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中村と上村は、駐車上で待機していた。私はそこまで走る。もう作業開始の時間が迫っていた。谷川さんの姿が古い工場から見える。
私は全速力で駐車場へと走った。
「赤羽くん。遅刻って訳じゃないよ」
谷川さんの笑顔がここでも鮮明に見えた。
「赤羽さん」
……呉林の声が聞こえる。どんよりとした頭で、仕事中だとぼやく。これから、ペットボトルの選別を単調だが、やらなければいけない。
「赤羽さん。お願い起きて。みんなが……」
そういえば、呉林 真理って誰だっけ。
「赤羽さん」
「赤羽くん」
知らない人の声。若い声と中年の声。
「わしの言った通りになってしまった」
また、知らない……老人の声がする。
「ご主人様」
「赤羽さん」
女性の声だ。若い声と大人の声。
仕事が終わったらオンボロアパートへ帰って、いつものコンビニへ寄って……。
「赤羽さん! あなたは七番目の者よ。お願い起きて、立ち上がって!」
「はっ!?」
私は目を開ける。手足が黒い血で染まっていた。ギョッとして上体を起こそうとすると。目の前には、カルダがギザギザの鉈や錐を持ち出していた。どうやら、ここは森の奥の暗い洞窟の中のようだ。その奥の闇には驚くほど大きい樹木があった。剥き出しの所々に生え渡る幾本もの根の中には、巨大な自らの尾を噛む大蛇が目を瞑っていた。
その大蛇からは不気味な息吹を感じる。
「これがウロボロスの大樹」
私は祭壇に拘束されていた。十字架のように……両手、両足に木の根が張り巡らされている。
「違う! この木はウロボロスの世界樹と遥か昔に呼ばれていたものだ。そして、お前のような覚醒者を生贄にすることによって、この蛇は完全に目覚める」
槍を持って、天幕へ現れたルゥーダーが言い放つ。
「さあ、殺すんだ! その槍で! ウロボロスは目覚め自らの尾を全て貪り、その頭をわしが殺す! 永遠といわれた現実の神がこの世から消え去り、この世界が……永遠の虚ろなる夢の世界が……わしのものとなるのだ!」
鉈を放り出したカルダは声高らかに呪いの言葉を淡々と話しているが、とても精神が高揚している感がある。
ルゥーダーが私に槍を突き刺した。
…………
空が。闇夜の巨大な赤い月の空に、朝日の日差しを降り注ぐ、明るい空と太陽が東の方から押し寄せてきた。それは天空で境界線を生み出した。
「この男。死なない。いや、死んでいる!」
ルゥーダーが狼狽した。