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愛の充電器がほしい

53 - 第53話 衝撃の真実を知った後の日常

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2025年02月22日

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だんだんと琉久のお世話に慣れてきた美羽。授乳するタイミングやオムツ交換する手際の良さ。

颯太と紬は、グタグタ文句を言いながら手を動かしていた美羽はどこに行ったんだろうと思いながら拍手を送った。

テキパキと動けるようになって美羽も機嫌がいい。


「行ってらっしゃい」


「ママ、今日のおやつはアイスクリームがいい。そうだな。チョコミントかな」


「え? 紬、あのスースーする味食べられるの? 歯磨き粉みたいじゃない」


「ミント入ってるからって歯磨き粉って言わないで。食べてみれば美味しいんだよ」


「そうなんだ。試してみようかな。うん、ママも同じの用意しておくから」


「うん、わかった。楽しみにしてるね」


そう言って、ランドセルを背中に紬は登校した。

玄関のドアまで見送ると、ベビーベッドでガラガラとかみかみおもちゃに夢中になる琉久を横目に洗濯物干しにベランダに出た。


颯太と紬がいない間にしなきゃいけないことを思い出し、寝室に移動した。

昨日見ていた封書をもう一度確かめようとした。


引き出しを開けると少し紙がはみ出していた。


危ない危ない。颯太に見られてしまったら驚くだろうと焦った。


三つ折りになった用紙をもう一度開いて内容を確認した。

100%の確率で颯太と琉久は親子関係ではないと記されていた。

念のため、確認をしてみたくて紬との親子関係も調べていた。


その結果を見て驚きを隠さなかった。


琉久との関係は薄々感じていたが、まさか紬と颯太の親子関係も100%否定されていた。一緒に暮らしているこの家族は血縁関係として繋がっていないことがわかる。もちろん、美羽と琉久は完全なる親子であることは間違いない。美羽は血の繋がりがなくても一緒にいて安心して落ち着いて生活できるのはとても幸せなことじゃないかと変に納得した。

この関係性については颯太と紬にはわからないよう、話さないことに決めた。

日常生活を真っ当に生きる。

美羽はそう自分自身に言い聞かせた。

今ある生活を壊したくない。

確かに育児や家事は大変だ。

仕事にも手をつけたいがフラストレーションで呼ばれることが多い。

落ち着くまでは在宅ワークは控えておこうと考えた。

それでもそんな生活を送りながらあの時みたいに不安はない。


充実した時間、充実した日々を過ごしている。


心はいつも満たされているのだ。


安定した生活を送って長い歳月が経った。


◻︎◻︎◻︎


「姉ちゃん!! ほら、朝だよ。遅刻するよ」


琉久が小学生になった。紬は中学生だった。姉よりも早く起きる弟の琉久。性格はしっかり者のようだ。紬はのんびりマイペース。母よりお母さんのような行動をする琉久だ。

颯太の様子を見て行動を真似ているようだ。


「えー……。もう少し寝てたいー。寒いもん」


「学校遅刻するって!」


肩を何度も揺さぶった。


「わかった、俺、姉ちゃんのプリン食べるから」


そう言って冷蔵庫のある台所に走る。


「なんだって?!」


紬は食べ物のことになるとムキになる。プリンは大好物のため、反応が早い。それを琉久は知っていた。


「あー、おはよう。琉久、今日も助かるわ。プリン作戦ナイスだね」


「えーーーー、プリン無いよ?」


紬は冷蔵庫を見てガッカリする。


「嘘に決まってるって。そうでも言わないと姉ちゃん、起きないだろ?」


「はあ?! 気分悪い。もう一度寝るわ」


「紬!?」


美羽はパジャマの首元を引っ張って、鬼のような顔になっていた。


「え?」


「お母さんが言いたいことわかるよね?」


「あ、はいはい。わかりました。今起きます。絶対起きます。プリンは自分で買ってきます」


「分かればいいのよ、分かれば。ほら、朝ごはん用意したから食べて」


「やったー。今日は鮭おにぎりじゃん」


紬は、おにぎりを見て喜んでいた。


「ぼく、食欲ないからコーンフレークでいい」


「胃袋小さいね、琉久は」


「いろいろあるの。小学生にも」


「はいはいはい」



食卓でわあわあ話しているとパジャマ姿の颯太が起きてきた。あくびをしながら


「おはよう〜」


「おはよう、お父さん。そういや、昨日テレビでお父さんの好きな女優さん出てたよ。なんだっけ。フワちゃん?」

「フワちゃんは女優じゃなくてタレントだろ? 別に父さんフワちゃん普通だけど」


冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注いでぐびぐび飲む。


「お父さん、今日は休みなの? 随分のんびりね」


「まーね。たまってた有給消化しようと思って今日休み取ってた」


「え、父さん平日休みって解雇されたサラリーマンみたいじゃん」


「琉久、随分いろんな言葉知ってるな。待て待て、俺は解雇されてないぞ。どこで覚えた、その言葉」


「お母さんがハマってる刑事ドラマに出てくる話だよ。クビになったサラリーマンが嘘ついて有給だって公園うろうろしてて……犯人に刺される話」


おにぎりを食べながら代わりに答える。


「どんな話だよ? 本当、口が達者になって成長してきたな。全く、赤ちゃんの時は泣くことしかできなかったのに」


「……ぼくにも赤ちゃんの時があったんだもんね」


「私、琉久のこと蹴ったよ」


「へ? 赤ちゃんなのに?」


「ヤキモチだよ」


「可愛く言ってるけどかなりひどいよ、姉ちゃん」


「まあまあまあ。琉久のプリンも買ってくるから」


「それで許してって言ってる? 許さないよ?」


「2人とも喧嘩してないでさっさと学校行きなさい!」


美羽は叫ぶが聞こえてないらしい。喧嘩がヒートアップする。

朝の忙しい時に姉弟の喧嘩も日常茶飯事だ。


楠家はごくごく普通の家族同然の関係性で過ごしていた。


この普通がいつまでも続いてくれるといいなと母である美羽は願う。


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