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その声は周りの金属のぶつかる音や怒号で掻き消える。しかし、どうしようもない。私が駄目になったら、全滅だ。それだけ数が多い。
辺りは闇。私は正面にある黒い霧を何百体も霧散する。体をだるくする疲れが生じてきた。額に浮かんだ汗をそのままに、ひたすら片手を上げ続ける。
腕が痺れてきた。そして、覚醒した力も何やら弱くなってきてしまった。
「ディオ……」
私は力尽きそうになる。黒い霧が200メートルくらいに迫った。
その時。
地面が大口を開けた。落とし穴だ。槍が飛び出す大きい板が跳ね上がり、超重量の投石機が現れ石を放る。それらが無数に現れた。私の正面の百体もの黒い霧が瞬時に霧散した。
私はそれを確認した後、ディオに心の中で感謝した。そして、意を決して、剣を構えて走り出した。
一体目を振り上げた剣で、頭蓋骨を割り、二体目を横薙ぎに、三体目はギザギザの鉈を私の肩へと降り下ろしたので、痛かったが突きで胸を刺した。盾が使えなくなるほどボロボロになったので、その手は黒い霧の方へと突きだす。黒い霧が血飛沫を出し破裂する。
大地を踏む音はまるで地震のようだった。所々からの怒声で耳が聞こえない。肩の痛みは最初だけだった。今では痛みが無い。
一瞬のうちに私たちは……自分を見失った。これが戦なのか。世界を救えるはずだという英雄のように気取っていた私は、そんな自分を自分自身で笑わざるを得なかった。
気が付くと、黒い霧も疎らになっていた。地面には蒼穹の戦士や西と東と北の村の戦士の死骸が幾つも築かれ、鮮血で広大な大地が染まっていた。刃の欠けた武器が散乱している。
遠くにディオがいた。
私は黒い霧を曲がってしまった剣で薙ぎながら、ディオの方へと向かう。
ディオは所々怪我をした体で戦っていた。やはり、黒い霧は無人蔵に現れるようだ。
ジュドルやバリエと角田や渡部の姿は見えない。
不思議と幾人かの蒼穹の戦士や私とディオは無事だった。
私はふと、頭に霞がかったような錯覚に襲われた。急に眠くなりだしたのだ。
意識を何とか保つために剣で足を刺す。
けれども、どうしても眠気がきつい。
「お前はもう終わりだ」
私の頭にカルダの声が響く。
目を開けることも困難になりだし、私は地面に上半身から倒れた……。