テラーノベル
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この世界には、男女の性の他に、第二の性が存在する。
大きく分けて3つ。
α(アルファ)、β(ベータ)、Ω(オメガ)だ。
アルファは、社会的地位も高く、身体能力もずば抜けている。リーダーシップにも優れていて、スポーツ選手のほとんどがアルファであると言っていいと思う。現に、バレーボール代表選手の全員がアルファなんやから。人口の1割を占める。
次に、人口の半数以上を占めているのがベータになる。最も一般的な性で、この第二の性の影響を受けていない。普通の生活を送ることが出来る。
そして、
最後にオメガ。これは、アルファよりも少ない。稀な存在。他の性と違うのは、男女関係なく、妊娠可能であるという事。おまけに、3ヶ月に一度、ヒート(発情期)というものがある。その時期になると強いフェロモンを放出し、優秀なアルファを誘うのだとか。
そのせいか、オメガの社会的地位は著しく低い。
今の現代でも、オメガへの圧力や偏見は根強く残っている。
そんなオメガだが、番(つがい)というものがある。アルファがオメガのうなじを噛むことで、パートーナー関係が結ばれる。これは、永続的らしい。
おまけに運命の番というものも存在すると聞くし。
それは、出会った瞬間に惹かれ合う‥運命なんだとか。
ちなみに俺は、アルファだ。甘く夢見るわけではないけど、それでも、人並みに期待を抱いている。
いつか、運命の番‥オメガに出会えるんじゃないかと。
それが、いつなのか、誰であるのか。
試合の度に、客席を眺めキョロキョロしてしまうのも、致し方ないと思う。
周りはアルファの集団なんやから。ウカウカしていたら、奪われかねない。
俺だけのオメガ。
俺だけの運命の番。
もし存在するなら、出会いたい。
もし運命があるならば‥
「‥‥‥‥んっ」
まだぼんやりとする意識の中、温もりを頬に感じた。優しく撫でられ、慈しむような指先の動きに、目を閉じながらも思わず擦り寄りたくなってしまう。
いや、無意識に擦り寄ってしまっていたのかもしれない。
不意に、唇に温かい感触。全体を包まれるように塞がれ、柔らかい肉厚のもので挟まれると、ちゅっ、ちゅっと啄まれる。その感覚に、意識がふわふわと浮上した。
なんやろ‥‥?
薄っすらと目を開くと、自分の身体に誰かが覆い被さっている事に気が付く。
誰やろう‥、まだ覚醒しきれていない脳でぼんやりと考えていると‥
「目が覚めた?まだ、寝てても良かったのに 」
そう呟く声と共にまた唇を塞がれる。俺が、起きたと思ったからなのか、唇を塞ぐそれが、今度はペロペロと感触を味わうように唇全体を舐め出した。
「はぁ、やっとキス出来た。甘いな、お前の唇」
甘い吐息が顔に掛かる。満足そうに呟きながら、またしても唇を塞がれる。それでも、まだぼんやりとした俺の脳は、意識がハッキリとしない。不思議な感覚。
ただ、少し息苦しさを感じ、逃れる為に顔を横に向けた。ほんの少しの動作なのに、それでも妙に動き辛い。おまけに、やけに視界がふらつく気がする。
変だ。
俺の身体。手に力を込めようとしても、入らない事にようやく気が付いた。
「ちょっと効きすぎたかな。俺が分かる?ねぇ、藍?」
甘さを含んだ声色が降り注ぎ、顎を掴まれる。上向きにされ、ぼんやりとした視界に1人、その人が映り込んだ。
俺の視線が絡み合うと、いつもの微笑。
「ゆ‥うき‥さ‥‥ん?」
そう。目の前に覆い被さっていたのは、祐希さんだった。その名を口にした途端に、開いた口腔内に、にゅるっと熱い舌が割り込む。
「ん!?‥‥んっ、んんっ‥‥」
予期せぬ行動に驚き、両手で、押しのけようとするが、ほとんど力が入らない。むしろ、抜け落ちていく気がする。
体格差がそこまであるわけじゃないのに。祐希さんの身体は鍛え抜かれているが、俺だって負けてないはずだ。
なのに、ビクともしない。おかしい。
どうして。何故。
そうやって抗っている間も、熱い舌が口腔内を蹂躙する。上顎も、歯列も、喉奥にまで深く侵入する舌が縦横無尽に動き回る。
ぴったりと吸い付く唇のせいで、息苦しい。何とか、舌で押し返そうとしても、その舌ごと絡め取られ強く吸われるわけだから、意味がない。
執拗に続く行為に頭も振るが、すぐに押さえつけられ、逃げ場も失う。
息も絶え絶えなのに。呼吸すら、ままならない。息苦しさに、目尻に涙が滲み出した。
それでも続けられる激しいキス。絶え間なく送り込まれる唾液が、飲み込めず口角から零れ落ちていく。
頬を伝う不快感にいよいよ涙が零れ落ちた。おまけにこんな恋人同士のような濃厚なキスを、先輩にされているのかと思うと‥羞恥心が堪らなく襲う。
しかも、同性にされているなんて。
やっと、祐希さんの口が離れてくれた時には唇も舌も、ヒリヒリする痛みを感じた。きっと、腫れてしまってる。
気持ち悪さに、口元を拭おうと力の入りにくい手を動かそうとするが、それすらも熱い手によって阻まれた。
「嫌やっ、なっ、んで‥」
「大丈夫。俺が綺麗にするから」
祐希さんの顔がまた近づく。赤い舌をチラッと妖しく見せたかと思うと、唾液の伝い落ちた顎にちゅうっと吸い付く。吸い付いては離れ、また吸い付く。それの繰り返し。
顎の辺りを吸われるその行為に、次第にまた唇を塞がれるんじゃないかという恐怖が駆け巡り、必死で顔を逸らす。あんな苦しいキスはもうしたくない。
なのに、身体はちっとも言う事を聞かない。顔を逸らしただけでは、何の抑止力にもなるはずがなかった。
「も‥やめ‥て、キスせ‥んで」
切れ切れの息を吐きながら懇願する。もう勘弁して欲しい。なんで、俺がこんな目に‥
だが、そんな俺を見つめながら祐希さんがアルカイックに笑う。
「気持ちいいのにしなくていいの?」
「は?‥気持ちいいわけな‥ひゃっ!?」
‥気持ちいいわけない。苦しいだけだ。
そう発しようとしたのに、急に下腹部を弄られ、短い悲鳴を上げてしまった。
なんの躊躇いもなく、祐希さんの大きな手が俺の中心部を握り締めている。
そして、その時になって気付いた。自分が全裸である事を。申し訳程度に、薄いタオルケットが腹部に被されていたが、それすらも祐希さんが剥ぎ取ってしまう。
ベッド上で全裸で横になっている。
その事実に、恥ずかしさがこみ上げ、身体を捻るが、中心部を握り締めている祐希さんの手の力は、ますます強くなった。痛みで顔をしかめる。
「や‥やめ‥」
「藍のここさ、勃ってるよ。気持ち良かったんだろ?」
嘘。
嘘だ。
そんなはずない。
そう、吐き出したかったのに。身体の熱はさらに高まっていく。
俺の意思を裏切るように‥
コメント
2件
もぉぉぉぉッ、おかげさまで、 今日も1日張り切って頑張れそうです!! 今日1日頑張ったら、ご褒美にまた見に来ます!!
今回もとても素晴らしかったです!すでに名作の予感がしてるので続きが楽しみです☺️