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20:00 歌舞伎町
CASE 岡崎伊織
頭に装着させた盗聴器から、頭と嘉助のと会話を聞いていた。
窓を開け煙草の灰を落とし、再び口に煙草を付ける。
息を深く吸った後、ゆっくりと白い煙を吐く。
カチカチカチカチカチ…。
ハザードランプの点滅音だけが、静かな車内に響き渡る。
「嘉助の状態がまさか、亡くなったと思っていた神楽ヨウだったとはな。」
拓坊ちゃんに懐いていた神楽組の若頭。
歳が6歳も離れてるが、拓坊ちゃんは歳下扱いしなかった。
神楽ヨウにとっては、それが嬉しかったのだろう。
頭はずっと、拓坊ちゃんを殺した椿を徹底的に潰す事だけを考えて来た。
一郎達を拾って、俺に殺し屋としての教育をさせたのも。
拓坊ちゃんがして来た仕事をさせたのも、全ては椿を潰す為だった。
だが、古い団地の一室で死にそうになっていた四郎を拾ってからだ。
頭が四郎に対する気持ちに変化が出たのは。
今でも鮮明に覚えているのは、四郎が俺の銃を盗み、
1人で事務所に乗り込んだ時の事だ。
今から14年前。
白に灰色が掛かった空から、粒が大きめの雪が降りそそいだ。
ニュースによれば、今日は初雪が降る予報だったらしい。
俺は防寒着を着て、車のタイヤが滑らないようにチェーンを巻き付ける。
雪だからと言って仕事が休みなる事は、社会に出ると早々ない。
俺達、反社と言われる組織に所属してる奴等も同様。
頭や若頭の側近とあれば、連絡が来たら動けるようにしておかなければならないのだ。
俺は兵頭雪哉、頭の側近としてもう何年も側にいる。
「うぅ…、寒っ。雪なんか降んなよなぁ。何で、ガキの頃は雪ではしゃいでたんだろうなぁ?伊織。」
車のフロンドカラスにぬるめのお湯を掛けている齋藤が震えていた。
この齋藤もまた、頭の側近として側にいる。
俺と齋藤は兵頭会に入る前は、2人で殺しの仕事をして生活を送っていた。
この時の年齢は、22歳だったか。
殺しの依頼をしてくる連中は大抵、反社の人間達で一般人からの依頼なんてほぼない。
そんな状態だったからか、反社専門の殺し屋と名が付いたのだ。
俺と齋藤はいつも通り、依頼を受け兵頭会の組長を殺す事になった。
深夜過ぎ、外は雨が降っていた。
雨音に乗じて、見張の組員達を殺し本家の中に潜入。
兵頭雪哉の寝室と思われる部屋の襖を開け、部屋の中に侵入した。
敷布団が盛り上がっている部分に、齋藤は思いっきりナイフの刃を突き立てる。
ボスッ。
「「…。」」
齋藤は不思議な顔をしてナイフを抜くが、ナイフの刃には血が付着していなかった。
スッ。
背後から気配がしたので、俺はナイフを構え距離を取る。
バッ!!
視線を向けると、寝巻きを着た兵頭雪哉が怠そうに立っていたのだ。
俺と齋藤の事を見ても動じずに、黙って視線だけを落とす。
兵頭雪哉と言う男は黙っているだけでも、重圧を与える男だと思った。
どうやらそう思っていたのは俺だけじゃなく、齋藤もだった。
「お前等、ヤクザ専門の殺し屋か。まだ、ガキじゃねーか。」
その言葉を聞いた俺は、ナイフの刃を突き立てるように構える。
齋藤が兵頭雪哉に向かって、拳を振り上げた。
2人が殴り合いをしてる隙に、兵頭雪哉の背後を取りナイフ刺そうとした時。
ドスッ!!
ドカッ!!
兵頭雪哉が、俺の腹に思いっきり蹴りを入れて来やがった。
「ゔっ!?」
コイツ、齋藤の相手をしてたんじゃねーのかよっ。
蹴りを入れた後、兵頭雪哉は齋藤の髪を掴んだまま壁に強く打ち付けた。
ドカッ!!
「ガハッ!!」
ピチャッ。
齋藤の口から、血が吐き出される。
この時の俺達は、兵頭雪哉に殺されると思っていた。
ゆっくりと落ちたナイフを拾い上げると、縁側に向かって投げ飛ばされる。
「殺すなら、さっさとしろよ。俺達は任務に失敗したからな。」
「太々しいなぁ、今のガキは。」
俺の言葉を聞いた兵頭雪哉は、腰を低くくしながら話を続けた。
「お前等、腹減ってるか。」
「「は?」」
突然の言葉に、俺と齋藤の声が重なる。
何を考えてんだ、この兵頭雪哉と言う男は。
不信感を抱きながらジッと見ていると、兵頭雪哉の口元が緩んだ。
「夜中に動くとよ、腹が減るんだ。どうだ?飯、食いに行かねぇか?」
兵頭雪哉は本心を言っているようで、お腹の音が鳴る。
グゥゥゥゥ…。
俺と齋藤も兵頭雪哉の音に釣られて、腹から音が出た。
恥ずかしくなり顔が赤くなって行くのが分かる。
自分が腹を空かせていた事に、今まで気付く事はなかった。
チラッと齋藤に視線を向けると、目が合った瞬間に苦笑した。
音を聞いて笑う事なく、兵頭雪哉はスマホを淡々と操作し始める。
どこか、やっている店でも探しているのだろうか。
普通ならスマホを操作すてる間に、ナイフを取りに行ける。
ナイフを取って、再び兵頭雪哉に向かって突き刺さす事も出来た。
だけど、俺達はしなかった。
その場を動こうともしなかった。
元々、俺達には兵頭雪哉に対する殺意なんてない。
この仕事を始めたのは、知り合いの人間から紹介され
たのが始まりだ。
勿論、知り合いと言うのは反社と呼ばれる人である。
友人だった齋藤の弟の学費や生活を稼ぐ為、俺も手伝っていただけ。
チラッと、兵頭雪哉に視線を向けた。
優しい口調で話す兵頭雪哉に、俺は興味を持ち始めている。
「あ、この店なら朝の4時までやってるわ。お前等、豚骨食える?」
「食えますけど…。あの、何で…。」
兵頭雪哉の問いに答えた齋藤は、口籠もりながら尋ねた。
「何でって、何が?」
「俺達、アンタを殺そうとしたんだぜ?そんな奴を飯に誘うか?普通。」
齋藤の代わりに、疑問に思っていた事を伝える。
「お前等の事が気に入ったから。おら、奢ってやるから行くぞ。」
そう言って、兵頭雪哉は俺と齋藤の手を掴んで立ち上がらせた。
俺達は何故か本当に、豚骨ラーメンを食いに行く事に。
店に着くと、兵頭雪哉は餃子やら炒飯やらを大量に頼み出した。
どうやら、俺達に沢山食べさせたかったらしい。
「お前等、俺の組に入る気はねぇか?」
兵頭雪哉は優しい顔付きで、俺達2人を組に勧誘して来たのだ。
その日以来、俺達は兵頭会の組員になった。
兵頭雪哉…いや、頭は俺と齋藤を側近に指名し、常に行動を共にする事に。
それなら何年か過ぎ、拓坊ちゃんが若頭として就任。
頭は拓坊ちゃんとは仲が良く、2人で飲みに行ったりもしていた。
拓坊ちゃんと椿恭弥が、アルビノでもありJewelry Pupilの女性を保護してからだ。
白雪と言う女が現れてから、椿恭弥の様子がおかしくなった。
少し昔の事を思い出していると、齋藤が声を掛けてきた。
「おーい。何、どうさたの?ボーッとして。」
「いや、別に。何でもねーよ。」
「ふーん。あ、頭がそろそろ事務所から出てくるって。」
「了解。事務所に車を回そう。」
俺と齋藤は車に乗り込み、兵頭会の事務所へと向かった。
当時、兵頭会に喧嘩を売ってきていた〇〇組がいた。
頭は〇〇組の動き、出没する場所を徹底的に調べ上げていた頃。
俺を含めた兵頭会の組員は、頭からの指示を待っている時だった。
一郎から着信が入り、四郎がいなくなったと知らされたのだ。
どうやら、メンバーに何も言わずに出て行き1日帰って来ないと言う事と三郎が発狂寸前との事。
三郎が四郎を探しに行くと騒ぎ立てており、二郎が何とかして宥めていると付け加えられた。
俺はすぐに頭に連絡し、四郎を捜索する事に。
ただ逃げ出しただけなら、俺と頭も探す必要はないと感じていたが。
四郎は頭にかなり懐いていたし、頭の為に何でも出来る。
言い方は悪いが、四郎は良い材料だった。
他のメンバーは其々に、頭の側にいる事を決めた理由があった。
四郎の場合は自身が望んで、頭の為に道具なると決め拾われたのだ。
頭も四郎を見る目が、拓坊ちゃんと重ねているのが分かる。
何故なら、四郎は幼少期の拓坊ちゃんと容姿が瓜二つだったからだ。
プルルッ、プルルッ。
車の運転中、俺のスマホに着信が入った。
ポケットからスマホを取り出し、助手席に座っている齋藤に渡す。
齋藤は着信に出るや否や、大声を出したのだ。
「おい、本当に言ってんのか!?分かった、住所を送ってくれ。あぁ、じゃあ。」
ピッと通話ボタンを切った齋藤は、後部座席に座る頭の方を振り返る。
「頭、例の〇〇組の組長、組員等が殺されました。」
「齋藤。電話の内容は、それだけじゃなさそうだな。」
「はい…。その、〇〇組の事務所に乗り込み、殺害したのが…。いなくなった四郎です。」
その言葉を聞いた頭は、ガッと運転席の座席を掴んだ。
「伊織、例のチンピラ軍団の事務所に迎え。」
「分かりました。」
アクセルを強く踏み、急いで〇〇組の事務所まで車を走らせた。
組員が言っている事は事実か?
あの四郎が〇〇組の事務所に乗り込んだって?
おいおい、まだ10歳のガキだぞ。
報告してきた組員の間違いである事を願いながら、〇〇組の事務所に到着した。
外から見ると、中がどんな現状になっているかは分からない。
だか、俺達の目に飛び込んで来たのは…。
白い雪の中に血で真っ赤に染まった四郎の姿だった。
顔には殴られた跡や切り傷などが見え、体には戦ったであろう跡がある。
「「「お疲れ様です、頭。」」」
〇〇組の事務所から出て来た組員達が、頭の姿を見て頭を下げた。
「伊織さんも齋藤さんもお疲れ様です。」
「お2人にも一応、事務所の中を見て来てもらっても…。」
組員達は顔を青くしながら、俺と齋藤を事務所の中へ案内する。
階段を登り、ドアを開けると元は白かった壁紙が血で
真っ赤になっていた。
部屋の中は銃で撃たれて死んだ組長らしき男、それから組員達の死体が転がっている。
「やっぱり、これをやったのは四郎か…。まさか、1人の子供が大人7人を殺しちまうとはなぁ…。」
「お、俺達がここに来た時にはっ、もうこの状態で…。」
齋藤に事情を報告する組員だが、吐き気を抑えきれずに外に飛び出して行く。
「順調に成長してるって事を喜ぶべき?」
「普通なら喜べねぇだろ。頭が、どう思ってるかだろ。」
「伊織、僕は複雑だよ。子供にこんな事をさせて良いのかって。」
「…。頭と四郎の様子を見てくる。」
俺は足早に階段を降り、〇〇組の事務所の外に出た。
「ボス、俺は役に立てたかな?コイツ等を殺せば、ボスは喜ぶ?」
「四郎、俺の為に殺したのか。」
頭の言葉を聞いた四郎は、静かに頷く。
「ボス?どうしたの?」
「良くやった。」
「へへっ…。」
「…。良くやったよ、四郎。」
そう言って、頭は眠い目を擦る四郎を抱き締めた。
「伊織。」
「はい。」
「四郎の手当てをしてやってくれ。それから、齋藤にはおもちゃを買いに行かせろ。」
「分かりました。四郎をお預かりしますよ。」
四郎の体に手を伸ばそうとしたが、頭は拒否した。
「俺が車まで運ぶ。綺麗なタオルを後ろから取ってきてくれ。」
「は、はい。」
頭よりも先に車に戻り、トランクを開けタオルを取り出し、座席のドアを開ける。
そして車内を温める為、エンジンを掛けた。
「四郎、ごめんな。」
頭のか細い声が聞こえ後ろを振り返ると、頭が四郎を強く抱き締めていた。
それ以来、頭は四郎と必要最低限の会話しかしなくなった。
いや、距離を置いたのは頭の方だ。
これ以上、四郎と関わると拓坊ちゃんと同じ様に接してしまうのを恐れたのだろう。
四郎が20歳を過ぎた今でも、そうだ。
20:30 歌舞伎町
神楽ヨウの提案は、頭にとって都合の良い事ばかりだ。
四郎とモモちゃんの力があれば、椿を確実に殺せる筈。
だが四郎を使うかどうか、俺の中では半々だった。
モモちゃんを使うのを渋るのは分かる。
拓坊ちゃんの娘であり、孫なのだから。
神楽ヨウは何故、四郎とモモちゃんの2人が必要なんだ?
そう考えていると、盗聴器からスマホの着信音が聞こえてきた。
「もしもし?二郎か。どうしたんだ。そうか、分かった。」
二郎から電話を受けた頭は、小さく息を吐く。
そして、頭は神楽ヨウの提案を飲んだのだ。
「分かった、お前の計画に乗ってやる。だが、モモちゃんを使うのだけはやめろ。拓也の娘までも使うのか。」
「モモちゃんのJewelry Wordsの力がなければ、椿との殺し合いには勝てません。勿論、モモちゃんを死なせるつもりはありません。こちら側にも強い味方がいます。今度、話し合いの場を設けたいのですが…。」
「ふざけんな。」
ガチャンッ!!
嘉助の声を遮るように叫んだ六郎は、近くあった家具を倒した。
「アンタが四郎とモモちゃんを使う?人の仲間を道具みたいに扱いやがって。頭、本当にこの計画に乗るの?」
「六郎、お前は黙ってろ。」
「っ…。やっぱり、頭は四郎の事を道具としてしか見てないんだ。ボス、四郎は貴方が好きだからっ、何でもやって来たの。なのにっ、四郎の意見も聞かずに決めるの。」
「四郎はお前等の中でも、殺しのセンスがある。六郎、四郎は俺のものだ。自分のものをどう使おうが、お前には関係ない筈だろ。口を出すな。」
頭が強めの口調で言葉を吐き、六郎を黙らせる。
「一郎、六郎と一緒に外に出てろ。話し合いの邪魔だ。」
「…、分かりました。ですが、ボス。俺からもこれだけは、言わせて下さい。四郎は俺達の家族です、家族を無碍に扱われるのは許せない。四郎の意見も聞いてやって下さい。六郎、行くぞ。」
「…。」
ガチャッ。
一郎と六郎がバーを出て行った後、2人は話し合いを始めた。
神楽ヨウは警察にも協力者がいるらしく、その2人に頭を逢わせたいらしい。
頭は会う事を了承し、1週間後に再びこのバーで話し合う事に決まった。
先に降りて来た一郎と六郎は、車に乗り込む事なく歌舞伎町の中に消えて行く。
数分後。
頭が降りて来たので車から降り、後部座席のドアを開けた。
「お疲れ様です、頭。」
「あぁ。」
後部座席に乗り込んだ事を確認し、ドアを閉める。
プルルッ、プルルッ。
ポケットに入っているスマホが振動し、着信が入った事が分かった。
スマホを取り出し着信相手を確認すると、齋藤からだったので通話に出る事にした。
ピッ。
「お疲れ様。今、少し良いか。」
「手短にな、頭を待たせてるからよ。どうした?」
「七海は無事とは言えないが、連れ戻せたみたいだ。俺達じゃない、誰かが七海を救出した。それから、五郎が致命傷を負って、二郎と一緒に闇医者の爺さんの所に向かってる。」
「齋藤達じゃない誰か?どう言う事だ。」
「俺も分かんねぇーよ。2人組の男が七海を手当てするって、言って車に乗って行った。まぁ、敵意を感じなかったし、身内ぽかったぞ。七海の事を任せても大丈夫な感じだったけど、問題は五郎だな。二郎が頭にも連絡してたけど、また連絡するわ。」
そう言って、齋藤は通話ボタンを切った。
急いで車に乗り込み、ギアをパーキングからドライブに変える。
「伊織、六郎達はどうした。」
「2人なら歌舞伎町の歓楽街の方に行きました。概ね、六郎が頭に合わす顔がないのでしょう。」
「そうか。少し、キツく言い過ぎたな。」
「そんな事はありませんよ。先程、齋藤から連絡が来ました。七海は無事に2人組の男が救出したそうです。恐らく、七海を探していた天音とノアと言う子達でしょう。それから、五郎の事ですが…。」
「二郎から聞いたよ。どうやら、ヨウの言っていた警察の協力者が助けたみたいだが。四郎を使う事を後押ししろと言われたらしい。五郎を助ける為に、仕方なく了承したそうだ。」
二郎と五郎の関係性を知っている為、二郎だけを攻める訳にはいかない。
「二郎の事ですか、他に考えがあったんでしょう。本人にとっては苦渋の選択でしでしょうし。」
「なぁ、伊織。」
「はい。」
「四郎を使う事、どう思う。」
頭が俺にこんな事を聞いてくるとは思わなかった。
突然の問い掛けに驚いたが、俺は率直な気持ちで答える。
「メンバーの中でも、三郎と四郎は1人で多くの任務をこなして来ました。それに、我々にとっても2人の戦力は必要です。今回、神楽ヨウが出して来た提案も悪いものではないかと。ただ、モモちゃんの名前も出るとは思いませんでした。」
「ヨウの気持ちも痛い程、分かる。拓坊に懐いてしたし、兄貴として尊敬もしていのも分かってる。四郎達を使えるように伊織や齋藤に育てさせた。長年、時間を掛けて育てて来た。椿を殺して白雪を助け出し、モモちゃんと再会させる事が目的だった。だが、何故だろうな。」
頭の言いたい事は、分かっていた。
メンバー全員の事を、本当の子供のように思っている事も。
その中でも、四郎を拓坊ちゃんと重ねて見ていた事も。
「俺は四郎を使う事を…、嫌だと思ってしまった。死なせたくないって。四郎が〇〇組の事務所に襲撃しに行った以来、まともに四郎の顔が見れなくなった。俺が、この子を化け物に育ててしまった事を実感したくなかった。拓坊と重ねて見てる自分に、気付きたくなかった。」
「頭…。」
「だけど、俺は椿を許す事は出来ない。もう、後戻り出来ない所まで来たんだ。」
「はい。三郎を説得する事が、一番の大仕事ですね。」
「俺が話をする。三郎と四郎、3人で話す機会を作るさ。ミッドナイトタワーの地下の修繕は?」
「もう少しで終わるそうです。四郎達が帰ってくる頃には、修繕は完了しています。」
俺の言葉を聞いた頭は、黙ったまま窓の外に視線を向けた。