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コメント
3件
とても素敵な物語でした!!! これからも楽しみにしてます🫶💕
終わり方が満足いかなかったので、別の話をもう一本出します......
ya×et
あの夜から、少しだけ世界が変わった。
yaに助けられた私は、以前のようには接することができなくなっていた。
「おーい、et、また炎の制御ズレてるぞー! どうした、今日はやる気ないのかー?」
周りのクラスメイトの声も、どこか遠くに聞こえる。
(……何なの、あれ……)
yaが魔物を倒した瞬間の姿。
あんな顔、見たことなかった。
ずっと冷静で無表情だったあいつが、あのときだけ、すごく――
(かっこよかった……とか、思ってるわけないし!)
ごまかすように火球を飛ばすが、制御が甘く木の枝に引火してしまう。
「危ない!」
声がして、次の瞬間、月の結界がふわりと広がり、火を包んで消し去った。
「etさん、本当に今日は調子悪いね」
「うるさいっ! 助けなくてもよかったのに!」
「じゃあ、次は見捨てる?」
「それはそれでムカつく!」
火花が散る。でも、前より少し……柔らかい。
◆
その日の夜、学院の魔力中枢に異変が起きた。
結界が破られ、暴走した魔力が空を裂く。学園中が混乱に包まれる中、
中央塔の魔力炉に一人、飛び込んでいたのは――etだった。
「ここの魔力、放っておいたら爆発する……! 調整しなきゃ……!」
炎の魔法で流れを整えようとするが、相反する力が暴れ、制御ができない。
魔力の奔流に吹き飛ばされそうになる――そのとき。
「etさん!!」
yaの声が、風に乗って響く。
「無茶するな! etさん一人じゃ抑えきれない!」
「でも誰かがやらなきゃ……!」
「なら、二人でやろう」
彼の手が、そっとetの手に重なる。
熱と冷、太陽と月――対極の力が、奇跡的に調和し始めた。
「……合わせられるの? 私の魔力と、あんたの」
「etさんだから、できる。 etさんじゃなきゃ、無理なんだ」
光が溢れ、魔力が静かに収束していく。
暴風が止み、空が、ふたたび晴れ渡る。
◆
翌朝。屋上で朝陽を浴びながら、etはyaの隣に座っていた。
「ふぅ……やっと、全部終わったか」
「うん。etさんが無茶しなきゃ、もっと楽だったのに」
「はぁ? でも最後は助けてくれたじゃん。……ありがと」
「どういたしまして、太陽の魔法使いさん」
yaが、小さく笑う。その目は、今日も変わらずetを見ていた。
「……さ、さ。これで借りはナシだから! 前の件も、この件も、相殺!」
「……ううん。俺の片想いの借りは、まだ返ってない」
「っ!? な、なに、いま――っ!?」
顔を真っ赤にして詰め寄る私に、yaはあくまで冷静に、けれどどこか嬉しそうに言った。
「……なんでもない。月のひとりごと」
太陽が昇り、月が沈む――
だけど、どこかでまた出会うだろう。
その距離は、きっともう、昔ほど遠くない。