなれないんじゃないかな
学校ではボクの悪い噂が流れてる。そんな奴と一緒に居たらきっと弟くんや冬弥くんにも悪い噂が流れる。根も葉もない悪い噂が流れているチームメイトが居る。なんて杏やこはねちゃんにも迷惑がかかるだろう。定時制だから可能性は少ないけど、絵名にだって被害が及ぶ可能性はある。
噂は嵐みたいに早く、悪いところだけを抜き取って広がっていく。そんな世界でボクが弟くんや冬弥くんと一緒に居たら、きっと色んな人に被害が行く。今考えられる人だけで5人だ。考えすぎだって言われるかもしれないけれど、可能性が無い訳ではない。
「……はぁ、仕方ないと言えば仕方ないけど」
ボクは隠す。そう決めた。
――これで、良いんだよね
コメント
2件
好きすぎて禿げました()
大丈夫だよ瑞希ちゃん、これからハーレムを作れb( ∩'-' )=͟͟͞͞⊃ )´д`)ドゥクシ