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『今、お時間ありますか』
深夜。チャットを見ると一件のメッセージが。送信先を見ると後輩の伊波ライからだった。
(今深夜2時だけど…、間違えて送ったのか?)
「伊波ライさん、どうしましたか?」
ちまちまと間違えのないように文章を打つ。
(これでいいかな。)
一応、当たり障りのない文章を作った。
(ほんとに、どうしたんだろう。)
返信は想像より早く来た。
『すみません、もし誰かに託すなら貴方に、と思ったんです。本当にごめんなさい。俺はもう手遅れだそうなので。
ヒーロー達のみんなに送ってもらいたい文章があるんです。もし俺がいなくなったらこの文章をみんなに送って貰ってもいいですか』
それから立て続けに長文がいくつか送られてきた。
(どういう意味…。)
何かのSOSでは無いかと考えたり、改行の仕方に疑問抱いたり。
何度も文章を読むがこれはどう見ても…。
(卒業か…?)
文章を見るに、伊波ライは一人で抜けようと思っている。そしてヒーロー全員の宛名を書いた文章があった。
後輩がこんなことを、ドッキリとして送るはずがない。
(もしドッキリだったとしてどう反応すればいいのか…。)
幾つもの考察をし、やっと文章を打った。
『 』
◇◇◇◇
朝、事務所に入ると
「おはようございます。」
🍷『おはっす、もちさん。』
🏢『………………。』
🌞『…おはようございます。』
いつものような明るいみんながいなかった。
(伊波ライといい、ろふまおといい…、みんなどうしたんだ。)
「どうしました?」
🍷『いや、そのー…。』
🌞『助けてください、剣持さん…!!』
🍷『ちょ、甲斐田…!』
🏢『……』
明らかにみんなの様子が違う。
(なに?なんかの大型企画??)
ろふまおは怖い雰囲気を漂わせておきながら『〇〇が決まりました!』とか言うしょうもないノリをする。
そうだ、いつものようなおふざけだ。
きっとそうだろう。
「本当にどうしたんですか?何かドッキリとか…」
僕が問いかけると、皆はふいっと目線を逸らした。
🌞『……違うんです、僕たち、にじさんじクビになるって…っ。』
🍷『…スタッフにイジメの疑惑かけられてるんすよ。』
「疑惑…?」
(知らない。イジメの疑惑って、?)
🏢『…前から話題になっていたイジメの件です。私達は何もしていない、本当に何もしていないのに…。剣持さんならわかるでしょう?私達は何もしていない…!!』
🍷『…まあまあ社長、落ち着』
🏢『許せない、!そんな疑惑なんかで、私達がやってきた何年間が、まだまだ続くはずだった物語が、奪われてたまるものですか…!』
「……」
(社長、本気の目してる……。)
社長はエンタメで怒ることはあっても、僕たちの前で本当の怒りを見せたことはない。
だからこれは初めての場合だ。というか、この状況が初めてで社長自身もみんなも戸惑ってる。
そりゃ、何も関わってない疑惑かけられて突然クビなんて言われて。そんなの僕だったら……。
(……耐えられない。)
「…っ、疑惑なんですよね、?だったら僕が弁解したらなんとか…、」
🍷『…それがな、もう俺らがクビになることは決定してんねんて。……あーあ、アホらし。にじさんじ、信じとったのになぁ。』
🌞『不破さ…!』
🍷『そう思うやろ?なあ、甲斐田?』
🌞『っ、でも!!剣持さんが言ってくれたように、4人で証明すれば!』
🍷『それでほんまに通ると思う?4人だけの、証拠もないような会議で。』
🌞『……。』
…僕がいない間にそんな事があったなんて、知らなかった。いや、みんなが知らせないようにしたのかもしれない。
何か喋りたいのに、感情が先走って何も言えない。
(ああ、もう、この場所で会えないんだ。)
卒業してまた会えるとしても、この場所でろふまおを撮ることは…。
🍷『………………。』
🌞『……………………。』
🏢『…………すみません、熱くなりすぎましたね。最年長なのに、情けない…。』
「……、」((ポロポロ
(絶対に、僕が泣ける立場じゃないのに…、わかってるのに……っ、)
『…………もちさん、俺らのことはいいから、にじさんじを支えたってくださいね。』
…不破湊は、諦めた目をしてた。もうその目に光はない。
🌞『不破さ…、』
甲斐田は何が言いかけたが、もう何を言っても無駄だと思ったのかただ俯いていた。
🏢『……剣持さん、もう、”にじさんじのライバー”として会える事はないかもしれません。
……だけど、これからも仲良くしてくれますよね…。』((ポロ、
社長は笑いながら泣いていた。
(…いつもみたいに笑ってよ。いつもの社長の笑い方が好きなのに、なんで、なんで……。)
「もちろんですよ…。」
その声はもはや発せていないようなものだった。
◇◇◇◇
ろふまおメンバー三人が卒業した後日、伊波ライが卒業を発表した。
二週間前には普通に事務所にいたらしいが、それからは姿を表してないらしい。そして最後の配信は無しだとか。
(楽しみにしてる人もいるだろうに。)
……正直、僕の心は限界だった。だけど長く見届けてきたリスナーはもっと限界だろう。
実際、若い年代の自殺も増えているらしい。
(……、そうだ、伊波ライから文章預かってたんだ。なんで忘れてたんだ…。)
急いでスマホアプリを開き、幾つかスクショを撮る。
(もっと早く伝えるはずだったのに、くそっ、)
ろふまおが卒業してから、あまり物事が上手くいっていない。それどころか、何をしていても落ち着かない、手につかない。寝る時もろふまおの音楽を聴かないと寝られないようになってしまった。
「ああ、もう……。」
苛立ちに感情を支配されたみたいに、机に置いてあったエナジードリンクをがぶ飲みした。
「何やってんだろ……。ろふまおが無くなって、卒業が続いてみんなが苦しんでる中、のうのうと生きてさ。もう、これ以上何も奪わないでよ。何でなんだよ、僕そんなに悪いことしたっけ。」
ただ、ただ普通に生きてることがこんなに苦しいなんて。そんなの、人類みなそうだと分かってる。そう、みんなある事……。
「これ以上考えるとダメな気がする。……もう寝よう。」
仰向けで寝て、携帯を隣に置く。
「明日は、何も無いといいな。」
コメント
1件
うわあ、読み終わったけど心臓ぎゅーってなったよ…😭💦 ろふまおメンバーの諦めた目の描写とか、社長が泣き笑いしながら「仲良くしてくれますよね」って言うところ、涙腺崩壊した…。もちさんが「僕が泣ける立場じゃないのに」って自分を責めるところも切なくて、読んでるこっちまで苦しくなった。 伊波ライからの預かり物の存在も気になるし、これからどうなるんだろう…続きが待ちきれないよ!
3,731
あーー
165
変態あつし
167