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#アモアスoc
ベルリウム
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ベルリウム
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「タン、ね〜え、タン!」
「…………」
鬱陶しい。その一言が、現在進行形でタンの胸中を埋めている。
もはや鬱陶しいあまり「鬱陶しい」を漢字で書けてしまいそうなくらい、タンは辟易としているのだ。なおちなみに、彼は12歳である。
「タン〜! 僕の声聞こえてる? もしかしてヘッドホンしてる……?」
「……してないよ。見たらわかるでしょ」
なんかとんでもない方向へ発想が飛びそうになっている赤に、タンは渋々ツッコミを入れる。すると、やっと答えてくれた、とばかりに赤の顔が輝いた。
「ね、ね、僕のカードスワイプ代わりに「やだ」
「え〜……なんで?」
「なんでって、ただカードスワイプ苦手なの押し付けないでよ。ボクは忙しい」
「お茶飲んでるのに?」
これだ。これなのだ。
カードスワイプが特別苦手で、日によっては数時間格闘する羽目になる赤。そんな調子だから、できるだけ他のひとを捕まえて、代わりにやってもらうよう頼んで回っているのだ。
とはいえタンは絶対にカフェテリアから動くつもりはない。対価もなしに労働などしていいはずがない、という身に染みついた意識がある。ましてや彼は付き纏われるのが嫌いなのだ。
そういうわけで、タンはすんと澄ました顔でペットボトルを傾ける。
「お〜ね〜が〜い〜、今日は調子悪くて……これが終わらないと僕タスク完遂できなくて……」
「…………」
「僕そろそろあの顔見たくないんだよ、今日だけ! お願いっ!」
「顔……」
機械に顔もクソもないが、まあ、そういうところが彼らしい。
いつも元気いっぱいな彼が自信なさげに眉尻を下げているのを見ると、流石に良心に来るものがある。付き纏われるのは嫌いだが、別に彼そのものを嫌っているわけではないし、赤は日頃から素行も悪くない。
矜持と信念と少しばかりの意地を守るためだけに、この子犬のような同僚を突っ撥ねるのか、と考えた途端、少しくらい……と隙が生まれる。
「ほら、ジュースとか奢るよ? あ、別にジュースじゃなくてもいいけど、軽食とか、ね!」
その栓の緩みを見計らったのか、すかさず赤が追撃を入れてくる。既に数分以上同じやり取りをしているためか、もはやカフェテリアにいる他の仲間たちはこちらを見向きもしない。誰かを身代わりにするのは厳しそうだし、どう考えても逃げ道はないようだ。
「…………はぁ……」
タンは椅子から立ち上がって、大して深くもない溜息を吐いた。蓋を閉めたペットボトルを机の真ん中に置きつつ、きょとんとする赤に手のひらを差し出す。
「はい」
「……え?」
「カード」
「っ、やってくれるの!?」
「うるさ……」
ぱあぁっ、と花が開くように笑顔になる。ものを受け取る予定だった手は嬉しそうに握られてしまい、おまけにぶんぶんと上下に振り回された。
「ありがとう! 本っ当に助かる! あっちゃんとジュース奢るからね、ジュースじゃなくてもいいけど!」
「放して。やめるよ」
「わっ、ごめん!」
ぱっと解放される。
付き纏われなければ何でもいいし、と突き出した手には、今度こそ硬く薄い感触が乗った。タンはそれをふんわり掴み、素っ気ない受諾を示す。
「それじゃ」
「あっうん、よろしく! 待ってるね!」
管理室に向かって歩き出そうとして、見送りの言葉に背を突かれる。
タンはふと振り返って、付け足した。
「あと、ジュースはいらない」
「え?」
「好きじゃないから」
赤の疑問視を無視して、今度こそタンは歩を進め始めた。後ろから聞こえてくるような気がしないでもない声に、やはり返すことはなく。
「……だから、ジュースじゃなくていいって言ってるのに……」
コメント
3件
赤くんが赤くんしてて好きです 12歳で鬱陶しいという感情を覚えてしまったタンくんも好きです 絶妙距離感の2人組が尊すぎますもっと見たいですっ!!! │ ◜ཫ◝)⸝⸒⸒ ...トウトイ...ソウ....ツマリハトウトイ.....
ああ、この二人の距離感が絶妙ですね……! タンはぶっきらぼうだけど、結局最後は折れてカードを預かってあげるところに、根っこの優しさが見える。赤の「子犬のような同僚」という描写もぴったりで、なんだかんだで付き合ってあげたくなる気持ち、すごく分かります。ジュースはいらないって言いながら去っていくタンも、彼なりの距離の取り方なんでしょうね。思わず応援したくなる第4話でした🤍