冷蔵庫に入っていたケーキもついでに持っていき、本日最後の夜を過ごした。
 
 「この指輪いいね、気に入ったわ」
 
 「一目見た時、仁人似合うだろうなって思って。したら、俺も欲しくなっちゃってさ自分のも買っちゃった笑」
 
 「笑嬉しいからいいよ」
 
 意外にも買ったケーキとお酒の相性が良く、ローテンポで会話しながら食べ進めていった。部屋の明かりを暖色にして落とし、隣に座って肩を付ける。そしてテレビを観ながらケーキとお酒を嗜む。すると何やら優しく微笑みながら俺の顔を見つめてきた。その視線がくすぐったくてテレビに視線を戻す。
 
 「仁人、こっち向いて」
 
 「ん…?」
 
 「あまっ」
 
 「…。」
 
 そう言われ咄嗟に勇斗の方を見ると優しくキスをされた。急な出来事に一瞬時が止まる。するともう一度キスをされた。
 
 「え…?」
 
 「ケーキ付いてた笑」
 
 「わざわざそんなことしなくても、言ってくれれば良かったのに…」
 
 「それもそうだな笑」
 
 「笑笑笑」
 
気がつくと幸せそうに指輪を見つめる仁人。買って良かったとしみじみ思った。すると何やら仁人はお酒を取り出してきて、まだ飲むのだと言う。流石にもうダメだと言い聞かせたが、滅多にされることがない仁人からの甘えた。それはなしだろ…と思いつつも結局折れてしまう。仁人は満足そうにお酒と、準備してくれていたケーキを持ってきた。このケーキが甘さ控えめで意外にもお酒に合った。
 
 「やっぱこうやって勇斗とゆっくり話してる時が1番好きだなぁ…」
 
 「珍しいこと言うね、酔ってんじゃん」
 
 「お前も酔ってるだろ笑」
 
 「笑笑笑」
 
 お互いにお酒が回り普段言えないこともお酒の力を借りて何とか言葉にできる。
 
 「俺はいつでもお前を思ってるよ」
 
 そう一言呟くと、それが恥ずかしかったのか仁人はケーキを頬張った。一度に口に入れたからか、口の端にクリームが付いているのを気付かぬままテレビを観ている。
 
 (ほんと可愛いな…笑)
 
 俺は仁人を呼び止め口に付いているクリームをキスと重ねて食べた。すると仁人が予想以上に可愛い反応をするから思わずもう一度キスをした。いつもは仁人をからかう目的でするが、これだけは行動が先に出てしまった。
 
 「わざわざそんなことしなくても、言ってくれれば良かったのに…」
 
 「それもそうだな笑」
 
 (お前が可愛すぎて行動が先に出たなんて死んでも言わない)
 お酒も飲みきり、時間も23時を指した。勇斗に指輪を貰ってからずっと考えていることがある。何をあげればいいのか、何をお返しすればいいのか。勇斗みたいにファッションセンスがある訳でもないし、料理が超絶上手いわけでもない。悩みに悩んでいると、舜太との会話を思い出した。
 
 「なぁ舜太〜?クリスマスプレゼントなにあげたらいいと思う?」
 
 「勇ちゃんにあげるものか〜…難しいね笑好き嫌い結構はっきりしてるしなぁ」
 
 「そうなんよ…ほんと難しい。あいつの喜ぶ物ってなに…?」
 
 「あ、でも1つ間違いないものあるよ!」
 
 「お、まじ?なになに」
 
 「仁ちゃん!」
 
 「…はい?」
 
 「だから、仁ちゃんをプレゼントするんよ!」
 
 「は、!?おま、何言ってんの」
 
 「いっちばん喜ぶと思うんやけどなぁ…」
 
 「いや、だとしてもどうやって言うんだよ…なんか恥ずくね?」
 
 「普通に"プレゼントは俺!"って言えばええんよ!恥ずかしさなんてお酒でどうにかなる!」
 
 「はぁ…俺は舜太じゃないんだから簡単には言えないの!」
 
 こんな会話。勇気出して言って空回りした時が1番恥ずかしい、でも勇斗は俺のために色々してくれた…そんな葛藤が頭をいっぱいにした。
 
 「え、、なに…俺の顔に何か付いてる?」
 
 「え、あ、いや…なんでもない」
 
 無意識のうちに勇斗を見つめていたらしい。結局他の方法は見つからず、舜太の言葉が頭から離れない。 お酒のせいにするのはさっきので終わりと決めていたが、まさかこんなにも早く頼られずにはいられなくなるとは…俺は意を決して言った。
 
 「ねぇ勇斗?」
 
 「ん?」
 
 「俺もクリスマスプレゼントあげようと思ってめっちゃ悩んでたんだけど、何あげたら喜ぶか全然分からなくて…」
 
 「別にいいよ、こうやっていてくれるだけで」
 
 「でも、俺だけ貰ってるのも申し訳ないしさ…」
 
 
 
 "だから、プレゼント…は俺でいい…?"
 
 はい?
 
 聞き間違えだろうか。酔っ払いすぎてとうとう頭が回らなくなっているのか…仁人にもう一度聞き返した。
 
 「いや、なんか舜太に相談したら、勇斗が1番喜ぶプレゼントは俺だって…」
 
 (大正解です。 )
 
 「へぇ…じゃあ喜んで貰うわ」
 
 どうやら聞き間違えではなかったらしい。こんな嬉しいプレゼント他にない。今すぐ舜太にお礼を言いたいくらいだ。上がった口角が一向に下がらず、仁人を抱き抱え寝室に向かった。
 
 「え、勇斗まじ?」
 
 「まじだけど?舜太よくわかってんね、1番嬉しいプレゼントだわ。こんなん貰ったら指輪1つじゃ足りないね」
 
 そう言いながら本日三度目のキスをした。そして、仁人の耳まで紅く染まった顔を見つめ、体温を重ね合わせる。お互いの愛を確かめるように、お互いの愛が伝わるように何度も唇を重ねた。頬、首、喉、腰、手首、そして最後に唇。その意味もちゃんと込めて優しくキスを落とした。
 
 
 
 
 
 
 そうしてお酒に溺れながら、お互いの愛に溺れていった。
 
 
 
 
 
 
 end.
コメント
1件
キュン死しそうです。最高に泣けました!