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これはこれは、ある、夕暮れ時のことでございます。
私はとある旅人、決して仕事ではござんせん。
今日は東北の方へ行こうと思おて、汽車に乗りました。
ずいぶん汚らしい汽車でんな、所々カビが生え取りました。
けれどもそんなこと気にしません。
座席に座って、かぶっていた傘を取って、肩を緩めて、
ふと、前の座席にちょこんと座っている、まあ、二十代前半頃でしょうな、
若い女性がおりました。
髪を結んで、いかにも、可愛らしい。
私はこの汽車に乗って良かったとつい、思おてしまうほどでした。
汽車が出発し、
女性の顔が夕暮れの日の光で一層綺麗に見えました。
雪が降っとりました。
少し火照った顔、それが強調されるのです。
あたりがだんだん暗くなり、あたりは真っ白にになります。
女性は眠ってしまいました。
その顔もあんた、すごく綺麗なんですよ。
細かく、美しく、ある瞼。
ほんのり桜色の唇。
着物は藍色でした。
寝ていてもそばにあった鞄は決して離しませんでした。
一体何が入っているのやら。
私は好奇心で少し、中を覗いてみました。
するとどうでしょう。
中には小刀一本だけ。
身を守るためだと思うてサッと外へ目を移しました。
まだ雪は降って、風はさっきよりも強い。
木々は風に揺られ、雪を被り、
葉っぱを落として揺れています。
いつの間にやら寝てしまいました。
ふと目覚め、
もう終点のようです。
もう先ほどの女性はおりません。
寂しいなあ、話したかったなあ。などと思い、
外へ出ると、何やら光るものが山のふもとに見えるのです。
何か動いているように見え、
持っていた双眼鏡を除きこみました。
それは、先ほどの女性でした。
女性は力任せに自分の首に小刀を振り付けているのです。
皆さんはこの光景を、なんと嫌らしい、気持ちが悪い。
などと言うでしょう。
ですが私が見たものはどう言うわけか綺麗なのです。
白白とした風景に、真っ赤な液体が吹き出します。
雪に血がつき、あたり一面桜色、女性は悲しくも嬉しくもない顔で、スッと倒れます。
髪はほどけ、着物もほどけてきました。
それは、それは、綺麗でした。
もし私の話が嘘だと思うのなら良いのです。
これは私の幻覚だなどと罵ってください。
私は気にせず、今日も旅をするのです。
美しいものを見るために。